2017年06月22日

No.112 買収防衛策廃止企業が増えるほど・・・継続企業はラッキーです など2コラム

■買収防衛策廃止企業が増えるほど・・・継続企業はラッキーです

 私の経験上、買収防衛策を導入している企業に買収提案がなされたことはほとんどないと記憶しています。記憶にあるのは、日本電産vs東洋電機製造とか楽天vsTBSとかでしょうか。でも、ファンドが買収防衛策を導入している企業の株式を大量に取得したケースはあまりないのではないかと思います。

 「いや、●●ファンドに買われている会社は買収防衛策を導入しているよ」 それって、ファンドに買われてから導入したんじゃないですか?そういう企業はたくさんあります。というのも「●●ファンドが大量保有報告書を出した!」と相談されたら、「はい、即買収防衛策を導入しましょう」と私アドバイスしていましたから。たまに買収防衛策のトリガーが20%ではなく、25%になっている会社さんがありませんか?あれはファンドに20%以上取得されてから買収防衛策を導入したためです。

 買収防衛策を導入している場合でも日本電産や楽天は買収提案をしていますが、私の記憶と経験では、ファンドは買収防衛策を導入している企業にはあまり手出しをしていないように思えます。なぜでしょうか?

そもそも日本電産や楽天は上場企業であり、買収防衛策のルールに則り質問をされても、特に隠すような情報はあまりないでしょう。当然、シナジー効果の算出など、買収価格に関する質問などは一部答えにくいものもあるとは思います。

一方、ファンドはと言うと、出したくない情報がたくさんあるはずです。例えばよく質問しますが、出資者を教えろ!という質問です。なぜ買われる側の会社はファンドに対して出資者を教えろと質問するのでしょうか?カネの出し手に反社会的勢力などが存在しないかどうかを確認する必要があるからです。当然ですが、ファンド側は守秘義務を理由に回答しません。他にもたくさん質問しますが、ファンド側からすると対応するのは面倒で手間がかかります。途中から導入されたのであればまだしも、最初から買収防衛策を導入している企業をわざわざ狙う必要はないでしょう。買収防衛策を導入していない魅力的な企業は他にたくさんいます。あえて狙う必要がないのです。また、買収防衛策を導入しているということは、平時から敵対的買収に対する備えを一応しているのだろうと見ることができますから、導入していない企業に比べると手ごわい可能性があります。

 佐々木ベジさんもソレキアが買収防衛策を導入することを警戒していましたが、これから先は買収防衛策を廃止した会社のほうが狙いやすいかもしれません。なぜなら、大量保有報告書を提出しても、後出しジャンケンのように買収防衛策を導入しにくいからです。なぜなら一度廃止してしまったからです。

 「買収防衛策を導入すると逆に買われやすくならないか?だって当社を買収する際のルールを明示するのだから」と質問されることがあります。私の経験上、買収防衛策があるほうがファンドには狙われにくいのではないかと思いますが、事業会社は違うかもしれませんね。ただ、事業会社が本気で仕掛けてくるときは、もう逃げられないかもしれません。

■院政批判~相談役制度に取引所やMETIは規制を設けるべきか~

 最近、相談役・顧問制度に対する批判の声が強いです。東芝問題が発端でしょう。非常におもしろいと思ったのは、武田薬品です。武田薬品は、長谷川会長が退任し、退任後、相談役に就任するそうです。しかし、相談役制度に対する株主提案が出されました。武田薬品は株主に対して「長谷川氏が相談役に残っても経営判断に影響をおよぼさない」「報酬は約10分の1に減る」「社用車や秘書もつけない」と記した手紙を送ったそうです。

 私、武田薬品に関しては長谷川氏が相談役に残っても構わないと思うのです。なぜなら「クリストフ・ウェバー社長が株主に理解を求めている」からです。外国人にとって相談役と言う制度はわかりにくく透明性の低い制度でしょう。でもその外国人である社長が「長谷川氏には相談役として社内外で活躍してもらいたい」と考えているのでしょう?いいじゃないですか。「いやいや、ウェバー社長だって長谷川さんが引っ張ってきたんじゃないの?だったら外国人とは言え長谷川さんに頭が上がらないんじゃないの?」と皆さん思うかもしれませんね。でも、外国人の社長が理解してOKしているのだから、いいんじゃないですか、そこまで目くじら立てなくても。乱暴な意見でしょうか?・・・ちなみに、武田薬品の役員構成ですが、取締役9名中社外取締役は5名です。外国人取締役は4名で1名が社外取締役です。この役員構成の武田薬品に、そんな議論が必要ですかね?

 6月18日の日経を見ると「経産省と東京証券取引所は、上場企業に報酬の有無や勤務体系、業務内容など詳しい情報の開示を求める制度を今夏にも創設する方針だ」とあります。日本取引所の最高経営責任者は「一律に廃止する必要はない。制度を残して相談役は顧問を置きたい企業は、狙いや役割を投資家にきちんと説明するルールが必要」と話しているそうです。

 ホントにこんなルールが必要なのでしょうか?東芝で問題が起きたから他の企業でも起きるに違いない!ということでしょうか。東芝の問題ですが、私は相談役や顧問制度が諸悪の根源ではないと思います。相談役や顧問がはじめた事業だから「粉飾してでも続けなくては!」などと考えないでしょう。粉飾決算って、えらいことですよ。何が原因でそこまで突き進んでしまったのか想像できないのですが、さらに乱暴な意見を言わせていただくと東芝のような問題は「10年に1回は起きる問題」です。まあ、オリンパスの事件が発覚したのは2011年なので、5年くらいに一度は起きる問題です・・・

 粉飾してでも上からの指示に対応せざるを得なかった。上は粉飾していることを薄々気づいてはいるが、やめられなかった。「オレは粉飾しろなんて指示していない!」 そりゃそうでしょ。むしろ指示してやってたオリンパスのほうが事態の収束に時間がかからなかったですね。東芝の場合、部下による「行き過ぎた忖度」が問題だったような気がします。

 相談役・顧問制度に関する批判については「箸の上げ下ろしにまで口を挟まなくてもいいんじゃないの?」というのが私の意見です。ISSも、そんな細かいところに口を出して「私たちは仕事してます!」というアピールをするのではなく、もっと大所高所からの価値ある意見を言ってはどうかと思います。

 

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