2018年02月09日

No.266 なんだか腹立たしい東栄リーファーライン

 2月8日の日経21面の右下に小さく記事が掲載されていました。

東栄リーファ、MBO再実施へ 村上氏から賛同 2018/2/8付

マグロ運搬船を運航する東栄リーファーラインは7日、MBO(経営陣が参加する買収)を再び実施すると発表した。株式の買い付け価格を前回から200円引き上げ、800円とした。同社の実質的な筆頭株主、旧村上ファンド代表の村上世彰氏から賛同を得られたとしている。東栄リーファの河合弘文社長らが出資するオーシャン(東京・港)が、議決権の3分の2以上にあたる368万株を下限に、TOB(株式公開買い付け)で株式を取得する。買い付け期間は3月23日まで。MBO成立後、東栄リーファは上場を廃止する。

 私、この件に対して、なんだか腹が立っています。そもそも、1回目のMBO価格である600円はなんだったのでしょうか?会社の内部情報や内部事情を知る役員がMBOをして非公開化しようとした訳です。でも、旧村上ファンドに株式を買い集められて応募が下限に達せず、不成立に終わりました。そして、旧村上ファンドと面談した後、TOB価格を800円に引き上げると決め、賛同を得たので、再度MBOを実施する模様です(正確にはもっと細かい経緯があるのでしょうが)。最初の600円という価格は?会社の内部情報、内部事情を知る役員が不当に安い価格で株主から搾取しようとした、ということでしょうか?なお、東栄リーファーラインの1株当たり純資産は885円です。今回のTOB価格800円は、前回よりも200円引き上げられましたが、BPSよりもいまだ安い価格です。ようは、会社側と旧村上ファンド側が交渉し、BPSよりも安いけどこれで折り合いをつけましょう、ということになった訳ですかね。なんだそれ?!MBOをしようとしたけど旧村上に買い集められて不成立になったから、成立させるために旧村上の主張を聞いて、200円値段を上げた・・・。一般株主を無視か?最初から800円で提示しろよ。旧村上も「BPSを下回るけど、ある程度儲かるからいいか!」ということか?何が日本企業のガバナンス向上じゃ・・・。笑わせるな。結局、自分が儲かりゃあ、なんでもいい、ということじゃないか。あきれるわ・・・。コーポレート・ガバナンスという言葉を二度と使うな。です。ま、ここで愚痴を言っても仕方がありません。こういう会社は市場から退出していただいて、大いに結構。ただし、おいしい価格で再上場なんて甘いことを考えるなよ、投資家をなめるなよ。です。

 なお、公開買付届出書を見ると「公開買付者及び対象者は、レノ及びレノの共同保有者であるオフィスサポートの親会社の大株主である村上氏と、平成29年12月8日、同月11日、同月12日、同月13日及び同月15日に面談を行いました。」とあります。私がとても気になるのは、「オフィスサポートの親会社の大株主である村上氏」となぜ面談したのかです。なんでオフィスサポートの方ではなく、オフィスサポートの親会社の大株主と面談したのか不思議です。私だったら「はあ?なんで親会社の大株主と会わなきゃいけないの?意味わかんな~い!」と言って断ります。おかしいでしょ?これ、会社もアドバイザーに相談したと思うのです。さてアドバイザーはなんて答えたでしょうか?

アドバイザー:この状況で村上氏との面談を断ると、村上氏を刺激しかねません!

会社:そうか・・・。刺激すると何をしてくるかわからんからなあ・・・。

アドバイザー:そうです!何をしてくるかわからん連中です!

会社:しょうがない。村上と会おう。

ってな感じじゃないですかね?だ・か・ら、刺激ってなんですか?「なんで親会社の大株主と会わなきゃならんのや?関係ないやろ?会わん!」と言ったら、村上さんは「ぬおおおおー、オレ様を刺激しやがってぇーーー!もっといっぱい買って東栄リーファーラインの役員連中をギャフンと言わせてやるーーー!懲らしめてやるーーー!」といった行動をするということでしょうか?するわけないでしょう・・・。以前のコラムで書きましたが、彼らの目的を見誤らないことです。彼らは正義の味方として日本企業のコーポレート・ガバナンス改革がしたい訳ではありません。彼らの目的はゼニ儲けのみです。悪いこととは言っていません。投資家だから当たり前なんです。何をしてくるかわからん連中ではありません。「どれだけ投資して、どういう圧力をかければ、会社がどういう行動を起こし、我々はいくら儲かるか」を冷静に考えている人たちです。刺激しようがしまいが、どれだけの株を買うかは決めています。私だったら絶対に会いませんし、会わせません。余談ですが「村上と面談依頼がきている。どういうヤツか知りたいし、村上の考えや情報を引き出せるから会ってみる」という方がいらっしゃいます。また、たまにアクティビストと酒を飲んだり、ゴルフしたりする方もいます。やめてください。何のメリットもありません。情報を引き出す?村上さんたちのような百戦錬磨のアクティビストが簡単に情報をポロッと漏らす訳がありませんから。あるのはデメリットだけです。

それと、もっと気になるのは面談日です。昨年12月8日、11日、12日、13日、15日に面談していますが、その間のレノとオフィスサポートによる東栄リーファーライン株式の取得状況はどうなっていたのでしょうか?平成30年1月15日に提出された変更報告書を見ましょう。まず、オフィスサポートによる取得状況です。

そして、レノによる取得状況です。

 会社との面談後もバンバン買っていますね。インサイダー、大丈夫か?と思ってしまうのは私だけでしょうか。

 私だけじゃなかったみたいです。公開買付届出書で「インサイダー取引規制の対象となる重要事項は存在しないことを相互に確認した」と書いています。まあ、インサイダー情報を聞いちゃったりはしていないのでしょう。でも、目は口ほどに物を言うとも言いますからねえ・・・。 結局、1月に入りまた面談したそうです。そして今回の再MBOに至ったようです。しかし、村上さんって、懲りない人なんですねえ・・・。普通、こんな危ないことしないでしょ?またISSの言うところの「国策捜査」とやらの対象になりますよ。

 皆さんの会社が旧村上ファンドのターゲットになったらどうしましょうか?まず大事なことですが、ターゲットにならないようにしておくことがベストではあります。そのためには平時からの議論が重要ですし、議論した上での企業防衛体制の構築が必要です。買収防衛策に対する風当たりはきついですが、絶対に導入しておく必要があります。でもターゲットになってしまうこともあります。そのときは、自社の株主構成を見て、その時点でできることをやるしかない、ということです。また「プライドを捨ててやるべきことをやる」という気持ちも重要です。買収防衛策を導入することは経営者の怠慢では決してないですし、会社や従業員のことを思えばこその施策です。「今さら買収防衛策?」などと言う人がいたら、逆に笑ってやればよいのです。「今さら?今からだろ?」と。

 私なら東栄リーファーラインに買収防衛策を入れろとアドバイスしたと思います。「MBOをしようとしといて失敗したから買収防衛策?それこそ保身って言われるんじゃないの?」 そりゃそうですね。難しいかもしれませんが、一つのアイデアとしては考えられますし、保身じゃないという理屈を考えるのがアドバイザーの仕事でしょ?何より買収防衛策は交渉ツールですからね。

 

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