2017年12月25日

No.236 来年の株主総会は?

 日経電子版の黒田電気TOB成立、モノ言う株主との付き合い方という記事の中に「三菱UFJモルガン・スタンレー証券法人本部の荒竹義文氏は「モノ言う株主の活性化で、来年の株主総会での株主提案数は過去最高だった今年を抜く」とみる。」と書いてありました。

 私はそうは見ません。モノ言う株主の活性化で、今後、日本企業にどういう影響を与えるでしょうか?同じ記事の中に「米スティール・パートナーズなどモノ言う株主が日本で意識されるようになった2000年代は経営陣の総入れ替えなど極端な主張も多く、企業や一般株主の反感を招くようなケースが少なくなかった。一方、現在のモノ言う株主は「株主還元の拡充といった柔らかな提案が多い」(三菱モルガンの荒竹氏)。TOB価格の引き上げなどの主張は少数株主の利益拡大につながる面もある。運用者に受託責任を強く求めるスチュワードシップ・コードの改訂によって、機関投資家は合理的な主張であればモノ言う株主を無視できない。」ともあります。株主還元の拡充提案を柔らかい提案と言ってよいのか疑問です。株主還元を拡充しろという提案は、ある意味、会社の財務・経営戦略が間違っているという指摘ですし、かなり激しい提案だと思うのですが・・・。

ただ、この記事を見た日本企業はどう思うでしょうか?「経営陣の入れ替えなどは極端な主張と一般株主は考えてくれるかもしれないが、増配・自社株買いの提案などは、一般株主は柔らかな提案と考える、ということ?」と思うかもしれません。突き詰めれば「増配や自社株買いの提案に対しては、一般株主は賛同してしまうということか?」と考えるということでしょう。

 では、アクティビストはどう行動するでしょうか?株主提案をするのでしょうか?来年は株主提案が増えるでしょうか?結果的には増えるかもしれませんが、私は減ってもおかしくないと考えます。特に、増配や自社株買いに関する提案が。

 私がアクティビストなら株主提案なんていう手間やコストのかかることはしたくありません。水面下で脅します。「貴社の1株当たり配当は50円ですが、200円に増額する株主提案をします。貴社の財務体質上は可能ですし、貴社の株主構成であれば可決できると考えています。社外取締役の派遣も提案しますよ!大々的にプロキシーファイトもします!」と言います。言われた会社はどうするでしょうか?徹底的に戦うでしょうか?戦いたくはないはずです。株主提案は、提案サイドが不利ではあるものの、黒田電気のケースなどを見てきた日本の経営者はどう感じるでしょうか?「可決はされないだろうが、万一可決されたら?黒田電気のようになってしまうリスクは本当にないのか?」と考えるでしょう。落としどころを探ってくるのではないでしょうか?「●●ファンドさん、200円の増配はムリだが、100円にすることはできそうなのだが・・・」と。株主提案をするぞと脅して、会社が自主的に増配するように仕向けますね。

 そもそもファンドは株主提案なんてしたくないでしょうし、会社が自主的に増配してくれるのであればそちらのほうがよいでしょう。そういう交渉をしてくるのではないでしょうか?日本企業もムダな戦いはしたくないでしょう。ですから私は、来年の株主総会で株主提案が増えるといった安易な予測はしたくありません。見立てによっては株主提案が減ることだって考えられますから。

 日本企業の安定株主は減っています。それを痛切に感じているのは日本の経営者です。「黒田電気のケースは決して他人事ではない」と。その感情をうまく揺さぶってくるのがアクティビストです。アクティビストの狙いは株主提案をすることではなく、保有する株式の価値を高めることです。株価を高めるための一つの手段が株主提案であり、脅しなのです。

 

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