2017年06月20日

No.110 あなたはどちら派?~東芝の役員選任をめぐる議決権行使助言会社の推奨~

 以下の新聞報道が出ています。

東芝の全取締役の再任案反対 米助言会社 2017/6/18

 東芝が28日に開く定時株主総会に向け、議決権行使助言会社の米グラスルイスが、東芝の提示した綱川智社長ら全9人の取締役再任案に反対を推奨したことが18日分かった。綱川社長は「株主の利益を守る適切な監督をしていない」という。一方、同業の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズは「この時期の綱川氏否決は株主の利益にならない」と指摘し、全9人の取締役再任に賛成を推奨している。

 グラスルイスは取締役全員の再任に反対推奨、ISSは取締役全員に賛成推奨しています。分かれましたね~。皆さんどちらの推奨を支持しますか?

 私は今の東芝に関しては「指名委員会の委員である社外取締役に反対」です。本当は取締役全員に反対です。なぜか?だって、決算短信を提出できないわ、監査法人と対立するわ、有価証券報告書も提出できないわ、株主総会もまともに開催できないわ・・・踏んだり蹴ったりじゃないですか?株主総会なんて、後日臨時株主総会を開催する前提ですよ。今の経営陣には百歩譲って粉飾決算の責任はないのかもしれませんが、現在の混乱の責任はあるはずです。だったら責任取りましょうよ、と考えます。まあ、監査対応などがあるので全員反対は混乱するでしょうから、あえて指名委員会のメンバーのみ反対です。理由はのちほど。

 ある投資家と話をしたのですが、その方は「さすがに国は東芝をつぶさないだろう」とおっしゃっていました。???私は大いに疑問です。国がつぶさない?つぶさない?はて、「つぶす」とはどういう意味なのでしょうか???破産のことでしょうか?法律用語になると私はうといのですが、東芝の現状についてけっこう誤解している人がいるのではないかと思います。その投資家は「今の東芝株を買ってもいいんじゃないか?国は東芝をつぶさないだろうから」という意味合いでおっしゃっていました。

うーん。つぶすという意味ですが、いろいろとあると思います。会社更生法を適用しないと言い切れるでしょうか?上場廃止にしないと言い切れるでしょうか?そりゃー、東芝が消えてなくなってしまうような方策を取るとは考えられませんが、会社更生法や上場廃止という選択肢は大いにあり得ると思います。株式価値がゼロになってしまう方策を取る可能性はあり得ます。むしろ私は「経営陣を入れ替えて上場廃止を選択すべき」と考えます。だから私は東芝株には手を出しません。

名経営者を輩出した東芝・・・いや違います。石坂泰三は第一生命の社長ですし、土光敏夫はIHIの社長です。両氏とも東芝プロパーではありません。両氏ともに東芝の危機に際して社長になった方ではなかったでしょうか?むしろ東芝プロパーの西室氏が社長に就任した日本郵政は?海外企業のM&Aに絡んだ大きな損失を計上しました。

思い切って、東芝は外部から名経営者をまた迎え入れてはどうでしょうか?そうしないと思いきった改革ができないと思います。それを進言するのが指名委員会の委員である社外取締役の役割ではないかと考えます。

グラスルイスやISSが具体的にどういう理由で現経営陣に反対・賛成推奨しているのかはわかりませんが、私は結論としては全員に反対・賛成というような極論は取りません。指名委員会メンバーに対して反対推奨します。指名委員会は「綱川さん、今の東芝を立て直すには、あなただけじゃあムリだ。我々が外部からスカウトする」と言うべきではないかと考えます。社長のクビをすげ替えることも検討できますが、社長の上に外部から会長をスカウトすることのほうが改革を期待できるのではないでしょうか。現場の混乱も抑えられると思います。

しかし、ISSは本当につまらない推奨しかできませんねえ。情けない。「この時期の綱川氏否決は株主の利益にならない」・・・はあ?そんな意見は新入社員でも言えます。こういう時期・状態だからこそ、それを打破し、大きく改善・改革するだけのパワーや経験を持つ人材を引っ張ってこないとダメなんですよ。私はお会いしたことはないですが、東芝を立て直せる方は同業にいたはずですよ。よそに取られちゃいましたけど。せめてそういうトップの交代・スカウトを進言できない指名委員会には反対推奨・苦言を呈するような意見をすべきでしょう。

ISSの推奨は本当につまらない。「うーん。東芝の状態はややこしいから現状維持!」外資なのになんという日本的な考え方なのでしょうか・・・。たぶん、今のややこしい東芝の状態を理解している現経営陣に対応をまかせた方がマシ、と考えているのでしょう。だとしたら「監査対応で混乱が予想されるので、監査委員会メンバーについては今は反対しない。しかし、いずれ責任については検証する。」とかもっと推奨内容を工夫できるでしょう?そもそも、現状を理解できていないから有報出せないんでしょ?この程度の推奨に金を払っている機関投資家がいること自体が不思議です。ISSは知恵と工夫の出し方を間違えています。ISSは黒田電気の推奨ではエキセントリックな意見しか言っておらず、常識人なら「ISSって本当に大丈夫?」と感じてしまうはずです。ISSが賛成推奨した人物がインサイダー取引に関与しちゃったら、どう責任とるつもりでしょうか?責任がないからといって、無責任な意見を垂れ流してはいけません。

今の東芝こそ、指名委員会が声をあげるべき、と推奨すべきであると思います。こういうときに社長のクビをすげ替える、もしくは優秀な人材を会長職にひっぱってくることをしない社外取締役ならいる意味がないでしょう。ISSの出している独立性基準など何の役にも立ちません。

「なるほどねえ。ISSはさすがだねえ」と言ってもらえるような推奨を早くできるよう応援したいと思います。もしくは「もうがんばらなくていいんだよ。背伸びしなくていいんだよ。」と声をかけてあげたいです。

 

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