2017年10月31日

No.199 機関投資家の議決権行使状況~買収防衛策議案で反対率が激増し、他の議案でも増加傾向が明らか~

 リンクは大和総研のレポートです。コラムのネタに困っておりますというSOSに対して、ネタを提供してくださりありがとうございます。大和総研さんのレポートは私も参考にしていますが、これは読んでおりませんでした。

http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/20171017_012372.pdf

 冒頭の要約で「今後さらに反対票が増加することがあれば、株主総会議案の否決という事態が頻出する恐れもあり、企業側には新たな対応策が求められるかもしれない。」とあります。私も同感です。今年の株主総会で退任監査役への退職慰労金議案が否決されたケースがありましたが、来年は別の議案でも否決されるケースが出てくるであろうと考えます。P2に「図表1:国内機関投資家による株主総会議案への反対率の推移」とありますが、買収防衛策への反対が急増していますね。これ、けっこう厳しいですね。今まで買収防衛策が否決されなかったのは、安定株主がある程度存在することに加えて、外国人機関投資家は反対するものの国内機関投資家がまだ賛成票を投じてくれていたから、という影響も大きかったのではないかと考えられます。P3の「図表2:機関投資家の議決権行使結果」を見ても明らかです。買収防衛策に対するスタンスは厳しくなっています。

 これは、これまでは買収防衛策の仕組みをいじれば賛成してくれた投資家も、今後はどんなに買収防衛策の仕組みを変えても賛成してくれなくなる、ということではないでしょうか?そうなると大変です。次に何が起きるかというと、買収防衛策を導入している日本企業の中で「もう賛成してくれないのならやめてしまおう」とあきらめムードが蔓延し、廃止に走る企業が増えるということですね。そうなると次に何が起きるかというと、佐々木ベジのような方々が勢いづくということです。

 買収防衛策を廃止したからと言って、事業会社によるまっとうな敵対的買収が起きる訳ではないです。「まだまだ敵対的買収に対する世の中の目は厳しい」「佐々木ベジと同じことをやっているとは思われたくない」と上場会社の経営者は思っているはずですから。村上ファンドや佐々木ベジさんのような、事業会社にしてみれば、いまいちその目的がよくわからない敵対的買収が横行するということです。

 買収防衛策を廃止することによって喜ぶのはアクティビスト・ファンドやよくわからない買収者の方々です。別にその方々を否定するつもりはないのですが、その方々のために買収防衛策を廃止してしまうのはいかがなものかと思います。国内外の機関投資家は、日本企業が導入している事前警告型ルールを買収防衛策であると認識しているようですが、実際には異なります。まともな買収提案を蹴っ飛ばせるような仕組みではありません。そこを理解していないから、機関投資家は事前警告型ルールの導入・更新に反対するのです。

 やはり、そろそろ買収防衛策導入企業は情報発信の方法を見直すべき時期に来ていると言えます。ありきたりの情報発信では投資家は耳を傾けてくれないでしょうから、一ひねりが必要です。

28日(土)にBSで「ドキュメント闘う経営者 売り上げ10兆円への挑戦 ~日本電産 永守重信~」という番組を見ました。以前、楽天が「三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストレポートについて」という題のプレスリリースを出しましたが、その中で楽天は「三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荒木正人シニアアナリストが2013年6月21日に発行した当社に関するアナリストレポートについて、当社は同氏と面会し以下3項目について疑問点を提示し、改善を要望しました。」と指摘しました。アナリストを批判するような適時開示をするのはけっこう珍しく当時話題になりました。一方、日本電産の永守さんは決算説明会で「アナリストのレベルを上げるのも経営者の役目」と述べ、アナリストとの関係については「いつも仲良くしている。みんな私の弟子やから」と語ったそうです。https://www.nikkei.com/article/DGXNASFL230MB_T20C13A7000000/

買収防衛策のことを実は何も知らない機関投資家のレベルを上げてあげるのも経営者の役目ではないかと考えます。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ