2017年07月25日

No.136 アクティビストファンドに2回も狙われることはあるでしょうか?

■アクティビストファンドに2回も狙われることはあるでしょうか?

 あるでしょう。どこの会社とは言わないまでも、あります。1度目は自己株取得を行い買い取りました。2度目のときも自己株取得を行い買い取りました・・・・2回も買い取ったということです。これ、会社の体質が露骨に出ていますね。「うるさいこと言ってくるから、自社株買いで対応しちゃおうよ」です。これ、本当に危険な行為です。

 私はアクティビストファンドが保有する株式を自己株取得で対応することには反対です。もちろん、時と場合によりけりです。しょうがない局面もありますが、基本的には反対です。なぜなら、一度でも買ってしまうと「●●㈱の株式を取得して圧力をかければ、最後は買い取ってくれるぞ!プレッシャーに弱い会社だぞ!」と見なされてしまうからです。

 あのファンドが持っているうちの株式を自社株買いしちゃおうと思うんだけど、鈴木君はどう思う? 私の回答は「絶対に反対です。体を張って止めます」です。いろんなアクティビストファンドに狙われるリスクが高まるからです。確かに、大したパーセンテージを持っている訳ではない状況下では、「もういっそのこと買い取っちゃえば?」という発想になりがちです。大したパーセンテージではないから、大した影響はないんだけど、気になるんですよね。のどに刺さった魚の小骨のように・・・わかりますよ。よくわかります。

でも、ダメです。もちろん杓子定規に議論する訳ではありません。買ってよい場面だってありますが、慎重な議論が必要です。

 1回アクティビストファンドに買われた会社は、なんとなく「1回あったから2回目はないだろ?」と感覚的に考えてしまいがちです。なぜなら「あんなにつらいことを二度も味わいたくない」から、そう考えがちなのです。でも現実を見てください。なぜアクティビストファンドは出て行ったのでしょうか?株価が上がったからでしょうか?なぜ上がったのでしょうか?たまたま?増配したから?では現在の株価と財務はどうなっていますか?

 1回目にアクティビストファンドがやってきたときと変わらなくないですか?むしろ、キャッシュがたまって前より魅力的になっちゃってませんか?ありがちです。もしかしたら、別のアクティビストファンドではなく、同じアクティビストファンドが舞い戻ってくることも考えられますよ。売ったと思ったファンドが、また買い増してきた事例なんて星の数ほどあります。新たな銘柄を選別するよりも、同じ会社の方が手っ取り早いですよね。一度分析しているのですし、もしそのファンドが以前買った値段よりも株価が安くなっていたら?当然買うでしょう。乱暴な言い方をすれば、バリュー系の投資家なんて個人投資家みたいなもんですから。「下がったから買う」

 何かが変化していないにも関わらず、何となく日本株の上昇につられて自社の株価も上昇し、たまたまアクティビストファンドが退出していったのであれば、確実にもう一度やってくると思っておいたほうがよいです。

■いなくなったと思ったら・・・

 あるアクティビストに買われたと思ったら、株価が上がって出て行った、ということはあります。同じアクティビストが同じ会社を狙うこともあります。まったく別のアクティビストがやってくることもあるでしょう。 エフィッシモ投資先企業の一覧を作成しているときに、気になる会社を見つけました。以下は鳥居薬品のEDINET画面のコピーです。

 エフィッシモが2017年2月28日に変更報告書を提出しました。変更報告書の提出理由は「担保契約等重要な契約に関する変更」なのですが、変更報告書の詳細を見ると、エフィッシモは鳥居薬品の保有株式を一部売却していました。保有割合が減少しています。

 おそらく社内では「おお!やっと売り始めたか!」と喜んだかもしれませんね。エフィッシモが鳥居薬品の大量保有報告書を提出したのは2008年8月1日ですから随分と長い間持たれていました。しかし喜びもつかの間です。以下を見てください。

 2017年2月28日にエフィッシモが変更報告書を提出し、エフィッシモの持分減少が判明してからおよそ4か月後。2017年7月5日に大量保有報告書が提出されました。おそらく社内では「ブランデスって誰や?!」という声が上がったのではないでしょうか?

ブランデスとは誰でしょうか?ずいぶん前は「単なる中長期的な投資をする機関投資家」と言われていましたが、小野薬品に対して株主提案をしたことから「アクティビスト!」と言われるようになってしまった機関投資家です。

四季報で鳥居薬品を見ると「特徴:JT傘下。自社製品の腎・透析、アレルゲン等の開発強化。抗HIV薬など導入品の成長に注力」とあります。JT傘下?大株主の状況を見ると、JT(日本たばこ産業)が鳥居薬品株式の53.46%を保有しています。つまり鳥居薬品はJTの子会社です。上場子会社ということです。エフィッシモの投資先企業の特徴として、親会社や資本上位会社が存在する会社をターゲットにすることが挙げられます。JTという親会社がいる鳥居薬品はエフィッシモの格好のターゲットだったということです。

ブランデスは鳥居薬品に何を期待しているのでしょうか?JTによる鳥居薬品の完全子会社化を期待しているのでしょう。JTが過半数を持っていますから放っておけばよいと考えることもできます。でも、JTの株主にアクティビストが登場して「鳥居薬品をどうするんだ!」と詰め寄ったら?皆さんは「いやいやいや。JTでしょ?時価総額いくらあると思ってるの?7兆5,000億円だよ?買えないでしょ!」とお考えになりませんか?でも、2017年7月23日の日経2面社説には「代表的なもの言う株主の一人であるネルソン・ペルツ氏が、日用品大手P&Gに対して、自身を取締役に選任するよう求めた」とあります。P&Gの時価総額はJT以上でしょう。時価総額が大きいからと言って、アクティビストのターゲットにならないとは言い切れません。

ちなみに、JTはアクティビストのターゲットになったことがあります。ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドです。TCIと呼ばれています。もちろんTCIがJTに投資した比率は発行済株式総数の1%に満たない水準だったと記憶していますが、TCIはJTに対して巨額の配当や自社株買いを要求しました。非常識なISSはTCIの提案を支持しました。

時価総額が大きいから狙われない?いや、狙われます。時価総額なんてもう関係ありません。むしろ時価総額の大きい会社は安定株主比率が低く、外国人株主比率が高いのです。それほど多くの株式を買わずとも、株主提案をすれば賛成してくれる株主が多く存在すると見ることができます。やっかいなことに、ISSの言うことを聞いてしまう株主が多いのです。

 

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