No.950 (無料公開)DCMは島忠と一緒になることをあきらめるべきではない
土日はコラムを登録しないのですが、あまり時間もないので登録します。無料公開です。
DCMが友好的にTOBをかけている島忠に対して、ニトリがカウンターTOBを仕掛ける予定です。資金力を考えると、ニトリにまともに対抗したらDCMは負けてしまうでしょう。ではDCMは島忠買収をあきらめるのでしょうか?仮にあきらめたとしても、以下の方法を取れば、DCMは中長期的な会社の競争力、企業価値を向上させられると思います。以下ホームセンター業界の順位です。
https://diamond-rm.net/market/56992/
2018年度はDCM業界No.1だったようですが、2019年度はカインズがNo.1です。DCMは島忠を傘下に収めればNo.1に返り咲けたのですが、ニトリが出てきた以上、難しくなってきました。DCMもそう考えているかもしれません。では島忠を手に入れられないとして、DCMが業界No.1に返り咲く方法はないのでしょうか?当然ありますね。まず自分たちでコツコツがんばって返り咲く方法です。まあこれは当たり前の話ですね。でもコツコツがんばるのはDCMだけではありませんし、カインズだってコツコツがんばるでしょう。コツコツがんばるだけで返り咲くのは難しいです。
では手っ取り早くNo.1に返り咲くにはどうすればよいでしょうか?簡単です。M&Aをやればよいのです。「相手がいないのでは?」 そんなことありませんよ。以下、見てみましょう。
うっ・・・。い、いない・・・。私は「DCMさんも腹をくくってニトリと同じように敵対的TOBに打って出ればよいのです!」と書こうと思っていたのですが、どうもこの業界は創業家などが存在するためか安定株主比率が高い会社が多いですねえ。これでは敵対的TOBを仕掛けても成功しません。島忠さんは株主構成の面からも買いやすい会社だったのですね。
もちろんDCMのM&A候補先はホームセンター業界に留まるわけではないのでしょう。私は業界の専門家ではありませんから、そのあたりの分析はできません。またケーヨーの筆頭株主はDCMで19.29%保有しています。ケーヨーを完全子会社化すれば規模ではカインズを圧倒するかもしれません。
ただ今回DCMと島忠はある程度時間をかけて、お互いの良さを議論し、認め合い、そして「これから一緒にやっていきましょう!」というところにたどり着いたのだと思います。DCMの公開買付届出書を見ると以下のことが書かれています。
2つの“DCM”(「Demand Chain Management=お客さま視点からの流通改革」と「Do Create Mystyle=くらしの夢をカタチに」)の具現化を共に目指す企業と統合することにより、積極的に事業範囲の拡大と事業基盤の拡充を図ってまいりました。
DCMさんの社名の由来はこれだったんですね。知りませんでした。なるほど、お客様視点の流通改革とくらしの夢をカタチに、ですか。DCMはこの2つのDCMをより具現化するために今回島忠と一緒にやっていくことを決断したのでしょうね。ではその島忠がニトリに取られたらどうなるのでしょうか?DCMは公開買付届出書で以下の点も書いています。
より迅速かつ持続的な成長を実現するためには、理念を同じくする同業他社との経営統合が有力な選択肢の一つであると考えておりました。具体的には、同業他社との経営統合により、店舗網の拡大によるグループとしての売上高の増加、共同仕入れによるスケールメリットを活かした仕入コストの改善、統一的なPB商品展開による商品開発力の強化・PB商品売上高の拡大、Eコマース販売の強化、共通ポイントの導入による顧客の利便性向上及び新規顧客の獲得力の強化等が可能になると考えておりました。
つまりDCMが島忠の完全子会社化をあきらめるということは、店舗網の拡大による売上増やスケールメリットを活かした仕入れコストの改善などといったDCMホールディングスにとっての中長期的な経営戦略の実行が、一時的かもしれませんが遠のいてしまうということではないでしょうか?
はたしてそれでよいのか?ということです。これが友好的なTOBの協議において「島忠がイヤだと言っているから」ということであればしょうがないで終わる話です。しかしDCMと島忠は相思相愛なのです。DCMと島忠はお互い愛し合い、そして「結婚しよう!」となったのです。しかしそこにニトリが「ちょっと待った~!」と横やりを入れてきました。世間では「DCM君と島忠ちゃんはお似合いのカップルだけど、お金持ちのニトリ君は持参金もたっぷりだから、島忠ちゃんのご両親はニトリ君を選ぶわよねえ」と言っているのです。
もう一度言いますが、はたしてこれでよいのでしょうか!?DCMと島忠は相思相愛なのです!しかし持参金たっぷりのニトリが5,500円のTOBを実施したら、株主は「当然価格の高いニトリに応募する。島忠はニトリと結婚しろ!」と言うでしょう。そして島忠ちゃんは相思相愛のDCM君との結婚をなかばあきらめ、今、ニトリ君との結婚式を挙げようとしています。
DCM君は今こそ教会の窓をたたき「エレーン!」ではなく「島忠~!」と叫んで、島忠ちゃんを奪い取るべきなのです。そのための方法は以下!!!
作戦名は「Operation Sotsugyou」です!もちろんこの方法で勝っても、これから先両社には苦難が待ち受けているかもしれません。しかし、勝てる道がある以上、それを模索し実行するのが経営者の役目です。会社は株主だけのものではありませんし、そもそも会社は「もの」ではありません。経営者が「島忠が当社の今後の経営戦略、企業価値向上のために必要」と考えたのなら、徹底的にやるべきではないでしょうか?
DCMがもしこの方法に気づいているのであれば、躊躇なく踏み切るべきだと私は思います。なぜなら相思相愛の島忠が困っているからです。旧村上ファンドに攻め立てられ、このままだと愛していないニトリとの結婚を選ばざるを得ない状況まで追い込まれるかもしれないのです。愛する恋人を救うのが男DCMの役目であります!
私は世間から圧倒的に不利だと思われているDCMを応援したいですね。