2017年11月21日

No.213 敵対的TOBへの対応には大手証券会社が適任?

 「〇〇証券がアドバイザーになったのだから、一安心だよ」とお考えになる人はもう少ないでしょう。しかし、10年前の村上ファンドやスティールパートナーズの活動が活発化したとき、ものすごい数の企業から企業防衛体制の構築に関するご相談をいただきました。中には「〇〇証券が有事のときに相手方につかないように平時のうちから囲い込んでおきたい」という露骨なお願いをしてくださる会社もいらっしゃいました。あまりにはっきりおっしゃるので、逆にすがすがしく思えました。

 しかし、このお願いって、本当に正しいのでしょうか?大手証券会社が有事の時に相手側につかないよう平時から契約を締結し囲い込むことに何の意味があるのでしょうか?おそらく、当時、王子製紙が北越製紙に敵対的TOBを仕掛けたとき、仕掛ける側の王子製紙のアドバイザーを野村がつとめたことも影響しているのかもしれません。形式的には北越製紙の四季報上の主幹事は野村でしたから。「野村はうちの主幹事だけど、相手方のアドバイザーに野村がついてうちにも攻めてくるかも?」とお考えになった方もいらしたのかもしれません。また、「実際にTOBを仕掛けられたら、TOBに応募しないように野村を使って対策を練らなくてはならない。数多くの営業マンを抱え、全国に支店網を構築している野村が頼りになるだろう」とお考えになった方もいらしたかもしれません。

 でも、これって間違っているのです。例えば貴社に対して敵対的TOBが仕掛けられたとして、大手証券会社をアドバイザーにつけるとします。でもその証券会社は全国の営業マンを使って「〇〇株式会社に仕掛けられたTOBには応募しないでください~!割安ですよ~!」「敵対的なんですよ!〇〇株式会社の従業員がかわいそうです!」などとお客様のところを訪問したりしません。

そりゃそうですよね。一営業マンが、TOBに応募しないでくれ!などとお客様に言ったら、どういう責任が発生するのかわかりませんから。当然、支店の営業マンを動かすことなどできません。野村にいたときにそんなことしたことありません。議論をした記憶はありますが、「営業マンを使って、顧客に対してTOBに応募しないでくれ、などとは言わせられないだろ?」という結論だったと思います。

 逆も同じです。仕掛ける側のアドバイザーに大手証券会社を使ったとしても、全国の営業マンに「このTOBに応募してください~」「敵対的なTOBですけど、TOB価格は非常に魅力的ですよ!」などと言わせられません。そんなことしているケースは聞いたことがないです。せいぜい公開買付届出書を持っていって応募方法を説明するくらいではないでしょうか?

 敵対的TOBに備えて大手証券会社を味方につけておくという考え方は、はっきり言って間違いです。皆さん、ソレキアを思い出してください。日本で敵対的TOBを成功させた佐々木ベジですが、使った証券会社はどこでしょう?はい、三田証券です。大手ではありませんが、敵対的TOBの代理人として成功しましたね。敵対的なシチュエーションでアドバイザーが大手かどうかは全く関係ありません。中にいる人次第です。

 

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