2021年12月08日

No.1204 今回のオーケーの狙いはこういうことだったのでは???

大阪高裁で判断がひっくり返り、関西スーパーが無事経営統合を実現できる方向になったようです。ただ最高裁にもってくみたいですね。

http://www.kansaisuper.co.jp/upimages/irinfo/irnews_671.pdf

オーケーのプレス

コラムで何度も取り上げましたが、そもそも関西スーパーの安定株主比率は高いです。今回の統合議案はギリギリの可決でしたが、ギリギリとは言え特別決議の議案を可決できたのです。以下、議案の賛成率です。

第1号議案の賛成個数は179,876個です。関西スーパーの総議決権は300,182個です。単純に割ると179,876個÷300,182個×100=59.92%です。もちろん個人株主や機関投資家でも賛成している人がいるかもしれませんので、「これが安定株主比率です」とは言い切れないものの、これくらいの安定株主比率があっても不思議のない株主構成をしている会社です。また、棄権したのも取引先株主かもしれませんので、これらを含めると相当高い安定株主比率を確保している会社なのです。

これは何も私だけがわかることではなく、普通のアドバイザーであれば「関西スーパーに敵対的TOBを仕掛けても、絶対に成功しない」ということはわかるはずです。当然、アドバイザーもオーケーに対してそうアドバイスするでしょう。みんな関西スーパーに敵対的TOBを仕掛けても成功しないことはわかっていました。では、どうしてオーケーは関西スーパーにTOB提案をしたのでしょうか?

弊社提案の方が関西スーパー様の企業価値向上及び少数株主の利益により資するものと考えますので、今後開催される関西スーパー様の臨時株主総会では反対の票を投じる予定です。また、仮にH2Oグループ様との取引が撤回される場合、関西スーパー様の取締役会が弊社提案に真にご賛同頂けることなどを前提として、一株当たり2,250円で公開買付けを行う意向があります。

オーケーは「関西スーパー様の取締役会が弊社提案に真にご賛同頂けることなどを前提」としてTOBを行う意向があったのです。なにも「敵対的でもやるぞ」と言った訳ではありません。そしてオーケーは、関西スーパーが仮に統合議案が否決されたとしてもTOBに賛同することなどないだろうと考えていたと思われます。では絶対に賛同してくれないだろうに、どうしてTOB提案をしたのでしょうか?

オーケーはいろいろと報道されているとおり、関西スーパーから売り場づくりや生鮮品の鮮度管理などを教えてもらったようです。今回のTOBについても「恩をあだで返したようなもの」と報じられています。

https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/202109/0014659651.shtml

ではオーケーはなぜ関西スーパーを欲しいと思ったのでしょうか?記事にもありますが、関西への進出に当たって自社出店よりも好立地に店舗網を有する関西スーパーをグループ化したほうがよいと考えたからのようです。そうです。オーケーは関西に出店したいと考えているのです。

ではオーケーがTOBをかけずに関西に独自出店したらどうなるでしょうか?「恩ある関西スーパーの地盤に攻め込んでくるのか?この恩知らず!」とどっちにしろ言われそうです。そして関西人は「オーケーって誰やねん?」って考え、オーケーの名前が関西に浸透するのに時間がかかりそうです。私は以下のとおり想定します。

・そもそもオーケーは関西スーパーの安定株主比率が高くTOBをしても成功しないのはわかっていた。

・にもかかわらずこのように大々的な提案をしたのは、オーケーの関西、全国での知名度をあげたかったから。そしてちゃんと仁義を切っておきたかったから。

・なぜ知名度をあげたかったかと言えば、今後、独自に関西に出店したいと思っているから。

・ただ、一応恩のある関西スーパーの地盤である関西に出店すると「この恩知らず!」「礼儀知らず!」と言われる可能性があったり消費者離れを起こしたりする可能性があるるので、そういった批判・リスクをつぶすためにあえて関西スーパーに「一緒にやりませんか?」とTOB提案をした。断られることはわかった上で。

・そしてTOBを断られたので、堂々と関西に出店していく。何か批判されたとしても「だから関西スーパーさんには事前に一緒にやりませんかと言いましたよね?でも断りましたよね?だから独自に出店することにしたんですよ。仁義は切りましたよね」と。

・今回の件でオーケーの名前は関西でも知られるようになったので、広告宣伝になった。関西人も「オーケーって関スーともめてたとこやろ?知ってんで!出店したん?」となる。今回の件はテレビでも報道されていた。

・何なら関スーの近くに出店して、関スーをつぶしにいく。オーケーの体力と勢いがあればそれも可能。

・関西人は新しモン好きなので「あのもめてたオーケーの店、できてるやん!一回行ってみよ!」ってなる。そして関西人は安くていいものが好きだから、関スーのお客さんがオーケーに流れるかも??

関西人への偏見めいた記載がありますが、何卒ご容赦ください。私も西の人間ですので(笑) もしオーケーが今後関西に独自出店したらどうなりますかね?たぶんマスコミは「関西スーパーと争ったあのオーケーが関西に独自出店!」「今度はTOBではなく出店攻勢を仕掛ける!」って報道しますよね?ますます広告宣伝効果アップです。そして関西スーパーの近くに出店しようもんなら、報道が過熱します。オーケーに来た関西のお客さんにインタビューするでしょう。こういうときってマスコミはオーケーの肩を持つような報道をしがちですから、たぶん「オーケーってやすうてええもん置いてまんなあ!」ってな発言を流すと思います。

そして関西スーパーの近くに出店したオーケーに対してマスコミが「一部では関西スーパーへの嫌がらせではないかとも言われていますが」とインタビューしても、オーケーは「我々は事前に関西スーパー様に対しては一緒にやりませんか?と提案してきました。しかし関西スーパー様は我々の提案をお断りになりましたので、我々としては独自に出店するという戦略を取らざるを得ませんでした。うちとしてはぜひ一緒にやりたいと思い事前に提案したのですが残念です。これからは関西を地盤とする関西スーパーさんの胸を借りるつもりで頑張っていこうと思っています。お互いよい勝負をしましょう!」と言えます。

オーケーさんの独自出店を期待しています。

 

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失敗するでしょうね。と思っていましたが、そうとも言えない気がしてきました。まず日経の記事を抜粋しますが、本件は株主への説明責任という点がポイントではありません。

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