2018年02月05日

No.262 なぜアクティビストに狙われるのか?

 ズバリ「株価が安いから」です。

「買収防衛策を導入しているなんてけしからん!こらしめてやる!」「社外取締役の人数が少ない!独立性も低い!なんて会社だ!ギャフンと言わせてやる!」と思って投資する訳ではありません。彼らが対象会社に嫌がらせをするのは、それが目的ではなく手段だからです。嫌がらせをすることにより、会社に「やめてくれよ~。どうするんだよ~」と考えさせ、「もうしょうがないなあ・・・。配当上げよう」と行動させ、株価を上げることを狙っています。貴社が狙われるかどうかの最大のポイントは、株価が割安かどうかです。そのうえで、株主構成はどうなっているか、ガバナンス体制はどうなっているかをチェックして「よし。この会社をターゲットにしよう」と決めているのだと思います。

 彼らは世のため人のため株式市場のために会社に嫌がらせをしているのではありません。村上さんは著書を書いた理由の一つに「私自身が表に立って自分の理念や信念をきちんと伝えねばならない」ということを挙げているのを見ると、どうしてもアクティビストというのは日本企業を変えるため株式市場のために行動を起こしているのかもしれないとお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。「わが社はその餌食になっているんだ」と考えてしまうかもしれません。村上さんのみならず、他のアクティビストも「日本企業のコーポレート・ガバナンスを変えるために~!」といったことを主張しています。

 でも、ファンドの理念ってなんですかね?お金儲けすることでしょ?ガバナンス改革が理念だ!そんなわけあるかい。ガバナンス改革を主張することは手段であって、ファンドの目的は金儲けです。ですから、彼らは目的達成のために嫌がらせを止めることはありません。なお、私は「金儲けって悪いことです」なんて思っていません。よいことです。株価を上げるために、必要な改革を会社にせまることも時にはあるでしょう。でもね・・・。改革を迫ってもよいけど、迫り方が問題なんじゃないですかね。嫌がらせをするのも仕方がないとは思いますが、度を越した嫌がらせは会社のためになりません。それはもう嫌がらせではなく、脅迫です。どこのファンドとは言いませんが、脅迫や恫喝を経営者にしているファンドもいるのではないでしょうか?そういうファンドはまた捕まりますよ。

 さて、アクティビスト・ファンドに狙われたらどうすればよいのでしょうか?私、そんなに難しい問題ではないと思っています。究極的には株価さえ上げればファンドは出て行ってくれます。どうやって株価を上げましょうか?

 簡単ですね。配当を上げればよいだけです。アクティビスト・ファンドが狙っている会社は、基本的には大幅増配が可能な企業が多いです。中には再編狙いの場合もありますが、そういう場合もアクティビスト・ファンドはなるべく大幅増配が可能な財務体質の会社を狙っているフシがあります。アクティビスト・ファンドなどの第三者のために配当を大幅増額するのはイヤかもしれませんが、背に腹は代えられない場合だってあります。そういう場合は、腹をくくって大幅増配です。そうすれば、ほぼ確実に株価は上がるでしょう。しかも速攻で上がります。出来高も増えるでしょう。そうすればアクティビストも市場で売却しやすくなります。

 なお、こういう検討は、アクティビストに買われてからでは遅いです。なぜなら、社内を説得するのに相当時間を要するからです。ほとんどの役員が「なんでそんなヤツらに配当をくれてやるんだ!けしからん!」というマインドのはずですから。CFOがいくら言っても耳を貸さないでしょう。私がアクティビスト対策や敵対的買収対策を常日頃から検討しておくべきですと申し上げているのは、このためです。経験のない役員の方は、増配することがアクティビストのみを利することであると誤解していますし、それしか助かる方法がないのにやりたがりません。おそらく、心のどこかで「なんとかなるんだろ?●●証券がアドバイザーだから助けてくれるんだろ?」とか「もうこれ以上株を買い増すことはないだろ?」とか思ってしまっているからです。自社がいかに危険な状態に置かれているのかを理解できないのです。そりゃそうなんです。責任者であるCFOだって、有事の経験をしていません。日本のCFOでその経験をしている人は少ないですから。私から見ると、日本企業の役員は全員、アクティビスト対策・敵対的買収対策において素人です。ただし、プロになる必要はありません。プロになるほど、常日頃からそればっかり勉強する時間はないはずです。また、プロになってしまわれると私が困ります。

 しかし、月に一度はこの手のことを役員会や経営会議の話題にしたほうがよいと思います。「有事になったら配当を20倍にすることも検討しなくてはならないんですよ」と言うと、必ず「2倍じゃなくて?そんなの本当にやるの?」とおっしゃる役員がいます。それに対しては「本当にやった会社があるから申し上げています。それをやらないと助からなかったからです」とお答えしています。だいたい唖然としています。

 CFOと社長・その他の役員の温度差をなくすためにも、常日頃からの検討や勉強が必要と考えます。特にケーススタディは本当に大事だと思います。

 

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