2017年07月19日

No.132 村上ファンドの株主提案は株主提案ではない

■村上ファンドの株主提案は株主提案ではない

 先日の日経にも村上さんの「生涯投資家」の広告が出ていました。

 さて、先日の広告とどこが変わったでしょうか?「この6月の株主総会で黒田電気とのプロキシーファイトに勝った現役バリバリの投資家。」という部分が加わりました。株主総会が終了したから追加したのでしょう。

 私、黒田電気への村上ファンドグループによる株主提案を株主提案とは思っていません。株主提案の要件とは何でしょうか?総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6カ月前から引き続き有する株主の権利です。総議決権の1%以上または300個以上の議決権です。村上ファンドグループは黒田電気の株式をどれだけ持っているのでしょうか?約37%ですね。

 黒田電気は誰の会社でしょうか?もうすでに村上ファンドがオーナーと言ってしまっても過言ではないと思うのですが・・・何が言いたいかというと、約37%も株式を持っていたら、実質的にその会社をほぼ支配していると言ってもよい状態です。つまりオーナーです。オーナーが会社に株主提案などすることはめったにありません。最近だと、クックパッドくらいではないでしょうか?なぜオーナーが株主提案をしないかと言うと、オーナーの言うことは絶対であり、株主提案などする必要がないからです。オーナーからの株主提案は提案ではなく命令です。

今回の黒田電気のケースは、久しぶりに株主提案が可決されたとマスコミが騒いでいましたが、これだけ村上ファンドが株式を持っていれば可決されるのは当たり前です。株主提案って、少数株主権ですし、イメージ的には5~10%程度の株式を保有する株主が提案して、大勢の株主の意見を問うという感じじゃないでしょうか?だから、大多数の株式を持っている村上ファンドの株主提案が可決されたことなど、それほど重要視するような内容ではありません。株主提案が可決されたことよりも、黒田電気の株式を大量に取得したことのほうが重要なのです。これだけ株を持ってりゃ、そりゃあ提案すれば可決されますよ。

 重視すべきは、村上ファンド以外の株主が村上ファンドの株主提案にどれくらい賛同したのか?という点です。

 まず黒田電気の総議決権は376,116個です。村上ファンドグループの2017年3月末の持株数は13,843,400株(3/29提出の変更報告書より)ですので、議決権は138,434個です。第3号議案が村上ファンドグループからの提案です。賛成個数が198,317個、反対個数が139,802個です。単純に考えると、賛成個数から村上ファンドグループの議決権を引いた数が一般株主の賛成個数ですから、59,883個です。これだけ見ると、一般株主は村上ファンドグループの提案に反対した人のほうが多いということになります。では、あらためて黒田電気の株主構成を見ます。

 一般的には法人株主は安定株主ですが、村上ファンドグループも入っています。法人の議決権88,018個から村上ファンドグループのうち法人形態の株主の議決権㈱レノ34,849個と㈱オフィスサポート29,461個を引いた23,708個を黒田電気の安定株主分と考えます。第3号議案への反対個数139,802個から安定株主分23,708個を引いた116,094個が一般株主分と考えても、一般株主は村上ファンドグループの提案に反対した人の方が多いと言えるのではないでしょうか?ただし、気になるのは第3号議案よりも経営陣の賛成率が低いことです・・・

 この点から言えることは、やっぱり株主提案を可決させるのは難しいと言うことです。村上ファンドグループの持分がここまで多くなければ、黒田電気への株主提案は可決できなかったことでしょう。ですから、黒田電気は買収防衛策さえ導入しておけば、おそらく20%以上も買われることはなかったでしょうし、株主提案も可決されることはなかったはずです。

 黒田電気のケースにおいて「アデランスの株主提案が可決されて以来、8年ぶりに株主提案が可決された!」とマスコミは騒いでいます。日経ビジネスで特集まで組まれていました。しかし、黒田電気のケースにおいて重要なことは、株主提案が可決されたことではありません。最も重要なことは、買収防衛策がなかったから、村上ファンドグループに大量に株式を取得されてしまったことなのです。

あゝ出光興産・・・

 出光興産の公募増資に対する創業家の発行差止請求は予想通り、東京地裁が却下しました。創業家は高裁に即時抗告しました。大方の予想通りだと思います。株価はどうでしょうか?

 ああ・・・判決予想は当たったけど、株価予想は外れた・・・そして含み損を抱えた・・・私は出光興産の長期保有株主になることにしました。これが長期保有株主の作り方です・・・これも勉強!と思うことにします。

 出光興産の公募増資に関しては、発表の翌日10数%株価が下がりました。だいたい公募増資の影響を織り込んだだろうし、差止めが却下されれば、昭和シェル石油との合併の見通しが明るくなり、株価も持ち直すだろうと考えていましたが、マーケットは違う考え方でした。マーケットは、発行差止めされる可能性があると読んだ人もいたということですね。差し止められたら大規模公募増資ができなくなるから、株価がもとに戻ると考えた人もいた、だから今回の差止め却下は株価にプラスに働くのではなく、むしろマイナスに働いたということですね。

 本来、自分の読みと異なる株価の動きになったので売却すべきなのでしょうが、マーケッターではないので、塩漬けすることにしました。

 買うなら昭和シェルの株でした・・・

なお、裁判所の決定文はわかりませんが、新聞報道によると「大竹裁判長は決定理由で「創業者らの持ち株比率を相当程度減少させ、支配権をめぐる争いを有利にする目的があった」と指摘。ベトナムでの製油所建設などに充てるとしていた出光側の主張も「的確な証拠がない」などと認めなかった。一方で、昨年末に昭和シェル株を取得した際の借入金の返済については「弁済期を数カ月後に控え、資金調達の必要性が高い」と合理性を認めた。公募増資による新株発行についても「著しく不公正な方法とはいえない」と結論づけた。」だそうです。透け透けだけどダメとは言えない、ということですね。

 

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