2017年12月28日

No.239 今年の漢字は「油」

 出光興産の件があったからアブラ、という意味もあるのですが、「油断大敵」の「油」です。昭和シェルとの合併を検討している出光興産に対して、出光創業家は反対しています。出光創業家のホームページに主張が書いてあります。http://idemitsu-rinen.jp/

 出光興産は創業家の影響力を弱めるため(が主目的ではありませんが)、本年7月に大規模な公募増資を行うことを決議しました。創業家は発行差止請求を行いましたが、裁判所は認めませんでした。これにより創業家の持分が薄まり、昭和シェルとの合併が株主総会で認められることになった、と誰もが思ったことでしょう。でもやっぱり甘かったですね。創業家は買い増しました。これからドンドン買い増してくる可能性があります。おそらく出光興産の経営陣は公募増資が終了した時点で「やっと終わった!創業家がいくらお金持ちとは言っても、時価総額が1兆円近い当社の株式を買い増して、拒否権を再び手にすることはできないだろう」と考えていたのではないでしょうか?油断です。

 黒田電気はどうでしょうか?旧村上ファンドの買い増しが判明した時点でなぜ買収防衛策を導入しなかったのでしょうか?黒田電気の経営陣は「村上?まだいたんだね。でも村上の個人資産を運用してるんだろ?だったら大した規模じゃないだろ?うちの時価総額は1,000億近いのだから、買えても10%くらいじゃないの?」と思っていたのではないでしょうか?結果、旧村上ファンドに38%買われて、最終的にはMBKパートナーズに売り渡されました。これも油断が原因ではないでしょうか。

 そして、ソレキア・・・。完全に油断ですね。それと怠慢です。安定株主比率が高いことに胡坐をかき、買収防衛策を導入せず、有事になっても中途半端な対策しか打たなかった・・・。油断と怠慢に加えて、「勉強不足」も否定できません。

 まだあります。買収防衛策を廃止してしまった会社。そしてアクティビストに狙われてしまった。これも油断ですかね。油断というか、見通しが甘かったというべきでしょうか。ただ、アドバイザーの責任でもあります(これに限らず、すべてにおいて、ですが)。買収防衛策を否決されてしまうリスクがある場合、たいていのアドバイザーは「否決されるなら更新するのはやめたほうがよい」とアドバイスしています。特に弁護士からそう言われてしまうと、会社は対抗できないでしょう。「先生がそう言ってるんだろ?じゃあやめよう」と判断してしまうでしょう。「可決できないならやめろ」というのは、買収防衛策が否決されてしまいそうな会社に対する適切なアドバイスではありません。乱暴です。総会を通すための工夫に知恵をしぼらなくてはなりません。「可決できるなら継続した方がよいけど、否決されそうならやめたほうがよい」とおっしゃる方が多いです。ということは、買収防衛策はあったほうがよいということではないでしょうか。

 これからお正月をむかえるタイミングで書くようなことではないかもしれませんが、あえて書きます。世の中、油断している会社が多いような気がしてなりません。

「ソレキアは買われたかもしれないけど、うちは大丈夫だろ?」

では、その根拠は?安定株主がたくさんいるからでしょうか?ソレキアの外部から見た安定株主比率は40%近くありました。実際にはもっと高かったでしょう。でも買われました。

「うちの安定株主比率は50%以上あるよ!」

親会社や資本上位会社が存在する上場企業を狙っていたのがエフィッシモです。香港のオアシスも最近は狙っています。安定株主比率が50%以上あるテーオーシーはエフィッシモに狙われました。50%以上の安定株主がいるのに、自社株買いをしてエフィッシモから買い取りました。この意味を考えることが重要ではないかと思います。

「うちの時価総額は大きいから大丈夫」

日本郵船が旧村上ファンドのターゲットになっています。時価総額も大きいし、歴史もある会社です。非常に立派な会社がターゲットになっています。東芝や第一生命、リコーだって時価総額が大きいですが、エフィッシモが買っています。国内外の同業に狙われる可能性はゼロですか?

「うちは買収防衛策をちゃんと導入しているから大丈夫!」

買収防衛策は買収を防衛するための施策ではありません。破る方法を私は検討済みです。メンテナンスしていますか?買収防衛策をどういう風に使えばよいかご存知でしょうか?また、次回の更新も既存のプレスリリースを修正するだけで対応しようとしていませんか?それじゃあ、もうもたない時代になってきています。

「誰かに買われたら買収防衛策を入れよう!」

遅いかもしれません。入れさせない方法も私は検討済みです。

 年末にイヤーなことばかり書いてすみません。でも事実なので・・・。結局、油断した会社が狙われているように思うのです。皆様が狙われなかったのは、たまたまではないでしょうか?むしろ、アクティビストは貴社を見ているでしょうし、いつ買われるかわからないという覚悟を持った上で対応策を考えておく必要があるのではないかと私は思っています。

 コラムの送付を開始したのが2016年9月21日です。1年3か月ほど継続いたしました。今年わかったのは、多くの方が顔も覚えていない私のコラムを毎日読んでくださっているということです。大変ありがたく思っております。なるべく長いこと続けたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 

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