2022年05月19日

No.1310 敵対的TOBが必ず増える理由~攻撃こそが最大の防御です~

以下のコラムを書いたことがあります。

https://ib-consulting.jp/column/3184/

今後日本の人口が減ることは確実です。有効かつ抜本的な対策を今すぐに打たないことには、日本は今後大変なことになっていくと思われます。

特に厳しいのは主力マーケットが日本国内である会社ですね。トヨタのように工場を海外に移し、日本のマーケットだけではなく世界中のマーケットがターゲットの会社はそうでもないかもしれませんが、日本国内で特にBtoCの会社はしんどいのではないでしょうか?どういう会社が動きそうか、どういう業界が狙われそうか・・・一応、私なりの考えはあるのですが、ここでは控えます。円安だから海外の会社に狙われるリスクも高まっていますが、やはり今後は国内の事業会社による敵対的TOBが増えてくるのではないかと思っています。

上記コラムのとおり、日本の人口は減っていきます。となると、当然ですが会社も減っていくでしょう。でも単純に減るという話ではなく、生き残りをかけた戦いが始まるわけです。特に日本国内の需要に頼っている会社にとっては深刻な話です。人口が減少するのですから、そもそものパイが減っていきます。減少する国内需要が減るということはパイが減る、価格競争も激しくなります。

そうなる前に手を打っておかなくてはと考える会社が出てきても不思議なことはありません。競争が激しくなる前に同業を買収してしまい、リストラ(資産、人員のリストラ)することで収益力を高めようと。つまり「ジャマモノは早いうちにつぶしてしまえ」という理屈です。

想像ですが、狙うのは業界No.1の会社で、狙われるのは業界No.3の会社じゃないかと思われます。なぜそう思うかと言うと、これまで旧村上ファンドなどのアクティビストのターゲットになったのが3番手企業が多いのではないかと感じるからです。例えばエフィッシモのターゲットになった川崎汽船とか。業界No.3の会社の株式を大量に取得し、No.1の会社に売り付ける(川崎汽船がそうなったというわけではありません)。そうすればNo.1とNo.2の差が広がります。No.1は業界で圧倒的な地位を占めることになります。永遠に埋めようのない差をNo.2との間につけることになります。

ただ、私はそうそう簡単に敵対的TOBがうまくいくとは思っていません。なぜならこれまで日本において本格的な敵対的TOBがうまくいったケースはないからです。こう書くと「伊藤忠商事のデサントに対する敵対的TOBは成功したぞ」「前田建設工業も!」「ニトリも!」とおっしゃると思うのですが、あれらのケースって本当に本格的な敵対的TOBですかね?

デサントはそもそも伊藤忠商事の持分法適用会社でしたし、TOBを始める前に伊藤忠商事はデサントの株を約30%保有しており、TOBでは10%程度しか買っていません。前田建設工業に敵対的TOBを仕掛けられた前田道路も、前田建設工業の持分法適用会社でした。これらのケースは敵対的TOBではありません。敵対的買い増しです。単に株式を買い増しただけなのですから、そりゃあ絶対に失敗しないですよ。ただ、敵対的TOBを決断した両社の経営トップは称賛に値します。特に伊藤忠。そりゃ、単に10%しか買い増さないのですから絶対に失敗はしませんが、乗っ取り屋とか批判されるリスクが多少はある世の中で、伊藤忠と言う日本を代表する総合商社が敵対的TOBを選択したのはすごいと私は思っています。

「ニトリは島忠の株をTOB前に持っていなかったじゃないか!」 そりゃそうですけど、ニトリと島忠の時価総額ってどれくらいでしたっけ???当時、ニトリが2兆円を超えていたのに対して島忠って1,000億円くらいでしたよ。あまりに規模が違い過ぎて、もはや敵対的TOBというより弱い者いじめにすら思えてきます。

「じゃあ本格的な敵対的TOBを成功させるためにはどうすりゃいいんだよ?」 それはいくらなんでもこの場でお答えすることは控えます。当然ですが、絶対に成功する方法というのはありません。

ただ、1つ重要なことは「相手のことをよく考える」ということです。敵対的TOBを仕掛けると昨今世の中は「誰にとって敵対的なんだよ!」「会社は株主のものなんだから株主にとっては敵対的じゃない」「TOB価格だけで判断しろ」と言います。世の中、変わりましたねえ。でもね、敵対的TOBを仕掛けられた会社はそんな風に考えられませんよ。敵対的TOBを仕掛けられた会社がまず思うのは「この野郎!許さねえ!」です。

そりゃそうですよ。何の断りもなくいきなり「お前の会社の株を過半数買ってうちの子会社にする」っていう提案をされるんですから、対象となった会社は頭にきます。TOB価格が高いから賛同表明をしようなどというお人好しな会社など日本にはありません。にもかかわらず買収者の方が株主利益だけを考えた提案などしようもんなら、反発するに決まっています。

じゃあ対象会社の経営陣や従業員に配慮した提案をすればよいのかと言えば、そうではありません。そもそも敵対的TOBという時点で配慮もなにもありません。「じゃあどうすりゃいいんだよ?」ってことになるのですが、まあ「自分たちが何をしようとしているのかよーく考えてみてください」ということです。敵対的TOBというけれど、何をしようとしているのかと言えば、M&Aですよね???M&Aを成功させるには何が重要で、何がかかるのか?これをよく考えることです。これがわかれば、平時型だろうが有事型だろうが買収防衛策も怖くないのです。

逆に言えば、買収防衛策は完全な防御策ではありませんから、皆さん企業防衛投資をちゃんとやっとかないとダメってことです。完全な防御策ではないけれど、平時型買収防衛策は企業防衛投資の第一歩ですよ。もちろん守ることだけ考えててもいけませんよ。食われる前に食うという発想もこれからの時代は大切です。

 

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