2020年04月03日

(無料公開)No.802 いったんここで今年度の動向を占ってみましょう

これまで日本で起きた敵対的TOBは以下のとおりです。では今後、日本企業に対する敵対的TOBはどういう方向になっていくでしょうか?以下、見にくかったらご指摘ください。ファイルでお送りします。

以前から書いていますが、しばらくはオーナー系企業企業による敵対的TOBが多いのではないかと推測されます。2003年にスティール・パートナーズがユシロ化学とソトーに対して敵対的TOBを2件同時に実施したころから、日本は第一次敵対的TOB時代を迎えました。夢真HDやドン・キホーテといった事業会社が敵対的TOBを実施しましたが、この2社はオーナー系企業です。王子製紙という名門上場会社が敵対的TOBを実施するものの、以降もスティール・パートナーズやダルトンといった投資ファンドによる敵対的TOBが主でした。

しかしここで注目していただきたいのが、敵対的TOBを仕掛けた買収者ではなく、対象会社を救ったホワイトナイトです。オリジン東秀を救ったのがイオン、明星食品を救ったのが日清食品です。しかしこの2社もオーナー系企業ですね。そして2017年2月に佐々木ベジさんがソレキアに対して敵対的TOBを仕掛けますが、ここで登場したホワイトナイトが富士通です。ようやくオーナー系企業以外の名門上場会社が敵対的TOBのホワイトナイトとして登場しました。

おそらく、今後もオーナー系企業や投資ファンドによる敵対的TOBが増えるものの、一般的な上場会社が敵対的TOBを選択するには少し時間がかかるでしょうし、敵対的TOBの舞台に一般的な上場会社が登場するのは、まずはホワイトナイトとしてではないかと想定されます。アクティビストが敵対的TOBを実施してきた場合、株主還元を強化する方針を公表すれば、だいたい株価がTOB価格を上回り、防衛することができます。それにアクティビストの狙いはそもそも株主還元強化でしょうから、ある意味、アクティビストにとっては対抗策ではなく、むしろ歓迎される策です。一方、オーナー系企業に敵対的TOBを仕掛けられた場合、株主還元強化では抜本的な対抗策にはなりません。前田道路のように特別配当を実施したとしても、普通なら一度TOBを撤回して、特別配当の権利落ち後の下落した株価をベースにしてTOB価格を設定して再度TOBを実施すればよいだけですので。

おそらくオーナー系企業に敵対的TOBを仕掛けられた会社は「あの会社だけはイヤ!」「あのオーナーの下で働くなんて絶対にイヤ!」という強い拒否反応を示すでしょう。そして「あの会社の傘下になるくらいなら、別の会社の傘下のほうがマシ」と考えてホワイトナイトを探すことでしょう。そして、できるだけオーナー系ではないホワイトナイトを探すという行動に出るのではないでしょうか?佐々木ベジさんに敵対的TOBを仕掛けられたソレキアが富士通にホワイトナイト就任を依頼したように。

一般的な上場会社が敵対的TOBを仕掛けるのはもう少し先であり、まずはホワイトナイトとして登場してくるでしょう。そして、しかるべき時期がきたら一般的な上場会社が敵対的TOBを仕掛けてくるかもしれません。それまでの間にやるべきことをやって、企業防衛体制を確立しておいた方がよいと考えられます。

なお、これはあくまで日本の会社を想定してのことです。もしかしたら、海外の一般的な上場会社が突然敵対的TOBを仕掛けてくることだって十分あり得ます。

 

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