2017年01月25日

No.50 今日の日経「大機小機」~丸投げせよと言ったことはありません~

今日の日経17面「大機小機」に「企業統治に詳しいというにわか専門家が急増する。買収ルールもなく、大金を払って弁護士から防衛策というルールを買う。」「譲渡制限株式によるインセンティブ報酬となると訳がわからなくなり、これに乗じた金融機関が丸投げせよと迫ってくる。相談業の繁栄を支えているのだ。」という意見がありました。

 乱暴ですね。最近、株式報酬制度を新たに設ける会社が増えていると思いますが、信託銀行に丸投げしている会社はないと思います。そんなに難しい制度ではありませんから、「訳がわからん」と考えている会社はいないでしょう。訳がわからん、と考えた会社は導入しません。丸投げする会社など聞いたことがありません。

 また、弁護士に大金を払って防衛策を買った会社も聞きません。少なくも私が相談にのった会社は、まず私と会社で防衛策の基本設計を考えます。私から買収防衛策の仕組みを徹底的に解説し、他社事例を紹介しながら、買収防衛策を理解してもらいます。買収防衛策の限界も理解してもらいます。そのうえで、最後のプレスリリースを仕上げる段階で弁護士に入ってもらいます。弁護士には会社が望む基本設計を伝えて、プレスリリースを作成してもらいます。大金と言えば大金かもしれませんが、弁護士にとっては「そんなに大金はもらってないよ」というレベルの金額です。

 まれに、信託銀行が買収防衛策のアドバイスをする場合、買収防衛策のプレスリリースを数パターン示して「この中から選んでください」ということもあるらしいです。そういうのは丸投げに近いかもしれません。ただ、まともな会社はそんなことしません。ちゃんと検討しています。また、我々は「にわか専門家」ではありません。

 少し気になるのは、確かに「企業統治に詳しい」と言って「コンサルティングをしますよ」と言ってくるアドバイザーはいます。私はそもそも、コーポレートガバナンスやIRに関するコンサルティングには懐疑的です。コーポレートガバナンスやIRに答えはありません。更に踏み込むと、IRって必要ですか?最初に始めたのって誰ですか?GEでしたっけ?今のご時世、開示内容をきちんとホームページで公表すれば事足りるような気がします。いくら資料を美しく作っても、内容が伴ってなければ投資家は株を買ってくれません。「IRをうまくやって株価を上げたい!」 いや、ムリでしょう。大事なのは中身です。

 最近「取締役会評価」というアドバイスもあるようですね。そんなの必要ですかね?そもそも評価するコンサルタントって、取締役の経験あるんですかね?法律やガバナンスに関する規則などの改定により、それをもとに新たなビジネスを展開しようとする人はたくさんいます。それにのせられてやってしまうことは、ある意味、丸投げなのかもしれません。「うちはアドバイザーにお願いしてちゃんとやってるよ」 大切なのはアドバイザーにまかせるということではなく、「アドバイザーとともに議論する」ということだと思います。形式を整えることは重要ですが、形式を整える過程の議論が充実していなければなりません。

「仏作って魂入れず」では意味がないということではないでしょうか。

 

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