2017年05月31日

No.97 個人株主のレベル など2コラム

■ソレキアとか黒田電気とか・・・今年の株主総会(本日の日経17面)

 最近はだいたい毎年、話題になる株主総会があります。5月30日(火)の日経17面に「ソレキア経営陣は変えず」「レノの株主提案に反対 黒田電気」などの記事がありました。ソレキアについては先日のコラムで動議に関するリスクを指摘しましたが、30日(火)の記事を見ると「ソレキア側の理解を得られない場合、6月29日の株主総会で「動議も検討する」」「取締役選任議案の修正動議を出すことも想定しているとみられる。」とあります。

黒田電気については、投資ファンドのレノから提案されている社外取締役選任について反対しています。レノ??? 村上ファンドグループと言われていますね。2017年3月29日にレノが提出した大量保有報告書の変更報告書を見ると、現時点で黒田電気株式の35.09%を保有しているようです(レノ8.83% 村上絢9.51% 中島章智9.03% 鈴木俊英0.25% ㈱オフィスサポート7.47%)。黒田電気の外国人株主比率は31%もあります。厳しいですかねえ。ただ、特定の株主からの社外取締役候補の提案なので、ISSがどう判断するかにもよりけりかもしれません。

 ソレキアや黒田電気以外にも、注目すべき株主総会はあります。例えば出光興産。昭和シェル石油との経営統合を検討しているものの、出光創業家が反対しています。昨年の役員選任議案の賛成率は50%台でしたから、今年も低くなる可能性があります。

川崎汽船。村上ファンド出身者が作ったエフィッシモが発行済みの約38%を保有しています。昨年の社長選任議案の賛成率は50%台でしたし、昨年よりもエフィッシモの持分は増えていますから、場合によっては今年の社長選任議案は否決されるリスクがあります。

皆さんもう忘れているかもしれませんが、大戸屋。昨年「お家騒動」と派手に報道された会社です。創業者の妻・ご子息ともめたケースです。大戸屋は亡くなった創業者に対して功労金2億円を支払うことで決着させようとしているみたいですが、一部報道によると「当初聞いていた額(8億円超)とは大きな乖離があり残念だ」と創業家はコメントしているようです。また、相続税を支払うには2億円では足りず株式を売却せざるを得ないと言っているようですが「交渉はこれからだが、株式をほしいと言ってくれる相手に一部もしくは全部を売却することを考えている。同業他社かファンドも選択肢の1つ」とも言っています。だいぶゆさぶりをかけてきていますね。

 10年前も「今年の株主総会では会社側議案が否決されるケースが出てくるのではないか?」と報道されていました。当時はアデランスの役員選任議案などが否決されたと思います。

 今年はいくつかの会社で株主提案が可決されたり、役員選任議案が否決されたりするケースが出てくるのではないでしょうか。議決権行使の個別開示も始まりますので、今年の株主総会も要チェックです。

■個人株主のレベル

 2011年6月、東京電力の株主総会に出席しました。6時間におよぶ株主総会でした。非常に長い株主総会でしたが、日本で一番長かった訳ではありません。一番時間のかかった株主総会は?1984年に行われたソニーの株主総会と言われています。12時間30分だそうです。

 当時の東京電力の株主総会は大荒れでした。当然、震災後の株主総会ですし、東京電力は毎年、原発反対派からの株主提案が実施されていましたから、なおさらのことでしょう。実際にかなり下品な野次が飛んでいました。奇声が聞こえたり、檀上に突っ込もうとして警備員に取り押さえられたり・・・座席が足りず、立ち見も出ました。

 手続き的動議もたくさん出されました。「議長交代!」とか。内容をよく覚えてはいませんが、議案の修正動議もありました。その際、議長が審議をするのですが、株主総会に出席している個人株主は一所懸命に修正動議に「賛成!」と手を挙げています。もちろん、議長は数を勘定せず「反対多数により否決されました」と言います。そうすると私の近くに座っていた個人株主が「いっぱい賛成しているじゃないの!こんなにたくさん賛成の手をあげているのに、なぜ否決なの?」とおっしゃっています。

 そしてその個人株主は「そもそもなぜ賛成している人の数を勘定しないのよ!」と声を荒げます。会場からも「なんで数をかぞえないんだよ!」と怒号が飛びます。すると議長が「事前に大株主2名から委任状をいただいております」と説明したところ、会場からは「え?」と。数を考えると、上位のある大株主2名から委任状をもらっていたことがわかります。

 私の近くにいた個人株主も「え?どういうこと?じゃあ、いくらここで手をあげてもムダということ?」と。また、議案の賛否に移り「本議案に賛成の方、挙手をお願いします」と説明し、会場からは「反対!」との声が・・・でも当然「賛成多数により可決されました」と議長は説明します。個人株主は「なんで???」と。ついには「もしかして、もう賛成は決まっているということ?じゃあ、ここでいくら反対と言ってもムダじゃない?」とようやく理解しました。そして帰っていきました。

 これが日本の個人株主のレベルです。持ち合い解消が進む以上、代わりとなる株主を探す必要があります。もちろん、持ってくれる安定株主が出てくればよいのですが、なかなか難しいのが昨今でしょう。とすると、ISSの意見などは聞かず(というかISSって何?というレベル)、白紙で投票してくれるケースが多い個人株主を増やすのは一つの策であろうと思われます。株主総会に出席するような個人株主ではなく、サイレント株主に持ってもらうのがベストです。

 しかし、あまりに個人株主が増えてしまうと弊害もあります。個人株主は株価が上がると売ります。現に個人株主比率の高いソレキアに対する敵対的TOBは成功しました。

 バランスのよい株主構成を目指したいものです。バランス?どういう状態がバランスのとれた株主構成なのか?非常に難しい問題です。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

2021年04月28日 有料記事

No.1063 役員選任に厳しい目

日経2021年4月16日17面に以下の記事がありました。3月総会で低賛成率の議案が相次いだという内容です。賛成率70%台が低賛成率とは思えませんがね・・・。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ