2018年05月23日

No.340 買収防衛策廃止企業をグループ分けしてみる

 私が把握している今年、買収防衛策廃止企業です。たぶんですが、実際にはもっと廃止を公表している会社があるのではないかと思います。さて、廃止企業をグループ①~③に分けてみました。

グループ①

 比較的時価総額が大きく、外国人株主比率が高い企業です。安定株主比率が低いことから、これらの企業は「継続したくても否決されるリスクが高いので継続できなかったグループ」と言えます。

グループ②

 時価総額も大きく、安定株主比率が低い企業もあれば、そこそこ確保している企業もあります。例えば、阪神阪急ホールディングスは見た目の安定株主比率は12.76%しかありません。しかし、この企業、買収防衛策を継続できたと思います。なぜなら、個人株主比率が42.17%もあるからです。個人は議決権行使をあまりしませんし、したとしても白紙で出す場合が多いです。ですから、阪神阪急ホールディングスは買収防衛策継続議案を総会にかけたら、可決できた可能性があります。また、小田急も京急もそうです。個人株主比率が高いという電鉄の特徴をいかせば、継続できたとはずです。他、平田機工という会社も個人比率が高いです。理研計器は、そもそも安定株主比率をある程度確保していますし、個人株主比率も26%あります。これらの企業は「票読みを間違えちゃったグループ」と言えます。

グループ③

 はい、これらの企業は「世の中の間違った情報に踊らされてしまったグループ」です。全社、確実に買収防衛策を継続できました。この安定株主比率と株主構成であれば、総会をラクラク通せたでしょう。たくさんの会社が買収防衛策を廃止しているという事実を、間違って認識してしまい、廃止してしまったのではないかと思われます。

 現在、私のコラムを読んでくださっている方々で、グループ③のような株主構成の会社様は、間違ったご判断はしないと考えます。

重要な点は、自社がどのグループに位置付けられるかを認識しておくことです。③のグループであれば、特段悩む必要はありません。ただし、買収防衛策の必要性については、世の中、間違った判断をしていますので、どこかで「買収防衛策じゃないんだ!」ということを訴えていただく必要はあると思います。うちは安定株主比率が高いから気にしなくてよい、ではありません。世の中、買収防衛策には反対なのです。このままいけば、いつか「買収防衛策は禁止!」と言われるかもしれませんし、安定株主比率が低下することだって想定されます。油断は禁物ですので、更新に備えて新たなプレスリリースの必要性を検討しておく必要はあります。

 グループ①や②に属する会社様。これが問題です。買収防衛策の更新について議論するのは、けっこう遅くなってからではないかと思われます。そうなると、社内的には「みんな廃止しているし、うちの株主構成だときついよな」というムードが漂います。そして、時間も無くなり、失礼ながら思考停止に陥ってしまい「廃止しよう」「そもそも反対されて否決されるリスクが高いのだから廃止以外にあり得ない」という選択をします。上記の廃止した会社の中には、かつてアクティビストのターゲットになった会社がいくつかあります(阪神だけではありません)。そういう会社でも廃止を選択したのです。先日私が提案した新たな買収防衛策の検討や買収防衛策のプレスリリースの工夫を真剣に考える必要があります。買収防衛策を廃止した会社にも、真剣に新たな仕組みの導入を考えていただきたいと思っています。

 

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