2018年04月20日

No.315 なぜアクティビストを刺激するなと考えるのか

 アクティビストに株式を取得された会社の多くは、買収防衛策を導入できるのに導入しない会社が多いです。なぜでしょうか?「まだ5%しか持たれていないし」「10%持たれたけど、これ以上は買わないでしょう」などと考えがちだからです。そして、そうこうしているうちに、アクティビストの保有割合が15%を超えてしまいます。この段階で会社はこう考えます。

「買収防衛策を導入したらアクティビストを刺激してしまう」

 こういう発言をした会社を私はたくさん知っています。「買収防衛策なんて導入したらアクティビストを刺激してしまって、どんどん買い増されるんじゃないか?」「静観したほうがよい」とおっしゃいます。そして、何もしないままどんどん買い増されてしまい、結果、30%以上も株式を取得され、もうなす術がなくなります。三信電気ですね。

 では、アクティビストの保有割合が5~10%程度のときに買収防衛策を導入したら、アクティビストはどういう行動をするでしょうか?「買収防衛策なんて導入しやがって~!けしからん!目に物見せてくれるわ~!」って考えるでしょうか?絶対に考えません。トリガー20%の買収防衛策を導入したのであれば、19.9%までは株式を取得してくるかもしれません。ただし、ルールを破って20%を超えて株式を取得するようなことは絶対にないと言えます。なぜならルールを破ったら買収防衛策を発動されるからです。発動されたら裁判になります。カネと時間がかかります。それに、出資者から「なんであえてルールを破ったんだ?」と説明を求められた場合、アクティビストも説明に困るでしょう。だから買収防衛策のルールをあえて破るなどという暴挙には出ません。ルールに従った上で20%以上の株式取得をしたいと申し出てくるかもしれませんが、これも可能性は低いと考えます。※ただし、アクティビストの保有割合がかなり高くなった時点で導入したら微妙です。アクティビストが「我々は20%以上買おうと思っていた。後出しの買収防衛策だ!」と批判するかもしれませんし、アクティビストとしても「ほかの投資先に、防衛策を入れれば大丈夫だ、と思われたら困る」と考えて、株式の買い増しをあえて申請してくるかもしれません。

 おそらくアクティビストは買収防衛策を導入されても株式取得をするのではなく、株主提案などをしてくるだけでしょう。買収防衛策に則った情報提供のやり取りなど、彼らにしてみれば面倒なだけです。時間がかかってしょうがありませんから。だから買収防衛策を入れたとしても、合理的な彼らは刺激されたとは考えません。面倒くさいなと考えるだけでしょう。そして、買収防衛策を導入された場合の対策を実行するだけです。彼らの目的は「効率的に金儲けすること」です。

 私は「感情的に行動するのはアクティビストではなく、むしろ上場会社のほうである」と考えています。例えばですけど、皆さん、アクティビストに買われたら増配したくないですよね?「言われたから増配するみたいでイヤだ」「アクティビストを儲けさせるのはイヤだ」と考えませんか?最たる例が、超感情的になってしまったソレキアでしょう。買収防衛策を入れておいたり、増配したりすれば助かったのに、感情がジャマをしたのでしょうね。

上場会社を取り巻くステークホルダーは無数に存在します。無数のステークホルダーのことを考えると、合理性だけを考えた行動を取り難いものです。逆にアクティビストを取り巻くステークホルダーは限られています。極端な話ですが、出資者だけを気にすればよいのです。そしてその出資者の関心は「カネを儲けてもらうこと」にしかありません。だからアクティビストは感情的になど物事を考えず、常に合理性だけを考えることができ、金儲けに邁進できるのです。

 上場会社の方が感情的に考えてしまうから「アクティビストを刺激してしまったら・・・」などという非合理的な考え方をするのではないでしょうか。彼らの目的は金儲けです。悪いと言っていません。そういう仕事ですから。仕事に貴賤はありません。

彼らの目的を見誤らないことです。彼らの目的は「日本の上場企業のコーポレート・ガバナンス改革」ではないのです。更に言うと、なぜ機関投資家は買収防衛策の導入に反対するのでしょうか?「経営者の保身である!」「ガバナンス改革に後退する!」 違いますね。自分たちが高く売る機会を阻害されたくないのでしょう。アクティビストと国内機関投資家に大きな違いなどありません。どっちも金儲けだけが目的の集団ですから。金儲けのジャマだから買収防衛策を廃止しろと言うのです。会社が誰に買われようが関心などありませんし、守ってなどくれるはずがありません。

上場会社の味方は?もう上場会社しかいないでしょう。もちろん私は味方です。

 

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