2017年03月23日

No.72 東芝を救うのは誰か?&東芝とシャープとオリンパス

■東芝を救うのは誰か?

 私、城山三郎氏の小説が好きでよく読んでいました。「もう君には頼まない~石坂泰三の世界~」も好きです。

ちょっと前ですが、以下のような記事を目にしました。

東芝不正会計 財界の盟主を続々輩出した名門企業はなぜ転落したのか?

https://www.sankei.com/premium/news/150725/prm1507250026-n1.html

 記事には「石坂泰三氏、土光敏夫氏ら同社を発展させた名経営者」とあります。なぜ財界の盟主を続々輩出した名門企業が転落したのでしょうか?

 答えは意外と簡単なのではないでしょうか?石坂泰三氏と土光敏夫氏は、そもそも東芝出身なのでしょうか?

違いますね。石坂泰三氏はもともと逓信省に入省、その後第一生命に入社し、社長になっています。そして、土光敏夫氏はもともと石川島播磨重工業の方です。東芝プロパーではありません。

 日産自動車は、不正会計などをしたわけではありませんが、経営が苦しくなり、それを立て直したのはカルロス・ゴーン氏です。日産出身者ではありません。やはり東芝はこういう状況に陥ってしまった以上、よそから名経営者を招聘するしかないのでしょうか?以上、今回はコラムというより雑感です。

■東芝とシャープとオリンパス

 不正会計について話題になっている東芝に関連して、苦境に陥ったシャープが同じ土俵で議論されることがありますが、これは切り離して考える必要があると考えます。シャープは液晶、東芝は原発という事業に依存したため、両社の問題は同じような目線で議論されがちです。

 シャープと東芝の大きな違いは、不正会計をしたかどうかであると考えます。シャープは液晶事業に注力したものの、それが失敗だったということであり、不正会計をしていた訳ではありません。そのため、苦境に陥っている状況であっても、ホンハイによる出資前に、公募増資を実施することができましたし、ホンハイ以外の第三者に増資を引き受けてもらうこともできました。

 一方、東芝は不正会計をしていたため、東証からは特設注意市場銘柄に指定されてしまい、資本増強のための公募増資をしたくてもできません。また、原発事業のリスクが計り知れないため、半導体事業に出資したいという企業がいても、東芝本体に出資したいという企業はいないでしょう。

 東芝は不正会計と原発事業の不振という2つのリスクを抱えてしまったため、なす術が少なくなってしまったということではないでしょうか。それに比べてシャープは不正会計をしておらず、まだシャープブランドに価値があると考える出資者がいたため助かったということであると考えます。

 一方、オリンパスもかつて不正会計をし、特設注意市場銘柄に指定されてしまいました。不正会計を行ったという意味では、東芝と同罪です。しかし、オリンパスに対してはソニーが出資をしました。東芝と同じように不正会計をしていながら、オリンパスには出資者が現れました。

 これはまさに不正会計の内容と経営陣がどこまで不正会計を把握していたかが問題です。報道で見る限り、東芝の経営陣は不正会計にうすうす気づいてはいたものの、全容までは把握していなかったのではないかと推測します。つまり、経営陣がある意味不正会計を正確に理解していなかったため、対応が後手になった。また、直近の巨額損失の計上についても役員会で報告されるまで、ほとんどの経営陣が知りもしなかった、というレベルのようです。一方、オリンパスは、トップが不正会計に関与していたと報道されています。トップが不正会計に関与していたということは、ある意味、トップは自社の経理・財務内容をきちんと理解していた、ということではないでしょうか。「わが社はいくらの不正会計をしており、いつになったらこの不正会計を解消できるか」を綿密に計算し、理解していたものと思われます。

 オリンパスの不正会計は、あくまでバブル期の財テクの精算をすることが目的ではなかったかと思います。経営陣からすると「いっきにバブル期の損失を吐き出すのではなく、徐々に吐き出したい」という思いで不正会計をしていた可能性があります。ということは、オリンパスの損失はあくまで財テクによる損失であり、本業によるものではありません。経営トップもそれを理解しており、おそらく「●年●月期にはすべて解消できる」と考えていたのではないでしょうか。

 一方の東芝の不正会計は、経営陣もきちんと理解していなかったと思われますし、そもそも財テクではなく本業における粉飾です。回復のめどすらたっていないと思われます。また、今後も原発事業でいったいいくらの損失が発生するのか誰もわかりません。

 ですので、損失がはっきりわかっており、本業が順調であるオリンパスは、不正会計により一時的に株価が下がった今こそ買い時!とソニーは考えたのかもしれません。ソニーはオリンパスによる第三者割当増資に応じました。発行価格は1,454円です。ちなみに、現在のオリンパスの株価は4,260円です。

 いろいろなご意見があると思いますが、私は、東芝は上場廃止にすべき、と考えます。不正会計は悪質ですし、内部管理体制が整備されたとはとても言えない状況だからです。また、東芝にとっても上場廃止を選択した方が幸せではないかと考えます。

 東芝が上場にこだわればこだわるほど、資産の切り売りを早急に進める必要があります。必要な資産も早急に売却していかなくてはなりません。いったん上場を廃止し、時間をかけた上でグループ再編をしていかないと、交渉相手先に足元をみられるリスクがありますし、買い叩かれるリスクもあります。

 しかし、各種報道から推測すると、おそらく東芝は上場継続を選択したいのでしょう。そうなると、手を付けたくなかった事業やグループ会社の株式にまで手を付ける必要が出てきます。金融機関との兼ね合いもあるのかもしれません。以上、雑感まで。

 

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