No.228 お!久しぶりに買収防衛策の新規導入!
赤阪鐵工所という会社が買収防衛策を新規で導入しました。
http://www.akasaka-diesel.jp/wp/wp-content/uploads/2017/06/no120-05.pdf
ではさっそく株主構成を見てみましょう。
法人株主14.34%、アカサカ共栄会13.02%、上位個人株主9.39%、静岡銀行4.17%、みずほ銀行4.17%、東京アカサカ共栄会3.37%、明治安田生命1.55%の合計50.01%です。たぶん個人株主の中に創業者一族がけっこういるでしょうから、実際にはもっと高いと思います。
こんなに高い安定株主比率なのに、なぜ買収防衛策を導入したのでしょうか?「赤阪鐵工所」という名前からすると、鉄を作っているのでしょうか?なるほど、エフィッシモが大阪製鉄や東京鐵鋼の株式を取得し、電炉メーカーの再編を目論んでいる可能性もありますから、エフィッシモ対策で導入するのでしょうか?四季報で赤阪鐵工所の特色を見ると、「舶用ディーゼルエンジン専業の中堅。三菱重工と連携。小型・省エネ型を強化。非舶用分野を育成」とあります。どうも鉄鋼メーカーではないようです。
では、赤阪鐵工所の大量保有報告書の提出状況を見てみましょう。
はい、これですな。合同会社M&Sという会社に買い占められているようですね。合同会社M&Sとは・・・
よくわかりません。M&Aアドバイザリー業務などを行っている会社のようです。HPには議決権行使の基本方針まで書いてあります。合同会社M&Sは赤阪鐵工所以外にも、三東工業社と神田通信機という会社の大量保有報告書も提出しています。この2社はまだ買収防衛策を導入していないようです。早く導入した方がよいと思いますが・・・。
合同会社M&Sによる赤阪鐵工所の大量保有報告書が提出されたのは2017年8月8日です、保有割合は5.69%でした。その後、変更報告書を10月30日と11月21日に提出し、直近の保有割合は7.92%となっています。そして、赤阪鐵工所は12月12日に買収防衛策の導入を公表しました。来年の6月総会に議案としてかけます。それまでの間は取締役会決議にて有効ということです。決算発表と同時に公表して、株主総会までは取締役会決議で導入・有効、株主総会にかけるというパターンが多いですが、赤阪鐵工所は「早く導入しなくてはどんどん買い増されるかもしれない」と危機感を持ったから早めのタイミングで導入したのでしょう。よいことだと思いますし、こういうタイミングでの公表もよくあります。
コラムにしましたが、日清食品HDが買収防衛策を廃止しました。かつてスティール・パートナーズに買われていた会社です。廃止する会社がたくさん出てくる一方で、新規に導入する企業も年に少しはあります。数は少ないけれども、確実に導入する会社がいます。なぜでしょうか?有事になったら買収防衛策はあったほうがよいからです。導入できるなら導入しておいたほうがよいのです。当たり前です。
なお、「うちの株主構成では導入できないだろ?」と思考をストップさせる必要はありません。そんなもんは工夫すりゃなんとかなります。あと、再導入も、です。工夫を検討する価値はあるはずです。「再導入はハードルが高い」 高いけれども飛べない訳ではないと考えます。
赤阪鐵工所の安定株主比率は相当高いですが、買収防衛策を導入しました。なぜでしょうか?「合同会社M&Sってなんや?大丈夫か?おかしな株主じゃないのか?」 念のため買収防衛策を導入するのでしょう。そりゃそうでしょうね。過半数を取られる可能性は今のところないものの、個人株主比率が高い会社ですから、20%~30%なら買われる可能性はあります。そうなると筆頭株主ですから無視するわけにもいかなくなるでしょう。拒否権を握られるリスクもあります。赤阪鐵工所という会社は知りませんでしたが、ご英断だと思います。ただ、贅沢を言えば、平時から導入しておけばよかったです。であれば、買われることもなかったのではないでしょうか?