2017年12月06日

No.223 企業は物言う株主と正面から向き合う必要があるのか?

 12月5日の日経の社説にあった内容です。「日本企業は様々な提案を出す投資家と正面から向き合い、株式市場に自社の考えを効果的に訴えなければならない」 ホンマかいな・・・。

これまでアクティビストは大幅増配や自社株買い、社外取締役選任などのガバナンスに関する要求をすることが多かったです。なぜでしょうか?答えは簡単です。財務諸表を見れば、ターゲット企業が大幅増配などをできる会社かどうか誰でもわかるからです。無借金で現預金や投資有価証券を多額に保有している会社であれば、誰でも「増配できるよね?」とわかります。誰にでもわかるから、アクティビストも提案しやすいです。

 日経の社説にはアクティビストの提案について「役員受け入れのほか、組織の再編やブランド戦略など、株主からの提案は多様になってきた。企業に環境対策や社会貢献を求めるESG投資をかかげる物言う株主もあらわれた」と書いています。??? あんた方、事業の素人だよね?なのに、投資先企業の組織再編とかブランド戦略にまで口だすの?へえ・・・当該事業の専門家に対して「貴社のブランド戦略はこうあるべきであーる!」と言う訳ですか・・・

 恥ずかしくないのでしょうか。私もいろいろな企業を訪問させていただきますが、一度も顧客の事業に関するアドバイスをしたことはありません。だって私、素人ですから。その事業のことを何十年も考え続けている社長やCFOに対して、「貴社の事業戦略はこうあるべきであーる!」などと恥ずかしいことを言えません。そんなことを言おうもんなら、社長やCFOに「こいつ、バカか?」と思われてしまいます。野村證券にいたときも、M&A案件を持っていくのが一番イヤでした。だって、わかんないじゃないですか?「こいつ、なんでこんな案件をうちに持ってきたの?」と思われるんだろうなあ・・・とネガティブなことを考えながら持っていった記憶があります。

 私は敵対的買収や企業のIR、ガバナンス、株主提案、財務戦略・・・などの専門家です。この分野に関しては誰にも負けないと思っています。なぜなら四六時中、考えているからです。事業の専門家は社長です。社長は事業のことを四六時中考えているはずです。だから私は口出ししません。というか、口出しできません。

 アクティビストって何者なのでしょうか?企業に環境対策や社会貢献を求めるESG投資?それはお前たちが勝手に考えた投資スタイル・銘柄選別スタイルであって、それを企業に強制するな!だと思います。

 「日本企業の株主との対話は、目先の配当や自社株買いに集中する傾向があった。しかし、それだけでは様々な要求を出す海外ファンドの対応として不十分だ」 アホか・・・。なんで海外のアクティビストたちが最近、事業内容にまで口出すようになってきたと思いますか?特に海外の場合、日本企業より配当や自社株買いには積極的でしょう。ガバナンスに関しても、社外取締役を複数、過半数、採用しています。つまり、アクティビストが文句をつけられることがなくなってきた、ということです。だから専門分野ではない事業内容にまで口出しをするようになってきた、ということではないでしょうか?アクティビストもネタに困ってきたということです。

 実はアクティビスト対応って簡単なのではないでしょうか?彼らが文句をつけられるのは、会社の財務しかありません。適切な株主還元を実行していれば、アクティビストに買われて文句を言われたり、株主提案をされたりすることもないのです。事業内容に文句を言ってきたら「素人が!」と言い放ち、笑ってあげればよいだけです。

 企業は物言う株主と正面から向き合う必要などありません。ま、投資家の意見は大切ですから耳を傾けておけばよいだけであり、何も投資家の言うとおりに経営しなくてはならない訳ではありません。

 

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