2018年01月31日

No.259 UKCホールディングスは買収防衛策を導入するか?

 UKCホールディングスを四季報で見てみると「ソニー製品扱うユーエスシー、共信テクノソニックが経営統合し09年誕生。電子部品商社首位級」とあります。電子部品商社?そうです。黒田電気、三信電気と見た目は同業ということです。旧村上ファンドはUKCホールディングス株式の大量保有報告書を2017年12月14日に提出しました。保有割合は5.12%でした。そして、2018年1月5日に変更報告書を提出し、保有割合が5.28%に上昇したことがわかりました。では、UKCホールディングスの株主構成を見ましょう。

 その他の法人5.80%、みずほ信託銀行退給信ソニー14.23%、みずほ信託銀行退給信東京都民銀行3.97%、三菱東京UFJ銀行3.16%、中山邦子氏2.38%、みずほ銀行2.35%、明治安田生命1.88%の合計33.77%が外部から見た安定株主比率です。個人株主の中にも中山一族の方がいらっしゃるかもしれないので、実際の安定株主比率はもう少し高いでしょう。

 旧村上ファンドが完全に狙いをつけたと思われるUKCホールディングスですが、さて、これから何をすべきでしょうか?当然ですが、買収防衛策の導入は必須です。UKCホールディングスの時価総額は365億円しかありませんから、旧村上ファンドが30~40%の株式を買うことは可能でしょう。だから、早めに買収防衛策を導入しないと、黒田電気や三信電気と同じ運命をたどります。では、UKCホールディングスは買収防衛策を株主総会にかけたら可決できるでしょうか?

 外部から見た安定株主比率が33.77%もありますし、実際にはもう少し高いと思われます。では、株主総会議案の賛成率、行使率を見てみましょう。

 総議決権個数は156,639個ですので、計算すると議決権行使率は約80%です。安定株主比率が33.77%あり、議決権行使率が80%ですし、見えない安定株主や純粋個人株主の存在を考えれば、たぶん買収防衛策を総会にかけたら可決できるのではないかと考えます。

 おや?1つ気になる議案がありますね~。第1号議案の田口氏の賛成率が57.73%とかなり低いですね。なぜでしょうか?調べてみましょう!

https://www.nikkei.com/article/DGXLASGD30H45_Q7A530C1DTA000/

 お、さっそくこんな記事が・・・いわゆる会計不祥事を起こしたのですね・・・。役員の状況で田口氏の役職名を見ると「代表取締役副社長 グループ会社管理担当」とあります。実質的な管理部門の責任者なのでしょう。だから、反対票が増えたのですね。どうやら、社長は経営責任を明確化するために退任したようです。なお、田口氏も代表取締役副社長から取締役になったようです。

 さて、こうなると事情が少し変わってきます。「こんな状況で買収防衛策を導入したら、保身だ!と言われますよ!本当に導入するんですか?」「田口氏の賛成率ですら57%だったんですよ!本当に総会で買収防衛策を通せますか?」とアドバイザーに言われるでしょうね。会社はどんどん総会を通す自信をなくすでしょう。そして、三信電気同様、買収防衛策を導入せずに、無為無策のまま旧村上ファンドに買われることでしょう。会計不祥事を起こしてかどうかはわかりませんが、東芝やオリンパスも買収防衛策を廃止していますね。まあ、なんだかよくわかりませんが、後ろめたい気持ちになってしまうのでしょうかね。

 これ、問題の本質に対する捉え方がまちがっているからこうなっちゃうんですよ。そもそも、買収防衛策って誰のためのものですか?極論は株主のためのものなんですよ。経営者の保身のための策ではないのです。当然、この局面でUKCホールディングスが買収防衛策を導入すれば、旧村上ファンドは徹底的に攻撃してくるでしょう。「保身だ!」「粉飾しておいて買収防衛策か?」と。UKCホールディングスの株価は?

 まあまあ高い水準かもしれません。PER10.74倍、PBR0.98倍、配当利回り3.87%です。アナリストじゃないので、割安か割高かはよくわかりませんが、PBR1倍を切っているんですよね。配当利回りも高いですね。この水準で買い占められる場合、株主に対して「その金額で売るのは割安ですよ」と言ってもよいのではないでしょうか。であれば、ちゃんと買収防衛策を導入し、株主が不当に割安な価格で株式を手放す状況にならないようにすべきではないでしょうか?株主の利益を守るために買収防衛策を導入することは、決して保身などと非難されることではありません。UKCホールディングスが買収防衛策を導入できるかどうかは、本当に株主のことを考えた買収防衛策であると主張でき、株主に信頼してもらえるかどうかです。そのためには、きちんとした会社側の主張を株主に届けるためのプレスリリースを工夫することと投資家を訪問して誠心誠意説明することです。

 ちゃんと「当社が導入した事前警告型ルールは買収防衛策ではありません」と主張し、株主のための事前警告型ルールであることを理解してもらうことが重要です。なお、何の問題もなく安定株主比率の高い会社が、あえて「株主ことだけを考えた事前警告型ルールなんです!」と説明する必要はありません。あまり株主のことだけを考えた事前警告型ルールと強調しすぎると、有事になった時の手足を縛ってしまうことになります。でも、すでに狙われており、かつ、株主総会での可決可能性が微妙、かつ、会計不祥事といった後ろめたいネタがあるといった状況のときは、このように開示内容を工夫して戦う必要があります。会社の置かれている状況をよく分析した上で、戦術・戦略を柔軟に考える必要があるのです。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

以下のコラムでも書きましたが、たぶんこういう思考をした結果、MoMでの決議を避け、通常の普通決議を選択したのだと考えます。

続きを読む

旧村上ファンドが大量保有報告書を提出したアルプスアルパインについて、昨日以下のコラムをまとめました。最近旧村上ファンドは大量保有報告書を提出し株価が上昇すると、すぐに売却することがあります。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ