2018年03月21日

No.294 3月総会、増える「対決型」 株主提案が過去最高に

3月総会、増える「対決型」 株主提案が過去最高に 2018/3/20

12月期企業の株主総会が本格化するのを控え、株主と経営陣が対立する事例が相次いでいる。株主提案は18件・5社に上り、議案数は3月総会で過去最高になりそうだ。投資家向け指針の改定で株主提案に賛同が集まりやすくなったことが背景にある。提案内容も工夫が目立つ。6月総会の前哨戦として注目されそうだ。

「話が違うぞ」。片倉工業の経営陣は1月末、香港の物言う株主、オアシス・マネジメント・カンパニーからの提案書に色をなした。同ファンドから提案を受けるのは2年連続。今回は社長解任や配当の10倍以上の引き上げなど「これまでの対話内容からかけ離れ、過激な内容になっていた」(同社幹部)という。

オアシスにも言い分はある。片倉の収益源は工場跡地を活用した不動産賃貸業で、祖業の繊維などは苦戦が続く。3年前から事業の選択と集中が必要と主張し、1月中旬にも経営陣に会い要求したが理解を得られなかった。「片倉は時間稼ぎをしているだけ」(オアシス)。対立は委任状争奪戦にもつれ込み、29日の総会で結果が判明する。

「会長を説得しなければ経営改善は見込みにくい」。国内運用会社、スパークス・グループの関係者が指摘するのは、帝国繊維の飯田時章・会長兼最高経営責任者(CEO、82)のことだ。飯田会長は富士銀行(現みずほ銀行)出身で1995年に社長就任。防災製品を軸に帝国繊維を立て直した「中興の祖」だ。

スパークスは14年の株取得以降、帝国繊維と年に数回面談し、積み上がった利益剰余金の圧縮などを求めてきた。ただ会長と一度も面談できない中で、経営方針の変更は期待しにくいと判断。29日の総会では増配や取締役の任期短縮を求める株主提案を出した。

アイ・アールジャパンによると、12月期企業の定時総会で出ている株主提案は5社・18件。前年の2社・4件から増え、提案数は3月総会で過去最高となる見通しだ。

背景にあるのは17年の機関投資家向け行動指針「スチュワードシップ・コード」の改定だ。投資家は総会での議案賛否を開示するよう求められた。国内機関投資家は株主提案に反対する傾向が強かったが、投票行動が「ガラス張り」になり合理的な提案であれば賛成せざるを得なくなった。

提案する株主側も工夫を凝らす。「他の株主に嫌われない提案を狙っている」。あるファンドのアドバイザーは明かす。運用会社の株主提案への賛否基準を参考にしているという。実際、今総会の株主提案では米議決権行使助言大手2社がともに賛成推奨する例が目立つ。最終的に可決される案件は少ないとみられるが、経営陣への圧力が強まりそうだ。

早稲田大学の宮島英昭教授によると、米国では物言う株主が株主提案を出し、穏健な機関投資家が賛同して可決される構図が多いという。日本でも年金基金と大手金融機関が共同で企業と対話する「集団的エンゲージメント」が始まった。宮島教授は「米国型総会まであと一歩のところまで来ている」と分析する。

 3月総会企業に対する株主提案が過去最高だそうです。株主提案されている企業は、GMO、コランダム、清和中央HD、片倉工業、帝国繊維の5社だそうです。各社に対する株主提案は水曜の日経を見ていただけると幸いです。では、この5社に対する株主提案は可決されるでしょうか?株主構成を見てみます。

 各社の安定株主比率を見れば一目瞭然です。どの会社も株主提案は可決されないでしょう。GMO以外は、外国人株主比率も高くありません。ただ、安定株主比率が高いからと言って胡坐をかくのはよくありません。安定株主以外の株主が株主提案に賛成してしまうと「安定株主以外は株主提案に賛成しているぞ」とアクティビストは声高に主張します。そうするとどうなるでしょうか?「やっぱり日本企業は持ち合いで守られている」「持ち合いは悪だ!」という批判がなされるでしょう。そして金融庁や東証が「やっぱり持ち合いに関する規制を厳しくした方がよい」「少なくとももっとちゃんとした開示をさせるべきだ」と考え始めたらどうでしょうか?

 これらの会社は「俺たちには安定株主がいるのだから大丈夫!」などと考え、いい加減な対応をしてほしくはありません。他の会社にとって大きな迷惑になるからです。日本企業1社1社が持ち合いや株主提案、敵対的買収に対して真剣に考えて行動しないと、上場していることが窮屈な世の中になってしまうのではいでしょうか。誰かが勇気をもって動かないと、本当に持ち合いができなくなってしまうリスクだってあります。

 

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