2017年07月28日

No.139 株主構成をコントロールすることは可能か?

 可能です。「ウソつけ!」と言われるかもしれませんが、可能です。ただし、株主構成をコントロールできてしまう状況は、ある意味、株主から評価されていない状況とも言えます。つまり、コントロールできる株主とはどういう株主か、ということです。

 証券会社やIRアドバイザーが「優良な海外機関投資家に株式を持ってもらうために、海外IRをやりましょう!」と言います。はい、これはでたらめです。貴社のセールストークで海外の機関投資家が簡単に貴社株式を買うことなどあり得ません。機関投資家は株式投資のプロです。申し訳ありませんが、株の素人である事業会社のIR部隊のセールストークで株を買うことなどあり得ないと思います(誤解していただきたくないのですが、株の素人であって、会社内容の説明についてはプロです)。ということは、外国人株主はコントロールできない株主と言えます。

 また、証券会社が「持ち合い解消の進展により、金融機関や事業会社が売ってきますよ。持ち合い解消の受け皿として売出しを活用し個人投資家に持ってもらいましょう。当社の個人顧客は中長期で保有する優良な個人投資家ですよ!」 はい、これは大ウソです。こんなことをまだセールストークで言っている証券マンがいたら、鼻で笑ってやってください。何度も言いますが、私も持ち合い解消の受け皿として個人投資家に持ってもらうべきと申し上げています。しかし「中長期で保有する優良な個人投資家」などと説明したことは一度もありません。なぜなら、そんな個人投資家はいないからです。なぜ売出しにおいて、個人投資家が買うのでしょうか?簡単です。ディスカウント価格で買えるからです。だから、上がれば売ります。想像ですが、ディスカウントで買っていますから瞬間で売るんじゃないですかね。また、「優良な個人投資家に持ってもらうために、当社の支店で個人投資家向けIRをやりましょう」 これもウソです。個人投資家IRなんかで株を買う個人投資家はほとんどいません。いたとしても微々たるもんですし、個人投資家IRにかかったコストを考えれば割に合いません。ですから、個人投資家もコントロールできない株主と言えます。

 では、コントロール可能な株主とは誰なのでしょうか?もうお分かりですね?そうです、安定株主のことです。安定株主であれば、会社が増やしたいと考えれば、もちろん相手がいればの話ですが、増やすことができます。例えば、アクティビストファンドに株式を保有されてしまったときに、緊急時の対応として法人株主に株式を買い増してもらうことによって安定株主比率が増えます。そして緊急時でなくなったら、増やした分を売ってもらうことで、安定株主比率を減らすことができます。

 ただし、安定株主比率を「コントロールできる」という意味が重要になってきます。どの企業でも安定株主比率を増やすことはできるのですが、意味のある水準まで増やすことができるのかどうかがポイントです。それができない状態ということは、株主構成をコントロールできないということです。つまり、時価総額が大きい企業は、安定株主比率を増やそうとしても現実的にはできません。増やしても微々たるものであり、意味がありません。そういう意味において、時価総額が大きい企業は株主構成をコントロールできません。では、株主構成をコトロールできる企業とは?時価総額が大きくない企業ですね。株主構成をコントロールできる状態ということは、ある意味、投資家から評価されておらず、時価総額が小さい状態であるということです。敵対的TOBから防衛することは可能かもしれませんが、マーケットで適切に評価されないということです。あちらを立てればこちらが立たず、です。

 あるべき株主構成とは?この質問に対する明確な回答は「そんなものはない。あるとしたら低下していく安定株主比率をどこで食い止めるかである」だと考えます。安定株主比率をどのポイントに定めるか、ということです。ある程度の安定株主比率を確保しつつ、時価総額の拡大を目指す。では、落ち着きどころの良い安定株主比率とは?うーん、これは難しいですね。以前であれば、30%もあれば十分でしょう、とお答えしましたが、ソレキアのケースを見てしまうと30%では不十分ではないかと考えてしまいます。しかし、一般的にはこのご時世で安定株主比率30%を確保するのはかなり難しいです。まともじゃない敵対的TOBには徹底的に防衛する必要があると考えますが、まともな敵対的TOBが実施された場合は、完全に防衛することは困難であると腹を括る必要があります。

30%の安定株主比率を確保することが難しいとして、例えば、ISSが反対しそうな議案であっても、特別決議や普通決議をとおすには安定株主比率がどの程度あれば安心できるか?その場合、安定株主以外の個人・外人の比率がどういう状況であれば、ISSが反対しても議案を通せそうか?

うーん、コラムで書くにはちょっと難しいので、いずれ資料としてまとめます。

なお、時価総額が大きいからと言って、安定株主のことをまったく考えなくてよいかというとそうでもありません。これからの株主総会は1%をめぐる攻防になると思われます。

 

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週刊ダイヤモンド「最強投資家が狙う割安株」P36に以下のような記述がありました。

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