2018年02月15日

No.269 仏ダノン、保有するヤクルト本社(2267)株を一部売却

 これ、かなり興味深い記事です。期末ですから、株が動きますね~。

仏ダノン、ヤクルト株一部売却へ、筆頭株主は維持 2018/2/14 16:57
ヤクルト本社
は14日、仏食品大手ダノンが保有株式の一部を売却すると発表した。ダノンが議決権ベースで約21.52%保有する株のうち、最大15%分を売却する可能性がある。14日時点の終値ベースで全部を売り出すと、売却額は2000億円弱となる。株放出後もダノンが筆頭株主であることは変わらない。ダノンは2000年にヤクルトの株式5%を取得し、事業提携契約も締結した。しかし、関係を深めたいダノンと、経営の独立性を維持したいヤクルトの間の溝が埋まらず、13年には契約を解消していた。ダノンは3月中に証券会社を通じて株式市場に株を放出する。一方、ヤクルトは14日、自己株を除いた発行済み株式数の約3%か360億円を上限として自社株買いを実施すると発表した。取得株は消却する予定で、ダノンによる株売却の市場への影響を緩和する。
今回のヤクルト株の一部売却の背景には、ダノン側の経営環境の変化がある。ダノンは16年に米国の有機食品メーカー、ホワイトウエーブ・フーズを1兆円超を投じて買収。これに伴って負債が拡大していた。さらに、ダノン株を保有する米アクティビスト(物言う株主)ファンド、コーベックス・マネジメントが効果的な意義を見いだせないヤクルトとの関係解消を求めていたともされる。

 2018年2月14日にヤクルトが「ダノンとの覚書の改定」「株式売出し並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動」「自己株式の取得に係る事項の決定及び自己株式の消却」を公表しました。

http://www.yakult.co.jp/news/file.php?type=release&id=151858858643.pdf

http://www.yakult.co.jp/news/file.php?type=release&id=151858868255.pdf

http://www.yakult.co.jp/news/file.php?type=release&id=151858878648.pdf

 ダノンがヤクルト株式を取得した経緯はちょっと忘れましたが、決して友好的なものではなかったように記憶しています。上記記事にも「ダノンは2000年にヤクルトの株式5%を取得し、事業提携契約も締結した。しかし、関係を深めたいダノンと、経営の独立性を維持したいヤクルトの間の溝が埋まらず、13年には契約を解消していた。」とありますし。2012年11月7日の東洋経済でも、保有比率を5年間引き上げない、とか、ダノンがヤクルトに対してTOBをほのめかした、とか、ヤクルトが激怒した、とか書かれていますから、まあ、友好的な関係とは言えないものだったのでしょう。

http://toyokeizai.net/articles/-/11170

ヤクルトとしては目の上のたんこぶだったダノンがいなくなってくれれば、万々歳でしょうか。ヤクルトって、買収防衛策も導入していないんですよね。なぜでしょうか?では、恒例の株主構成チェーック!

 法人株主比率29.63%、みずほ信託銀行みずほ銀行口2.82%、共進会2.51%、みずほ銀行1.24%の合計36.2%です。外国人株主はほとんどダノンですね。個人株主比率はそこそこ高いですし、安定株主比率も高いので、買収防衛策を導入しようと思えば導入できたはずです。なぜ導入していないのでしょうか?想像ですが、たぶんダノンとの間で何らかの取り決めがあるから、買収防衛的な行動は制限が加えられているのでしょう。導入したくても導入できなかったのでしょう。

 なにはともあれ、ヤクルトさん、おめでとうございます。という感じですね。この件で注目すべきところは何でしょうか?まあ、やっぱり、突然株式を取得されたような場合は、念のために買収防衛策を導入した方がよいということでしょう。あと一つ、ヤクルトがラッキーだったのは、ダノンが売出しに応じたということではないでしょうか?ダノンは売ろうと思えば、第三者に売ることだってできたのではないか?と思います。記事には「ダノン株を保有する米アクティビスト(物言う株主)ファンド、コーベックス・マネジメントが効果的な意義を見いだせないヤクルトとの関係解消を求めていた」とあります。だとすれば、早くヤクルト株式を処分したかったでしょうし、売出しなんてコストのかかる方法は取りたくなかったかもしれません。だって、売出しはディスカウントがきついでしょう?まあ、もしかしたらダノンとヤクルトとの間で、ヤクルトの同意のない相手には売らないという取り決めがあったのかもしれません。ダノンのヤクルト株式の取得価格ですが、変更報告書によると、ダノンがヤクルト株式の取得に使った資金は134,483,730千円だそうです。保有株数は35,212,000株なので、1株当たりの取得金額は3,819円です。さて、ヤクルトの株価は?

 おおー!高い!2月14日の終値は前日比180円安の7,940円です。ダノン、大儲けじゃないですか!うらやましい!株価が上がっているから、ダノンも出ていきやすかったということですね。買われてしまった場合、株価を上げないと買収者はなかなか出て行ってくれません。というか、出ていけないのです。出ていけないから、株価を上げろと迫るのです。だから買われてしまった会社は、まずは株価を上げないことにはどうしようもありません。

 ちなみに、このヤクルトのケースですが、違った見方もできます。資本上位会社がいる会社はもうお気付きではないでしょうか?資本上位会社の株主構成を見てください。外国人株主比率が高い場合、アクティビストも株主かもしれません。アクティビストがその会社に対して「どうしてあなた方は●●株式会社の株式を20%も持っているんだ?どういうシナジーがあるんだ?効果的な意義が見出せないから関係を解消すべきだ!」と迫ったらどうなるでしょうか?資本上位会社との歴史的な関係もあるかもしれませんが、今やそのような背景を理解してくれる投資家はいません。安定的だった株主構成は一気に不安定な株主構成になる可能性があります。

 

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