2017年07月27日

No.138 どこ行った?空売りファンド!など2コラム

■どこ行った?空売りファンド!

 去年、話題になった空売りファンドですが、最近ほとんど話題に上がりませんねえ。グラウカスによる伊藤忠商事の空売り、シトロン・リサーチによるサイバーダインの空売りなどがありました。2016年10月2日の日経「時事解説」では

「特定の銘柄に空売りをかけたうえで、その企業の業績などに疑義を投げかけるリポートを公表して株価急落を誘い、利益を上げるファンドです。行儀の悪さは言うまでもありませんが、「けしからん」とばかり言ってもいられないようです。」

「日本の株式市場の関係者は、空売りファンドの行状にまゆをひそめる向きが圧倒的に多かったようです。そもそも日本では、空売りそのものが広く支持されているわけではありません。さらに、空売りしたうえに株価急落を誘うリポートまで発表するやり方は、倫理的には問題含みです。そのうえ、これらのファンドのウェブサイトやリポートの文面、挿絵などには不快感を抱かせるものが多々ありました(人の趣味はさまざまなのでしょうが……)。」

などの記載が見られました。私は、空売りファンドについてはけしからんとも思いませんし、問題なんかある訳ないと思っています。アクティビスト・ファンドの逆をやっているだけですから。ましてや空売りに対する批判なんてもってのほかです。空売りファンドを悪とするなら、証券会社のアナリストによるレーティングなどもやめるべきでしょう。あれで株価が大きく下落することだってありますから。レーティング情報のほうが私からするとやめてほしいです。

時事解説を書いた方、空売りを誤解していませんかね。「この会社の株価が下がりそうだから売り!」 空売りした人は株価が下落することを期待しています。なんだか会社からすると気分が悪いですね。しかしよく考えていただきたいのは、空売りする人がいるから、株価が調整されるということです。だからある意味、大暴落を避けることができているのかもしれません。これは私のドタ勘で根拠のある話ではないのですが、土地の価格って株価よりも大暴落するイメージがないですかね?あれって、土地は空売りできないからじゃないかと思うのです。株価も大暴落することはありますが、空売りによってその機会が調整されているような気がするのです。

ちょっと話がそれましたが、空売りファンドが最近いなくなったのはなぜなんでしょうか?思うに、結局、空売りファンドってターゲット企業の株を持っている訳ではないんですよねえ。空売りですから。だから声高に「この会社の株価は適正ではなーい!」と叫んでも、ターゲット会社は無視します。もしくは「間違ってます」というプレスを出します。「面談しろ!」と言っても、「は?株主でもないのになんで?」と言われます。以上!終了!です。だってそれ以上対応しようがないですよね?株主じゃないんですもの。米国では空売りファンドのことを「ショートセラー・アクティビスト」と呼ぶことがあるそうです。しかし、結局、アクティビストには勝てません。彼らは株主という立場で会社に圧力をかけます。株主である以上、ターゲット会社も無視し続けることはできません。

■中国投資家のシカゴ証取買収 米議員「当局は阻止を」~日本でも同じようなことが~

 ちょっと前ですが、2017年7月12日の日経7面にあった記事です。中国の投資グループによるシカゴ証券取引所の買収に対して、複数の米議員が米証券取引委員会に買収阻止を求める書簡を出したそうです。理由は「親会社を通して中国政府の影響がおよぶ可能性があるため」だそうです。

10年ほど前にユノカルという米国の石油大手を中国海洋石油が買収しようとしましたが、米国議会は国家安全保障上の脅威と見なしました。最終的に買収提案を撤回したと記憶しています。

 日本でも同じような事例がありました。電源開発です。ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が電源開発の発行済株式総数の9.9%を保有し、電源開発に対して増配要求などをしました。かなり過激でしたし、やり方も巧妙でした。TCIは電源開発株式の保有割合を20%まで引き上げることを目的として、外為法による事前届け出を行いました。しかし、関税・外国為替等審議会外国為替等分科会外資特別部会はこの株式取得は日本の「公の秩序の維持が妨げられるおそれがあるもの」とする意見を出し、財務大臣・経済産業大臣はTCIに対して株式取得の中止勧告を行いました。TCIは中止勧告への応諾を拒否したため、財務大臣と経済産業大臣は中止命令を出しました。なお、最終的には、TCIは電源開発が実施しようとした子会社の本体への取り組みに関する組織再編に対して、保有株式の買取請求を実施し、電源開発は631億円で買い取りました。

 これ、電源開発が自身で防衛できたわけではありませんね。国が守ったということです。現在、東芝株式をエフィッシモが9.84%を取得していますが、東芝も電源開発同様、10%以上の株式を取得する場合は外為法に基づく事前届け出が必要になる会社だと思います。おそらくエフィッシモは10%以上買うようなことはしないでしょう。外為法で守られていますから。だからある意味、東芝は導入していた買収防衛策を廃止しても問題はなかったと言えるでしょう。電源開発も買収防衛策を導入していませんでした。

 でも、ほとんどの日本企業は外為法で守られていません。最近は佐々木ベジやエフィッシモの事例を多く取り扱ってきましたが、TCIのような過激なアクティビスト・ファンドは先日お伝えしたとおり世界中にたくさんいます。

 日本企業の株価はPBR1倍割れをおこしているケースが多くみられます。最近、ある会社のCFOから相談を受けましたが「なんとかPBR1倍は超えたい」という内容でした。お気持ちは十分わかりますし、しょうがないのですが、やはり目標が低いと言わざるを得ないです。PBR1倍超えは普通のことですから。

 日本企業の株価は割安です。その状態を狙ってくるアクティビスト・ファンドはエフィッシモや村上ファンドだけではありません。お盆前に「貴社の経営および財務に関するご提案」などといったレターが送付されて来たら、一気に萎えます。

「ああ、今年のお盆休みはなくなった・・・●●ファンドめ~!許さぬ!」 

私は年末年始をなくしたことがあります・・・

 

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