No.1814 ストラテジックキャピタルの丸木さんはダイドーリミテッドに「そんな大規模株主還元を今やるのはおやめなさい」と言ってください
以下、昨日ストラテジックキャピタルが公表したプレスリリースです。
https://stracap.jp/wp2/wp-content/uploads/2024/07/81b9d3aafc50738a4c21aa8129841d18.pdf
以下の通り、ダイドーリミテッドの議決権を約32%所有するストラテジックキャピタルは6月総会で取締役選任の株主提案を行い、一部の候補者を可決させることができました。ダイドーリミテッドの取締役会8名中、3名しか送りこむことができなかったので支配できたわけではありませんが、ある意味、SC丸木さんの目論見は大成功したと私は見ています。以下の有料コラムの通りです。
https://ib-consulting.jp/column/5227/
ただ、これ、丸木さんの大勝利ってわけでもないんですよ。村上さんのおかげって部分もあります。もちろん村上さんがいなくても丸木さんの狙いは達成できたんですが。
https://ib-consulting.jp/column/5231/
そしてダイドーリミテッドは7月5日に大規模株主還元を公表しました。私は以下のコラムで「ダイドーリミテッドは狂っているんじゃないか」と厳しめの表現で批判しました。
https://ib-consulting.jp/column/5237/
無料部分で書いていますが、これ、今のダイドーリミテッドがやることですか?残念ながらダイドーリミテッドの本業は赤字垂れ流し状態です。SC丸木さんが言うとおり、本業を立て直さなくてはなりません。本業の立て直しには時間がかかるでしょうし、当然お金もかかります。いくらかかるのでしょうか?その試算はしたのでしょうか?株主総会が終わったばかりであり、本業の立て直しに関する施策やコスト、投資はこれから検討するのでしょう?
なのになぜ本業の立て直しに先立って、大規模株主還元を実施するのですか?いったい何の結果を株主に還元するのですか?本業の立て直しはこれからであり、立て直した果実は数年先の話です。どうして今株主に還元するのですか?
株主に還元するのは過去に築いた不動産を背景にしたものですよね?これから本業でいったいいくらの投資やコストが必要になるんですか?「不動産にあまえた経営をするな!」 上場会社の経営にはいろんなリスクがあるから安定した収益源を確保しておきたいという経営者の気持ちはわかる一方、アクティビストの言うこともわかります。ただし、不動産を背景にした大規模株主還元を、本業立て直しの道筋がまったくたっていない今のダイドーリミテッドにやらせますか?(後述しますが、SCがやらせた訳ではありませんが、だとしたら止めるべき。それも株主の責任)
SCはプレスで「今般のダイドーの発表内容については、弊社から提案したものでも、事前に同意したものでもございません」と言っています。オレたちがやらせたのではなく、ダイドーリミテッドが勝手にやったことだとおっしゃっているのでしょう。でしたらSCの丸木さん、丸木さんからダイドーリミテッドに
貴社はこんな株主還元をいまやってはいけない。もしかしたら我々がプレッシャーをかけすぎたから、間違った経営判断をしたのではないか?貴社が今やるべきことは株主への大規模還元ではなく、ニューヨーカーやブルックスブラザーズという本業の立て直しだ。これからいったいいくらの投資やコストがかかるかわからないのだから。もちろん不動産にあまえた経営をすべきではないと思うが、不動産を背景にした本業立て直しの投資が必要になる。
大規模株主還元は本業を立て直した結果やるべきことである。株主と経営者、その他のステークホルダーは同じ船に乗っている。株主だけが我先にと船から降りるようなことはしない。
ダイドーリミテッドにこう言っていただけないでしょうか?今回の大規模株主還元は今のダイドーリミテッドがやるべきことではありません。本業の立て直し資金を今株主が食い尽くしてはいけないのです(還元をしてもまだ立て直しの金はあるというかもしれませんが、そもそもまだ立て直しの道筋すら示せていません。検討はこれからでしょう?)。最悪、従業員が路頭に迷うことだってあるし、会社が潰れてしまうリスクだってあります。そこまでのリスクを負って大規模株主還元をやるべきではないでしょう?
もちろん業種によってはレバレッジをかけまくる経営をやるのも1つの案ではあります。安定したキャッシュフローが見込まれるなら、株主資本・負債の構成を見直した経営をするのも1つの手段でしょう。
でも日本のアパレル業であり、本業の立て直しがこれからであるダイドーリミテッドが「今」やるべき財務戦略ではないのでは?それを是正できるのはSCの丸木さんしかいません。ぜひダイドーリミテッドの経営陣に「考え直せ」と言っていただきたい。
なお以下はダイドーリミテッドの株価・出来高です。大規模株主還元を公表したのは7月4日で、7月5日(金)と7日(月)の出来高は相当あります。
SCの保有株数8,869,000株、旧村上ファンドの保有株数1,577,100株を大きく超える出来高です。まさかとは思いますが、SC丸木さん、売却していないですよね?村上さんはたぶん売却していると思うのですが・・・。あくまで想像です。
SCはよく売却した投資先について「売り逃げと言われることがあるが、SCが売却した後の株価も堅調だ」と言っていますが、今回のダイドーリミテッドはそういうことではありません。会社に対して株主提案をし、本業を立て直せと主張した株主の責任感に関する問題です。本業を立て直せと言って役員を送り込んだ以上、立て直しの結果が出るまで株を売るべきではないのでは?信義則の問題です。当然、丸木さんの株主提案に賛成した一般株主は「SC丸木さんと同じ船に乗る!」と考えて賛成してくれたのです。だから少なくともダイドーリミテッドの本業立て直しの道筋が見え「丸木さんの言うとおりのことをやったら会社の業績が大幅に改善したね」という状況になり、丸木さんが32%を持っている状態で市場で売却を始めても、決して株価が下がらない。つまり、丸木さんの買い上がりで株価が維持されている状態ではなく、本業を立て直した結果株価が高くなっているという状態になってから売り始めるのがアクティビストとしての筋ではないでしょうか?
以下、丸木さんは
IRジャパンは「資本市場の寄生虫」と著名アクティビストが断罪する理由
https://diamond.jp/articles/-/309035
私は記事の内容について言及するつもりはありませんし、IRジャパンの評価をしたいわけではありません。私は仕事柄、当然上場会社の希望に沿ったアドバイスをするものの、証券会社出身ですので、やはり投資家目線を忘れたアドバイスをしてはいけないと肝に銘じています。証券会社の顧客は上場会社だけではなく投資家もいます。今の当社のお客様も上場会社だけではなく、投資家もいらっしゃいますから。アクティビストもいらっしゃいます。
このような丸木さんの厳しい言葉を胸に投資家に後ろ指をさされないようなアドバイスをしなくてはいけないと思いながら仕事をしています。
ぜひSC丸木さんにおかれましては、ダイドーリミテッドの経営陣に「今回の大規模株主還元は見直すべきだ。せめて本業の立て直しの道筋がつくまでは。撤回しなさい」とアドバイスしていただきたいと思っております。