2017年12月27日

No.238 今年を振り返る 2017年7月~12月

 (株主提案は6月に起こったことではありますが)やっぱり黒田電気ですかねえ・・・。旧村上ファンドの動きが活発化した下半期であったように思います。

黒田電気は、6月に旧村上ファンドの株主提案が可決されてしまいました。これを「日本で久しぶりに株主提案が可決された!」とか「日本企業の安定株主神話が崩れてきている!」などと論評している方もいらっしゃるように思いますが、的外れです。これは旧村上ファンドの主張が支持されて株主提案が可決された訳ではありません。旧村上ファンドが黒田電気の株式を38%も取得したから可決できたのです。黒田電気は何をすべきだったのでしょうか?

 これ、黒田電気の直近の株主構成ではありません。旧村上ファンドによる黒田電気株式の大量保有報告書が提出されたのが2014年12月22日です。          保有割合は5.33%です。この時点で普通に「買収防衛策を入れよう」と考えれば、2015年6月株主総会での導入を目指します。ですので、上表は2015/3期末の株主構成を掲載しました。黒田電気は買収防衛策を導入できたでしょうか?外国人株主比率が非常に高いですから、総会にかけても否決された可能性がありますね。でも、結果を見ればわかるとおり、チャレンジはしておくべきでしたね。もしくは、賛否両論あると思いますが、あえて取締役会決議で導入してもよかったのではないかと考えます。理屈はいくらでも建てられます。屁理屈だ!と言われるかもしれませんが、屁理屈も理屈ですから。

 取締役会決議で導入すれば、「総会を通す自信がないからだ!」「総会にかける企業がほとんどなのに!経営者の保身だ!」と批判してくるでしょう。であれば、保身じゃないことを明確に主張すればよいだけです。何度も言いますが、買収を防衛するための施策ではなく、株主のために時間と情報を確保するための施策だと主張することです。それを株主に理解してもらうためのプレスリリースを作成すればよかったのです。でも黒田電気はそうはしませんでした。まあ、黒田電気自身にもいろいろと問題がありました。従業員声明文のねつ造とかしてしまったので、買収防衛策は導入し難かったのかもしれません。ただ、旧村上ファンドによる買い増しが判明した時点で、即座に行動すべきだったと思います。

 旧村上ファンドは黒田電気を主軸とした業界再編を行うことなく、MBKパートナーズに売却しました。一方で、旧村上ファンドは、黒田電気以外にもまだ電子部品商社の株式を数多く保有しています。まだ業界再編を狙っているようです。かなりの割合の株式を保有されてしまった会社もありますから、また来年くらいに動きがあるのでしょう。

 2017年下半期の注目されるトピックスは黒田電気なのですが、実際には旧村上ファンドが注目ポイントのように思います。黒田電気に対する株主提案やMBKパートナーズに対する売却よりも、日本郵船の株式を取得し大量保有報告書を提出したことではないでしょうか?これ、何回かコラムで書きましたが、やっぱり衝撃的です。10月末に大量保有報告書が提出されて以来、特段動きはないようですが、今後が気になるところです。

 旧村上ファンド以外にも、世界のアクティビストが日本株に目を付け始めたようにも思います。例えば、KKRによる日立国際電気へのTOBの際に登場したエリオット。他、パソナに経営改善要求をしているオアシス。そして、東芝の第三者割当増資を引き受けた数々のアクティビスト。エフィッシモ・・・。

 また、大規模公募増資で創業家に対抗した出光興産。創業家の買い増しが始まりましたので、本当に昭和シェルと合併できるのか雲行きが怪しくなってきました。私は創業家による買い増しが判明したあとに、出光興産株式にはサヨナラしてしまいましたが。なんだか2017年の下半期は海賊がらみの話題が2件もありましたね。

 なんだかまとまりなく、つらつらと書きましたが、今年はアクティビストの動きが非常に活発化した1年でした。今年のコラムは明日が最終です。

 

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