2018年02月07日

No.264 そういやGMOってなんで買収防衛策を入れてるんですかね?

 香港のアクティビスト・ファンドであるオアシスから株主提案をされているGMOについては、コラムNo.253などで触れました。3月下旬に予定されている株主総会で、買収防衛策の廃止や指名委員会等設置会社への移行などを株主提案しました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000029588.html

 GMOの株主構成を復習します。

 法人株主31.19%(㈱熊谷正寿事務所30.80%)と熊谷正寿氏9.87%の合計41.06%です。ま、ようは熊谷社長の会社ということです。オアシスは株主提案を可決できるでしょうか?不可能です。オアシスは当然わかっているでしょう。だから株主提案はしたけど、プロキシーファイトはしないでしょう。だって可決できないのに、コストかけてプロキシーファイトまでやる訳ないですよね。まあ、問題提起、いちゃもんつけて会社に嫌がらせ、マスコミ使ったゆさぶり、でしょうね。GMOはオアシスと末永いお付き合いをしなくてはならないかもしれません。

 さて、私がGMOの件で気になるのは、どうして熊谷社長が40%もの株式を保有しているのに買収防衛策を導入しているのか?です。公表資料を見ると、GMOは買収防衛策を導入する目的を当社の経営は、事業特性及び高度な専門知識を前提とした経営のノウハウ、並びに、技術革新に対応するための優れた技術、能力を有するスタッフ、有機的一体的企業結合体の中で各事業を担うグループ会社、取引先様及びお客様等のステークホルダーとの間に築かれた関係等への理解が不可欠であると考えております。このような当社の事業に対する理解なくして当社の企業価値の把握は困難であり、株主の皆様が大規模買付者による大規模買付行為を評価するに際しても、大規模買付者から提供された情報だけではなく、当社の事業特性等を十分に理解している当社取締役会の大規模買付行為に対する評価・意見等が適切に提供されることが、極めて重要であると考えております。」としています。ま、よくある内容ですね。

 一般的には「熊谷社長が40%も持っているのなら買収されることもないのでは?」と考えるのではないでしょうか。でも熊谷社長は「いやいやいや。40%しか持ってないんだよ?50%は持ってないんだよ。だったら過半数買われる可能性、あるよね?」と思ったのかもしれません。また、オアシスが指摘しているように、買収提案があったことを熊谷社長は2007年当時に認めているそうです。GMOが買収防衛策を取締役会決議で導入したのは2006年3月13日です。なるほど~。本当に買収提案があったのかもしれませんね。だから買収防衛策を導入したのですね。しかも、40%を持ってはいるけど、過半数持っている訳じゃないから買収される可能性はある、とお考えになったのでしょう。古今東西、買収提案があったり、株式を市場で一定程度取得されたりすると、やっぱり皆さん買収防衛策を導入しますね。

 ずいぶん前ですが、とあるオーナー社長から買収防衛策を導入すべきかという相談を受けたことがあります。その会社もGMOと同様、オーナーが40%ほど株式を保有している状態でした。当時の私は「???議決権行使率を考えたら過半数持っているのといっしょだろ???」と思っていました。でもオーナーのほうが現実的だったんですね。「オレしか安定株主おらんやん」と考えていたのでしょう。GMOの株主構成を見ても、熊谷社長以外の安定株主はいなそうです。オーナーはやっぱり自社の株主構成には人一倍敏感なのかもしれません。40%の株式を持っていたとしても「過半数持っていないのだから買収される可能性はあるだろ?」と考えるのでしょう。そう考えなかったソレキアは買収されました。それに気付いていたオーナー社長は佐々木ベジですね。ソレキアのほうはオーナー社長と言っても持株比率は相当低かったですしね。

 それにしても、買収防衛策を株主総会にかければ可決できる株主構成なのに、なぜGMOはあえて取締役会決議で導入しているのでしょうか?株主提案に対するGMOの反論が気になるところです。形式的にはいろいろ反論すると思いますが、実質的な理由を知りたいですね。「オレだっていつまで元気かわからんし、いつかは株式を放出するかもしれない。今なら総会でも可決できるだろうけど、将来的にはどうなるかわからん。取締役会決議で導入しておいた方が安全だ」と考えたのでしょうか?だとしたらすごいですね。

 

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