2017年07月20日

No.133 東芝株も狙う「物言う株主」 日経ビジネスに登場したアクティビスト

7月17日号の日経ビジネスに「こんな会社が狙われる」という特集がありました。ちょいちょいコラムにしたいと思いますが、本日はアクティビストについてです。明日は同じ特集の中でセイコーエプソンとミネベアミツミの社長の買収防衛策に対するご意見を取り上げる予定です。おもしろいご意見です。皆さんの本音はおそらく同じのはずです。

また2017年7月18日の日経の有料会員限定記事には「物言う株主の苦境」という記事がありました。記事の主な内容は以下のとおりです。

・米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを落とすとの観測が強まるが、さえない景況感に雰囲気は明るくない。相場の動きよりむしろ「物言う株主」の動向が話題を集めている。

・米長期金利も下落(債券価格は上昇)が続き、17日は2.3%ギリギリまで下がる場面もあった。こうした低成長・低金利時代に躍動してきたアクティビスト(物言う株主)が再び市場を騒がしている。

・「何かが間違っている」。著名投資家ネルソン・ペルツ氏が率いるトライアン・ファンド・マネジメントは米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の経営に不満を示し、委任状争奪戦を始める。ペルツ氏が自身を取締役に選任するよう求めるP&Gは、時価総額2200億ドル(25兆円)で、米市場で史上最大の標的だ。

・米著名投資家デービッド・アインホーン氏率いるグリーンライト・キャピタルが出資者に送った書簡によると、同社は4~6月期に東芝株を新たに234円で取得した。目下、米地裁へ東芝メモリ売却差し止めの仮処分を求めているウエスタンデジタルとのいざこざも「解決策はある」。東芝株は400円近くまで上昇すると見込んでいる。

・物言う株主サード・ポイントは6月にスイスの食品大手ネスレの株式に35億ドルと異例の大規模投資を決め、経営改善を求める。

だが、実は金融危機後一貫して勢力を増してきたアクティビスト投資は曲がり角を迎えている。ファクト・セットによると、2016年の米主要1500社に対する提案数は09年以降で初の減少に転じた。効率経営が一般的な米国では、改革を迫る対象企業も限られてきた。この結果、これまで手がつけにくかった超大型株や、国外へと投資対象を広げざるを得なくなっている。

興味深いですね。注目点は太字にした部分です。効率経営が浸透している米国企業では投資対象が少ないのでしょう。ではどこが対象になるのか?日本ですね。米国の著名なアクティビストがソレキアのケースを見ているとは思えませんが、日本企業の安定株主神話は崩れています。

記事によると、グリーンライト・キャピタルは東芝株に投資しているようです。記事には書いていませんが、サード・ポイントはセブン&アイやソニーに投資していました。

7月17日の日経ビジネスに「標的企業、5つの条件 アクティビストが全公開」という記事があります。アクティビストとして紹介されているのは以下の投資家です。

ストラテジックキャピタル 丸木 強氏

村上ファンド創設に加わったが現在は独立。中小型株を中心に投資。ガバナンス改善を提案し企業価値向上を図る

米エリオット ジョルジオ・フルラーニ氏

ポートフォリオ・マネジャー。米ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得後、投資会社を経て2010年から現職

香港オアシス・マネジメント セス・フィッシャー氏

設立者兼最高投資責任者。イスラエル国防軍を経て、投資ファンドでアジアの投資ポートフォリオを運用

米サード・ポイント ダニエル・ローブ氏

CEO。アクティビストの代表的存在として、ソニーやセブン&アイ・ホールディングスなど日本企業に投資したことも

どうでしょうか?丸木さんは私が新入社員のころに関係部署にいらっしゃいましたが、随分と上の方でしたのでお仕事をしたことはありません。こんな顔の人だったかなあという記憶です。他の人はなんだか怖そうですね。特にオアシスのセス・フィッシャーさん。「イスラエル国防軍を経て・・・」どういう経歴なんでしょうか?企業防衛を業とする私ですが、この人に攻め込まれたらと考えると怖いですね。口ゲンカなら勝つ自信はありますが、本当のケンカになったら殴られそうです。しかし国防軍にいたなら、防衛を専業とすればいいのにと考えてしまいます。ここには出ていませんが、かつて日本企業をターゲットにして大暴れしたザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)などという人たちもいます。他にも、海外では有名だけれども日本では知られていないアクティビストなどゴロゴロいると思います。米国で儲からなくなった以上、日本企業をターゲットにするのは間違いないと考えておいたほうがよいです。

村上ファンドグループによる株主提案は、私は株主提案だとは思っていませんが、重要な点は、世の中が「株主提案が可決された!」と思っているということです。米国のアクティビストが「そうか!日本でも株主提案が可決されたのか!だったら攻め込む余地はあるな!」と考える可能性があるということです。村上ファンドグループによる株主提案可決は米国のアクティビストも知っている可能性があります。日本株をターゲットにして研究しているアクティビストは当然知っているでしょう。少なくとも上の写真の人たちは日本企業をかなり研究していると思われます。先ほどの国防軍の方がいらっしゃる香港のオアシスはパナソニックによるパナホームの完全子会社化に関して異議を唱えたファンドです。他にもいろいろやっていそうです。

https://oasiscm.com/ja/views-commentary/

黒田電気のケースを発端にアクティビストが攻め込んでくる可能性があると注意しておくべきだと考えます。今年はアクティビストの活動が活発化すると私は考えます。

 

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