2018年01月24日

No.254 スパークス株主提案 11年ぶり(2018/1/19日経)

 2018年1月19日(土)の記事です。このスパークスvs帝国繊維については、2017/4/12のコラムNo.78で触れています。2017年4月10日、スパークスが帝国繊維に対して、資本効率の改善を要請したと発表しました。帝国繊維が保有するヒューリック株の売却や株主還元などを要請しているようです。スパークスのHPに詳細が掲載されています(https://www.sparx.jp/press/uploads/pdf/PressJ170410-01.pdf)。

 帝国繊維に対する株主提案については2018年1月19日に発表しています。http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1545553

 株主提案の内容は、剰余金の配当90円(会社計画だと30円)、取締役の任期を2年から1年とする定款変更、です。では、恒例の帝国繊維の株主構成です。

 その他の法人株主が35.43%、大株主上位金融機関が16.52%、合計51.95%が外部から見た安定株主比率です。外国人株主比率も10%程度ですから、スパークスの株主提案は否決されるでしょう。まあ、株主提案なんて普通は否決されます。会社側が圧倒的に有利ですから。スパークスもそれはわかっているでしょう。帝国繊維の問題点を公表したけど、帝国繊維は動かない。だったら株主提案をして、もっと騒ぐことで世論を動かそう、と考えたのかもしれません。水面下での交渉がうまくいかなかったのでしょうね。

 スパークスは公表資料で以下のように主張しています。

帝国繊維は優良な防災製品事業を営みながらも、時価総額は約594億円と、予想当期利益30億円、保有する金融資産約425億円を考慮すると、株式市場で十分な評価を受けていません。その主な要因は、同社の非効率な資本配分にあると提案株主は考えます。同社は、本業とシナジーの薄いヒューリック株式会社の持合い株式を約225億円も保有しているほか、成長投資にも株主還元にも使用されない現預金および有価証券を約208億円保有しており、自己資本利益率(ROE)上昇に対する重石となっています。

提案株主は、同社が株式市場において適切な評価を受けることができるよう、過去4年間にわたり同社と対話の努力を継続し、ヒューリック株式を合理的な期間内に売却すること、および成長投資と株主還元に関する明確な方針を示すこと、を提案してきました。

 まあ、確かにスパークスでなくとも、「おたく、現預金と投資有価証券、持ち過ぎですよ」と言いたくなるでしょうね・・・。既述のとおり、スパークスの株主提案が可決されることはないでしょう。しかし、世の中的には話題にはなります。「本当にこんなに現預金が必要なのか?」と。また、帝国繊維の安定株主も問題視されるかもしれません。「株主にとってメリットのある株主提案なのに、なぜ反対するのか?」と。安定株主である上場企業の株主は「持ち合い先に対して安易な議決権行使をするな!」「そもそも、持ち合いするな!」と批判するかもしれせん。現に、投資先企業の議決権行使を適切に行うこと、という条文を定款に入れるよう株主提案されている金融機関はたくさんありますし、それなりの賛成票を集めています。

 これも、GMOと同じですね。安定株主比率が高くでも株主提案される可能性は大いにあるということです。でも「株主提案されたって、こんなに安定株主比率が高いのだから無視すればいいんだろ?」とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。そうです。無視すればいいのです。でも、今の世の中、無視しても見逃してくれますかね?マスコミが放っておいてくれますかね?安定株主のおかげで株主総会は切り抜けられるかもしれませんが・・・。その安定株主だって、いつまで株を持ってくれるのか疑問です。なお、会社によっては株主提案されることを嫌がる会社もあります。会社のイメージが悪くなり、顧客離れにつながるかもしれない、と思っている会社もいます。アクティビストは、そういった会社の心情も見逃さずに揺さぶりをかけてきます。

 ところで、スパークスが株主提案をしたのは11年ぶりとのことですが、11年前に株主提案をされたのはどこの会社なのでしょうか?確かペンタックスではなかったでしょうか? 11年前とは2007年です。村上ファンドやスティール・パートナーズの活動が活発化した時期です。今の世の中も11年前と同じになってきたということです。にも関わらず、買収防衛策を廃止する企業が増えているという事実は非常に不思議です。逆でしょ?今こそ買収防衛策が必要なんじゃないですか?11年前は買収防衛策を導入する企業が爆発的に増えた時期です。

 株主提案だけで済んでいる今の状況は、ある意味まだマシです。これから、どんどん厳しい要求や提案がなされることは間違いないと考えます。そろそろ佐々木ベジが敵対的TOBをソレキアに実施してから丸1年です。また敵対的TOBが起きても何ら不思議はありません。買収防衛策や株主提案対応、アクティビスト対応、株主構成の検証、持ち合い先の見直しなど、やっておくべきことは山のようにあります。

 

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