2018年02月22日

No.275 上場グループ会社にこそ買収防衛策を導入してもらうべき

 上場子会社であれば必要ないでしょうが、持分法適用会社などの場合は買収防衛策を導入してもらった方がよいと思います。以下の株主構成を見てください。

 コラムNo.219でも触れていますが、ダイワボウ情報システムの株主構成です。今は大和紡績の子会社ですが、2008年までは上場していました。安定株主比率は、法人株主28.98%です。エフィッシモに目をつけられてしまった会社です。

エフィッシモはダイワボウ情報システムの大量保有報告書を2007年8月20日に提出しました。その後、どんどん買い進みます。およそ3か月後には保有割合が20%を超えました。そして、保有割合が25%に到達してしまいました。つまり、資本上位会社である大和紡績の保有割合を超えた、ということです。そして、買い増しは止まりません。ダイワボウ情報システムはエフィッシモに買われている途中で、発動のない事前警告型ルール(いわゆる買収防衛策ではありません)を導入し、エフィッシモに情報提供と時間の確保を要請しましたが、エフィッシモは当初従って情報提供をしたものの、途中でルールに従わず買い増しを進めました。結果、エフィッシモの持分は30%を超え、そして、とうとう40%を超えてしまいました。この時点で「勝負あり!」です。これだけ買われてしまうと、もうどうしようもありません。ダイワボウ情報システムとしては資本上位会社を頼るしかなくなります。2008年9月9日、最終的にダイワボウ情報システム株式の24.11%を保有する大和紡績がTOBによりダイワボウ情報システムを完全子会社化すると発表しました。TOB価格は2,400円。エフィッシモは保有するダイワボウ情報システム株式のすべてをTOBに応募しました。エフィッシモの取得単価は変更報告書に記載のデータから計算すると1株当たり1,559円で、約199億円の売却代金で約70億円の売却益を得たと推定されます。

 資本上位会社が存在する会社は、安定株主対策を基本的にはしていません。資本上位会社がいるから、安定株主対策について議論する必要もないと考えますし、議論しにくいとも言えます。「なんでうちの会社が株式をたくさん持っているのに、安定株主対策なんかするの?なんかうちの会社に不満でもあるの?」と思われるかもしれませんからねえ。だから基本的には資本上位会社くらいしか安定株主がいません。実は狙われやすいのです。

 そして、狙われたら絶対に資本上位会社を頼ります。完全子会社になってもシナジーがないとしても、頼ります。頼られた方も、シナジーがないとわかっているけど助けます。なぜなら見捨てられないからです。そういう心情をアクティビストは見ぬきます。

 上場グループ会社の株主構成をじっくり見てください。貴社以外の安定株主はいますか?狙われたら貴社を頼ってきませんか?助けたとしてもシナジーはありますか?「いざというときは自分たちで守ってくださいね」 買収防衛策が必要な上場グループ会社がないかどうかよーく検証しておく必要があります。必要があれば、世間の目を気にせず買収防衛策を導入してもらうべきです。

 

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