2023年04月18日

No.1516 東洋建設、ちょっと危なくないか???

YFOが東洋建設に対して取締役9名選任の株主提案をするようです。昔だったらYFOの勝つ可能性は低かったと思いますが、何とも言えないですねえ・・・。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC142060U3A410C2000000/

任天堂創業家の資産運用会社が東洋建設に対し、6月に予定されている株主総会で株主提案をすることが17日分かった。社外取締役だけでなく、業務執行にあたる取締役を含めて9人の選任を求める。資産運用会社は2022年から東洋建の買収を計画している。東洋建の取締役会は買収に同意せず、TOB(株式公開買い付け)は先送りになっている。総会で取締役の大半を入れ替え、TOBの是非を改めて判断してもらう狙いだ。

これ、今までなら私は「絶対に株主提案は通らん!」と元証券会社にあるまじき「絶対」と言っていたと思うのですが、ちょっと今回はどうかなあ、と思っています。

まず株主構成は以下のとおりです。

https://ib-consulting.jp/column/4726/

外部から見た安定株主比率はその他の法人23.56%、東洋建設共栄会2.99%の合計26.55%です。そしてYFOの持株比率は2022年9月22日に提出された変更報告書によると27.19%です。ちなみに東洋建設は2022年6月定時株主総会にて有事型買収防衛策の導入議案をかけましたが、総会直前に議案を撤回しました。たぶん否決されたのでしょう。ということは普通決議の議案を可決できなかった株主構成ということです。

こればっかりは予想するのが難しいのですが、YFOの株主提案を通すのはかなり難しいとは思うのです。前田建設工業(インフロニアHD)が20.19%保有し、全体で23.56%、いやたぶんもう少し高くて25%くらいの安定株主がいるでしょうから。ただ、去年の株主総会で有事型買収防衛策が否決されていますからねえ。そしてもう1年近くもYFOと東洋建設はやり取りをしたまま、いっこうに進展がありません。

YFOは東洋建設の賛同をベースにTOBをかける、1株当たり1,000円で全株買収という条件でです。ちゃんと買収条件を開示した上で取締役を送り込むと言っています。コロワイドvs大戸屋の時、コロワイドは大戸屋を買収するとは言ってませんでした。

そろそろ国内の機関投資家も「東洋建設もそろそろ覚悟を決めろや!」「YFOがイヤならインフロニアに値段を上げてもう1回TOBをやってもらえや!」と思っているのではないでしょうか?

そしてここにきて「公正な買収の在り方に関する研究会」が指針を公表しようとしています。以下は「指針原案」です。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/006_03_00.pdf

「真摯な買収提案かどうか」P15、「デュー・デリジェンスへの対応」P17、「取締役の選解任を行った上で買収を実施する場合の情報提供」P24などやこれは前から言われていますが、買収者に対して過度な情報提供を求めるなという意見もあります。この指針はYFOにとってプラスに働く可能性もありますね。

で、YFOの株主提案の取締役候補者ですが、記事によると社内2名、社外7名、監査役1名だそうです。わかっている方は以下です。

社内取締役候補:三菱商事の代表取締役常務執行役員や日本電産専務執行役員を務めた吉田真也氏、準大手ゼネコンのフジタで建築副本部長を務めた登坂章氏

社外取締役:Jパワー元副社長の内山正人氏、ガバナンスに詳しい弁護士の山口利昭氏ら7人。

うーん、えらい人を集めたっぽいですねえ。ただ、9名全員通るかどうかというと微妙ですね。おそらくYFOも全員通すのは難しいと思っているのではないでしょうか?YFOの狙いは、できれば過半、もしくはなんとか過半に近い数を送り込みたいのでしょう。過半じゃなくてもよいと考えるのはフジテックの件があったからです。フジテックは臨時株主総会の結果、オアシス側で過半を取ることはできなかったものの、寝返り?や辞任によって結果、過半を取りました。フジテックと同様のことが起きればと思っているのではないでしょうか?

今回はスキャンダラスめいたネガティブキャンペーンもやりにくいでしょうね。結果負けてしまったら、フジテックのように後から調査される可能性がありますから。

ただ、東洋建設側も取締役会の構成を見直して、新たな役員候補者を出してくるでしょうね。例えば社外取締役を過半にした取締役会構成となる選任議案を対抗案として出してくるでしょう。

なので結果、もしかしたらYFOの候補者の一部が可決され、過半に近い人を送り込めるかもしれないし、一方、東洋建設側も新たなガバナンス体制を対抗案として出してくるでしょうから東洋建設が全勝かもしれません。

 

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