2017年09月14日

No.167 米投資ファンド エリオット 日立国際株式を取得

 日経に記事が掲載されたのは9月12日(火)だったと思いますが、エリオットが大量保有報告書を提出したのは9月11日(月)13:15です。本日の日経18面にも記事があります。日立国際電気の株価は9月11日13:15以降、上がっていますし出来ていますね。エリオットって他にどこの会社の株式を保有しているのでしょうか?EDINETで調べてみると、日立国際電気以外はケネディクス(銘柄コード4321 独立系不動産ファンド運営)の株式を4.96%保有しています。日本株はほとんど持っていないようですが、エリオットは結構アクティブです。コラムNo.88で触れましたが、オランダの塗料大手アクゾ・ノーベルの会長の去就を問う臨時総会の開催を要求したりしています。この人です。コラムNo.133でも少し触れています。

米エリオット ジョルジオ・フルラーニ氏

ポートフォリオ・マネジャー。米ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得後、投資会社を経て2010年から現職

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-06/OELM0W6S972G01

 ところで、日立国際電気ってどういう状況なんでしょうか?9月11日22:16の日経では「日立国際株を巡っては、KKRが1株2503円でTOBを実施し日立製作所の保有する50.4%を含む全株式を取得予定だった。だが、4月のTOB発表時から株価が上昇。買い付け価格を上回ったため、実施を延期していた。延期時期は明らかにしていない。」とあります。2017年4月26日にHKEホールディングス合同会社が日立国際電気に対して公開買付けを実施することを決定した旨公表しています。HKEホールディングス合同会社はKKRによって日立国際電気へのTOB、TOB後の事業活動の支配・管理を目的に設立された会社のようです。

新聞記事では「KKRが1株2503円でTOBを実施し日立製作所の保有する50.4%を含む全株式を取得予定」とあります。エリオットは何を狙っているのでしょうか?本日9月14日の日経18面の「タカ派株主、日本に的」では、エリオットの狙いなどを推測しています。エリオットはTOB価格の引上げを狙っているのではないか?そうかもしれません。

エリオットが提出した大量保有報告書によると、提出者はエリオット・インターナショナル・エルピーら3名、保有割合は5.01%(5,275,700株)、取得資金は13,560,910千円です。ということは、1株当たり2,570円で取得しているということですね。保有目的は「投資。なお、状況等に応じ、重要提案行為等に関する協議を行うこと。」となっており、重要提案行為は「状況等に応じ、重要提案行為等に関する協議を行う予定。」となっています。最近60日間の売買状況を見ると、9月5日に少し取得していますが、記載されているのはその日だけです。ですから大半は60日以上前に取得したということでしょう。なるほど。4月に日立国際電気へのTOBが公表された後、市場で大量保有報告書を提出しなくてよい範囲内で取得し、KKRや日立国際電気の出方を待っていたのでしょうかね。6月26日と8月9日にTOB実施に向けた進捗状況のお知らせというプレスリリースが公表されています。8月9日の内容を見ると、株価の上昇などを理由に8月上旬のTOB開始を見送ったそうです。http://www.hitachi-kokusai.co.jp/news/2017/pdf/news170809_01.pdf

日経18面の記事では「水面下では日立国際や日立と接触しているとみられ、要求が通らなければ公に行動を起こす可能性が高い」と書いています。TOB価格の引上げを声高に要求するのでしょうか?

ロイターの報道によると「エリオットは、日立国際の最近の好業績や、第三者委員会の設立により株主利益を守ろうとする取締役会の取り組みを評価している」とのことです。日立国際電気は日立製作所と公開買付者から独立した社外有識者や社外取締役で構成される第三者委員会を設置しています。8月9日の進捗状況を説明するプレスでは、市場株価がTOB価格を超えた価格帯で推移し、かつ上昇傾向を示し続け、業績予想の上方修正後はその傾向が顕著であるところ、投機的な一時的要因とみなすことはできず無視できないことから、TOB価格等の正当性・妥当性は担保されているとした意見を第三者委員会は維持できない、としています。

KKRは8月上旬に実施予定であったTOBを見送ると決定しました。その後、エリオットが登場しました。さて、KKRは価格を引き上げるのでしょうか?わかりません。じゃあ、エリオットはどうするのでしょうか? KKRが価格を引き上げるつもりはなく、TOB自体を止めてしまったら?エリオット、損しちゃいますね。エリオット自身がTOBを仕掛けてくる可能性はあるでしょうか?なくはないですよね。KKR以上の価格を提示してくる可能性はゼロではありません。

新聞記事ではKKRがTOBを実施して日立製作所保有株式を含むすべての株式を取得予定とありますが、正確には違うようです。日立国際電気の公表資料からスキームを見てみますと、日立製作所はTOBに応募しないようです。TOB後の一連の手続きを経て、株主をHKEと日立製作所のみとし、日立製作所の持分を自己株取得するそうです。

なんで自己株取得するの?TOBに応募するほうが簡単ではないの?なんだかややこしいなあ・・・。最近(でもないかもしれませんが)のスキームに詳しくないので正確なことは言えませんが、税務メリットを取るためではないでしょうか?単純に日立製作所がTOBに応募してしまうと売却益に課税されるのでしょうが、自己株取得への応募であればみなし配当が発生し、益金不算入のメリットを取れるということではないかと思われます(税務は専門外なのでトンチンカンな意見かもしれません)。

エリオットがKKRよりも高い価格でカウンターTOBを実施したとしても、そんなに単純にはいかないと思います。日立製作所はKKRより高い値段であってもTOBへの応募であれば、税務メリットは取れません。だから、計算していないので正確には言えませんが、かなり高い値段を提示しないとダメなのではないかと思われます。今回の件はTOB価格も重要ではありますが、税務メリットも考慮したスキームということがポイントではないかなと思います。

 

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