2023年04月19日

No.1517 公正な買収の在り方に関する研究会に申し上げる!

「公正な買収の在り方に関する研究会」が「指針原案」を公表しています。以下です。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/006_03_00.pdf

まず一言申し上げたいのですが、以下の委員についてです。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/006_02_00.pdf

事業会社の方がほとんどいない・・・。日立製作所の人しかいない。なんで買収防衛策にからむ話が多いのに、事業会社の人が日立しかいないの???いや、なんで日立なの?日立に敵対的買収が仕掛けられる可能性なんて限りなくゼロに近いでしょ?敵対的買収を仕掛けられたら、国をあげて守るでしょ?少なくとも1人くらいは買収防衛策導入企業の人を入れたほうがよかったのではないかと思っています。まあ、確信犯だとは思いますがねwww これは後述します。

では本題です。私、この指針原案を読んで「おお!委員会が平時型買収防衛策の効果を認めてるやないかい!」と思いましたよ。以下です。

我が国においてはこれまで、業績が低迷するなど経営を改善する余地が大きく、買収の経済的意義が発揮されやすい企業において対応方針が導入されやすい傾向があったことは、看過すべきではない。このような会社において買収への対応方針が導入されれば、望ましい買収提案の躊躇や、買収を通じた規律付けの低下、買収提案に対する経営陣の真摯な検討の阻害を生む結果となる可能性も否定できない。

ね?望ましい買収提案ですら平時型買収防衛策があると躊躇してしまう可能性があるんですから、属性不明・正体不明・金の出どころ不明の買収者による望ましくない買収提案なんてよっぽど躊躇するってことですよ!!!これこそが平時型買収防衛策の効果なのです。買収防衛策を導入できる株主構成のみなさん!みなさんは絶対に平時型買収防衛策を導入すべきなのです!

言っておきますが、私の主張はだいぶ誇張していますwww 「いや、この記載内容をもって買収防衛策には効果があると委員会が認めているってのは言いすぎだろ?」 おっしゃるとおり。それはわかっています。私が言いたいのは「平時型買収防衛策は経営者の保身などでは絶対にないし、導入できる会社は導入すべきなのです。誤解してはいけない」ということです。

去年までは株主提案のことなんて、それほど連日報道されていた訳ではないのに、今年はどうですか?セブンがバリューアクトの株主提案に反対すると公表したら、日経から速報がきましたよ。それくらい注目されているんです。ほぼ毎日のように新聞やネットで株主提案やアクティビストに関する記事を目にします。フジテックやらオアシスやら東洋建設やら・・・。今、日本の上場会社を取り巻く状況は劇的なスピードで変化しています。

そして時代が変化するときは必ずと言ってよいほど、それを利用しようとする勢力が現れます。例えば以下。リキッドオーディオ事件です。詳細については語りませんので、ネットでどうぞ。

https://facta.co.jp/article/201904046.html

日本の経営者が敵対的TOBに対してアレルギーがあり、まともな買収、真摯な買収まで成立させないのはいかがなものか!こういった時代を背に、本当に反社会的勢力がみなさんを狙っているかもしれないのです。みなさんの会社をハコとしてマネーロンダリングに利用したり、みなさんの会社を通じて資金調達をしてその金が闇へと消えたりするかもしれないのです。十分あり得る話ですよ。虎視眈々とそういう人たちはこの機会を狙っています。

みなさんの会社はいろんな人に狙われます。そして誤解してほしくないのが、平時型買収防衛策は決して経営者の保身ではないということです。また上記のとおり平時型買収防衛策があると「望ましい買収提案でも躊躇」するリスクを指摘していますが、これ、買収防衛策を導入している方に責任があるのではなく、躊躇する方に責任があるのでは?まともな提案なら躊躇せずにやればいいじゃないの?なんで躊躇するのさ?今の時代誰も「乗っ取りだ!」なんて批判しませんけど?もしかして後ろめたいことがあるんじゃないの?と逆に勘ぐってしまいますよ。子供じゃないんだから「買収防衛策があるから買収できないよ~」じゃなくて気合入れて買収提案せーや!敵対的買収を仕掛けられた方は職を失うかもしれないと考えて、必死に抵抗しますよ(現に失っている例や冷や飯食わされている例もある)。当たり前。それくらいのことをしているんだから、真剣に気合と根性入れて買収提案しなさいよ!ってことですよ。日本の経営者や従業員はただでさえ安い給料でやってるんだから、敵対的買収を仕掛けられてクビにでもされたら「生きていけなくなる!」って考えますよ。

上場会社のみなさんは公正な買収の在り方に関する研究会が何と言おうと、自社のステークホルダーを守るために平時型買収防衛策を導入すべきなのです。指針原案では買収への対応方針は「経営者にとって好ましくない者」から経営陣や従業員を守るためのものではない」と言っていますが、皆さんは何百、何千、何万という従業員の生活を背負っています。自分たちの身は自分たちで守らなければなりません。経営者だけではなくこれからは従業員も考えなくてはいけません。どうやって?それは個別に相談してください。

そもそもこの委員会のメンバー、買収されるリスクない方ばかりですね。。。敵対的買収をくらって、職を失う可能性ゼロの方々では???もしくは買収されて明日クビになっても、当面もしくは一生、お金で苦労することのない人たちですよね???買収されるリスクのない人たちだけで議論したこの結果に何の意味があるのか?弁護士、学者、証券会社、機関投資家、日立・・・そして経済産業省!買収されて職を失うリスクなど皆無の人たちで議論した結果です。「そのような方々に会社の在り方、守り方についてあれやこれやと言われたくない!」って上場会社は考えませんか?だからこそ、事業会社、特に平時型買収防衛策導入企業を委員にすべきだったのではと思うのです。

また言いたいことをズケズケと言ってしまった・・・。すみません。

なお最後に上場会社のみなさまに申し上げますが、だからといって私は「あまえてよい」などとは考えていません。役員や従業員が安い給料でやってきたのかもしれませんが、多くの会社はこれまで株主利益のことなど考えてきませんでした。敵対的TOBが起きても多くの会社はTOB価格に言及していません。高いのか安いのか?「事前に何の相談もなく実施された!」 そりゃそうやろ?それが敵対的TOBや。株主に応募してほしくないのなら「TOB価格は安い!我々が経営したら中長期的にはTOB価格を大幅に超える株価にしてみせる!」と言わなきゃいけない。

この株主利益至上主義は起きるべくして起きています。株主だって安い配当・安い株価で我慢を強いられてきたのです。敵対的TOBへの対応を見て不信感を募らせてきたのです。

ですから今回の東証のPBR1倍割れ改善要請に対しては真摯に対応する必要があります。これを機会に自社の株主還元や財務、成長戦略をぜひよーく考えなおしてください。「面倒くせーなあ!」とイヤイヤ対応するのではなく、前向きに積極的に対応すべきです。これだけ言われているのに変われない会社は会社に問題があります。優しくしてくれていた国内機関投資家にも我慢の限界があります。IRのやり方も見直しましょう。

オアシスやバリューアクト、旧村上ファンドに見つからないように過ごすのではなく、見つかっているんです。今変わらないと大変なことになりますよ。見つかってからやればいいや、ではありません。

日本の上場会社の評価をみんなで上げていきましょう!そうすればきっと日本の景気も上向きますよ。株式市場の主役はみなさんなのです!

あ、念のため言っておきますが。経済産業省のみなさんが作成された資料の数々は大変参考になりますし、あのような資料を作成された事務局のみなさまや委員のみなさまに対しては感謝しております。

 

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