2018年12月20日

No.489 武田薬品の臨時株主総会の~準備時間が足りなかったことが原因ではないでしょ?~

武田薬品によるシャイアー買収に関連する臨時株主総会が12月5日に開催され、以下の賛成率で可決されました。

2018年12月6日の日経15面には「反対派「準備時間足りず」」とありますが、準備時間が足りなかったから否決できなかったのでしょうか?

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38569280V01C18A2000000/

そんなことはないでしょ。そもそも武田薬品によるシャイアー買収については、武田薬品がシャイアーとの間で買収提案について合意したと発表したのが2018年5月8日です。報道されたのはもっと前です。また、今年の6月総会で一部株主が大型買収を規制するような定款変更を株主提案しています。8か月ほど準備期間があったと思われます。ですから、今回の一部株主の敗因は時間ではありません。敗因は武田薬品の株主構成です。再掲します。

安定株主などほとんどおらず、外国人株主中心の株主構成です。いくら個人株主の集団が感情的に「大型買収反対!」と叫んでも、合理的な外国人株主を中心とした機関投資家は聞かないでしょう。ちなみに、今年6月の定時株主総会における株主提案に対する賛成率は9.44%でした。株主提案の内容は定款変更議案で、1兆円を超える企業買収に関しては株主総会決議を取ること、というものです。今回の臨時株主総会の第1号議案の賛成率は89.13%ですから、反対率は10.7%です。株主提案の賛成率に比べて、まあ多少票が増えたという見方もできますが、ほとんど変化はありませんね。

大型買収が当たり前の製薬業界において、いくら個人株主の集団が叫んだところで外国人株主の心には届かないでしょう。ではこの企業買収をストップさせるにはどうやればよかったのでしょうか?やるとしたら、買収条件が武田薬品にとって著しく不利であるということを訴え、ISSが反対推奨するように行動するしかなかったように思います。

武田薬品の安定株主は、ある意味、いわゆる日本企業の安定株主ではなく、外国人株主を中心とした機関投資家なのです。安定株主である機関投資家の方向を経営者が見ていないと、武田の経営者は否定されるのです。皆さんの安定株主は誰でしょうか?

 

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