2017年11月20日

No.212 こんなシナリオはどうでしょう

株式会社A:やあ、Mさん、お久しぶり。

Ⅹファンド:どうもA社長!お元気そうですね。

株式会社A:最近、気になる会社があってねえ・・・

Ⅹファンド:ほう。おもしろそうなお話ですねえ。

株式会社A:いやいや。ここから先は私の独り言ですから

Ⅹファンド:・・・・。

株式会社A:同業のB社って、いい会社なんだよねえ。ああいう会社をAグループに欲しいもんですよ。別に具体的な買収提案なんかを考えている訳ではないよ。インサイダー情報なんかではないからね(笑)。あの会社がうちの傘下になるとは思えないし。かと言って、敵対的TOBなんて仕掛けたら、世間からなんて言われるかわかったもんじゃないしねえ。うまい方法がないもんかねえ。B社がどこかのファンドに株式を買い占められて株主提案なんかされたら・・・困るだろうねえ。そういうときはうちがホワイトナイトとして出ていけるだろうねえ。ま、おとぎ話に過ぎないけどね(笑)

Ⅹファンド:・・・・。

株式会社A:・・・・。(目と目で通じ合う)

 Ⅹファンドはその後、株式会社Bの株式を市場で30%取得。毎月のように社長との面談を求め、経営改革を要求。「社長!いったいB社をどうするつもりなんですか!ROEが5%なんてあり得ませんよ!M&Aについてはどうお考えなんですか!」と責め立てる。そして、社外取締役を派遣しようとしてⅩファンドは株主提案を実施。賛成多数によりⅩファンドの株主提案が可決。その後、株式会社Bは株式会社Aに接触し、ホワイトナイトになることを要請し、株式会社Aは快諾。株式会社Aは市場株価に30%のプレミアムを付したTOBを実施。Ⅹファンドは応募し、株式会社Bは株式会社Aの子会社となった・・・

こんなシナリオはどうでしょうか?あり得ない話ではないと思いますよ。あり得ない話どころか、かつて起きたファンドによる買い占めに対するホワイトナイトによる対抗策なんて、本当はどうだったのか当事者にしかわかりませんからね。

実はホワイトナイトかと思っていたらブラックナイトでした、なんてシャレになりません。最近、買収防衛策は必要ですよ、と口うるさく申し上げていますが、やっぱり必要なんですよ。買収を防衛するための施策ではなく、きちんと買収者や買収提案の内容を精査するための情報と時間を確保するための施策です。当然ですが、その買収防衛策に欠陥があってはなりません。きちんと有事に機能する買収防衛策である必要があります。

上記ストーリーって、これからの世の中で起きてくると思うのです。というか、もしかしたらもう起きているのかもしれません。ファンドに株式を取得されたとして、真の狙いは何なのか?当然、高値売り抜けに決まっていますが、そのための手段をどう考えているのかを探るための施策の一つが買収防衛策なのです。日本では村上ファンドの活動が活発化し、世界ではクアルコムがブロードコムによる買収提案を拒否しました。敵対的買収に発展する可能性が出てきました。日本では起きないよ、という理屈など通用しません。残念ながら日本企業は敵対的買収に対する準備はできていません。マインドもそうですが、会社を身売りするという判断をするのは現時点では困難でしょう。ただし、ファンドやグローバル企業は待ってくれません。むしろ、準備ができていない方が彼らにとっては好都合ですから。村上ファンドによる株主提案の成功は、世界中のアクティビスト・ファンドが日本企業をこれからターゲットにする、という話にはとどまりません。グローバルな事業会社が日本企業をターゲットにするということにもつながってくると思います。

 

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