2018年05月28日

No.345 物言う株主 進化(2018/05/27日経1面)

ネタに困らない季節になってきました。5月26日(土)の日経17面「大機小機 独自のガバナンス確立を」には「政策保有株は資本効率だけを考慮して、マイナス面ばかりが指摘される。だが、長期取引を前提としている日本の企業慣行ではそのコミットメントとして機能している。資本コストだけでは、説明しきれない。また、資本の論理だけで企業価値を毀損させようとするアクティビストやグリーンメーラーから企業を防衛する意味合いも持つ。企業経営を安定化させる機能も含めて保有の可否を判断すべきであり、まず縮減ありきの指針には違和感を覚える。」とあります。いいですね~。日経さん、頼りになります。これ、政策保有株式の保有目的に使える表現ですね。

 さて、5月27日の記事ですが、まあ目新しいことは書いていませんが、少し気になったのは「主要アクティビスト16社の日本株保有残高を調べたところ、今年3月末の総額は1兆5,932億円。前年比2割増え、過去最高を更新したことがわかった。」とあります。しかしその次に「前回の波は、米スティール・パートナーズが猛威を振るった2007年。・・・・スティールの保有株は4,000億円弱に達した。」とあります。アクティビスト1社で4,000億円も投資していたのですね。2007年の前回の波に比べて、今回の波はまだまだ小さいと言えます。株主提案されたって、可決される会社はまだ出てこないでしょうから。

 しかし、この波はおさまる気配がありません。今後、株主提案も可決される企業が出てくることでしょう。何が変わるかというと、国内機関投資家の議決権行使スタンスですね。例えば、以前、買収防衛策に反対する国内機関投資家は少なかったです。見た目の安定株主比率が25%~30%(実際は30~35%)程度あれば、買収防衛策を可決させることは可能でした。しかし現在では、見た目の安定株主比率がこの程度だと、廃止を選択する企業が増えています。国内機関投資家が反対すると読んでいるからでしょう。

 株主提案については、現在、「圧倒的に会社側が有利」と言われています。これも国内機関投資家がまだ株主提案には賛成しないから、でしょうね。記事にGMOインターネットに対する買収防衛策廃止の株主提案のことが指摘されています。「かつて「物言わぬ」とされた機関投資家も、今や個別の総会議案に対する賛否を明らかにすることが求められる。ガラス張りの中、合理性のある提案に反対するのは難しい。」とあります。今後の株主提案に対する方針をあらためて考えておく必要があります。

 これまでであれば、株主提案がなされても「絶対反対」というスタンスの企業が多かったことでしょう。でも、自社の株主構成を考えたら、絶対反対では対処できない場面も出てくることでしょう。キャッシュや投資有価証券がジャブジャブにある企業に対して、増配の提案がなされた場合、一切応じなければ、国内機関投資家も株主提案に賛成せざるを得ないでしょう。そうならないよう、提案者との水面下の交渉をどうしのぐか、しのげなかった場合、会社としての配当方針をどうするかを真剣に考えておく必要があります。国内機関投資家を味方につけなければならない局面だと、一切増配に応じないというスタンスでは太刀打ちできない可能性があります。これからは「落としどころを探る」という行為が重要になってきます。

スティール・パートナーズのことが久しぶりに話題になりましたので、かつてのスティール・パートナーズ投資先一覧を掲載します。と言ってもすべてを網羅しているわけではありません。インターネットと私の記憶の限りです。興味深い点は、ほとんどの会社が買収防衛策を導入したという事実とまだ継続導入しているという事実です。

物言う株主が進化する中、そして、機関投資家も味方になってくれない中、会社はどう対処すべきなのかを、かつてアクティビストに狙われた会社に学ぶ必要があります。かつてアクティビストに狙われた会社はみんな買収防衛策を導入しました。また、これだけではっきりとは言えませんが、おそらく安定株主対策も行ったことでしょう。中には買収防衛策を廃止してしまった会社もありますが、私に言わせれば「言語道断」です。まあ、廃止せざるを得ない事情があったのでしょうが、代替策があったはずです。安定株主比率が減ったから、国内機関投資家が買収防衛策に反対するから、などが理由でしょうけど、そんなもんは理由になりません。

 持ち合いは経営者の保身のために行うのであれば悪です。が、会社のために行うのであれば善です。これらの会社が経営者の保身のために持ち合いを行ったとは到底思えません。スティール・パートナーズはかつてブルドックソースをターゲットにした際、代表であるウォーレン・リヒテンシュタインはこう言いました。「オレはソースが嫌いだ」と。こんな株主と経営者が一緒になって会社を良くするなんて不可能です。こんなことを言う株主がいる会社に対しても「経営者は株主の意見を聞くべきだ!」と世間は言うのでしょうか?こういう濫用的な株主から会社を守るためには、買収防衛策も持ち合いも必要でしょう。

 持ち合いは柔軟に考えるべきではないでしょうか?平時であれば持ち合いを減らし、準有事になったら持ち合いを増やす。政策保有株の開示に関しては「縮減ありき」の開示を求めてくるような気がしますが、そうしてはいけないように思います。この辺りは、持ち合い開示に関するコラムで言及していきます。

なお、柔軟な持ち合いをやるためには「持ち合い友の会」が必要かもしれませんね。当社が大きくなったら「企業防衛ファンド」を作りたいと思います。日本の上場会社から出資を募り、出資してくれた会社が有事になってしまったら、その会社の株式を保有します。アクティビストが株主提案をしてきたら、会社を助けるための対抗提案を出します。徹底的にアクティビストと戦うファンドです。儲けるためのファンドではないです。でも、上場企業が出資者で、その目的も濫用的な株主から会社を守ることであれば、儲けを意識する必要はないですし。

おもしろそうな気がしてきました。

 

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