2017年07月14日

No.130 僕がISSなら川崎汽船の社長には賛成推奨です

 ISSは2016年と2017年の川崎汽船の社長選任議案に反対推奨をしました。昨年はエフィッシモも反対票を投じたことから、川崎汽船の村上社長の賛成率は50%台とかなり低い水準でした。今年はISSが反対推奨したものの、エフィッシモが賛成票を投じたことから高い水準で可決されました。では、村上社長の経歴を見てみましょう。

 さてここでISSの経営トップへの推奨基準を見てみましょう。

 川崎汽船は「資本生産性が低く(過去5期平均のROEが5%を下回り)かつ改善傾向にない場合、経営トップである取締役に反対推奨する」という基準に触れてしまったのでしょう。しかし、ここでもう一度村上社長の経歴を見てください。社長に就任したのはいつでしょうか?「平成27年4月 当社代表取締役社長 社長執行役員(現職)」とあります。

おいおいおい!2年前の就任?2015年4月ですよね?ということは、ISSは就任してから1年程度しか経過していない段階で、社長選任議案に反対推奨したということですね。おかしくないですか?だってISSは「資本生産性が低く」の後にカッコ書きで「過去5期平均のROEが5%を下回り」と書いています。村上社長に反対推奨した時点では、社長に就任してからたった1年しか経過していなかった訳です。ROEを算出する過去5期平均のうち、1期間しか社長に就任していないということです。1年しか経過していない段階で「社長に反対推奨!」ってさすがにおかしいでしょう?ROEが低かった5期間のほとんどは前の社長の責任と言えるのではないでしょうか。それに今年もISSは村上社長に反対推奨していますが、村上社長って去年重要な経営施策の実行を決断しましたよね?

川崎汽船、日本郵船、商船三井の3社で定期コンテナ船事業を統合することを発表しました。これって相当重大な経営判断ですよね?少なくともこの経営判断をした社長はリスペクトされるべきではないでしょうか。このような重大な経営判断をした社長に対して「ROEが低いから反対~!」って・・・ISSって大丈夫ですか?どんだけ呑気な推奨してんだ!本来なら「川崎汽船は海運市況の悪化により業績は低迷、ROEも低い水準にある。しかし、現状を打破するために村上社長は日本郵船・商船三井とコンテナ船事業の統合という思い切った経営施策の実行を決断した。ISSの形式基準では村上社長は反対基準に触れているが、重大な経営判断をした村上社長を現時点で反対推奨すべきとは考えられないし、少なくともコンテナ船事業の行く末を見てから判断すべきと考える」という推奨が正しくないでしょうか? 

社員が数名しかいないから、こんな推奨しちゃうのでしょうね。ちゃんとした社員がいたら「え?でも川崎汽船って去年コンテナ船事業の統合をしませんでしたか?そんな経営判断をした社長に反対って・・・正気ですか?」と言ったでしょう。私が社員だったらこんな恥ずかしい推奨は全力で止めます。ただし、以前のコラムでも指摘したとおり、川崎汽船は見えない持ち合いをした可能性があります。自分たちは株式を持たないけど、取引先である法人に川崎汽船株式を買ってもらったように見えます。ですので、正確には今年の選任議案には賛成するけれども、法人株主が増えた理由やその背景として何かしらの利益を供与する裏取引がないかどうかを確認します。まあ、もし私がISSなら「うーん、エフィッシモに買われてるんだよなあ・・・よし!武士の情けじゃ!」と考えて、見て見ぬふりをしたかもしれません。

 皆さん、本当にこのようなISSに議案の推奨をされてよいのでしょうか?このような推奨をするISSに「賛成推奨してください!お願いします!」などとアタマを下げてよいのでしょうか?難しいとは思いますが、今こそ日本企業が一致団結してISSに対抗すべき時期だと思います。日本企業の皆さんはISSに甘すぎます。もっとガンガンにつめてやったほうがよいです。助言会社をガラス張りにする必要はありません。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ