2022年01月04日

No.1219 2022年はどんな年になるでしょうか?

去年は以下のように書いていました。

https://ib-consulting.jp/column/3151/

来年はどういう時代になるでしょうか?今年の動きは私も想定外でした。もちろん敵対的TOBが増えることは間違いないと思っていましたが、こんなにもたくさん出てくるとは思っていませんでしたし、著名な企業がこれほど実施するとは思っていませんでした。私の想定を超えるスピードで世の中が変化していると思います。

旧村上ファンド、ストラテジックキャピタル、前田建設工業、コロワイド、ニトリ。アクティビストとオーナー系企業が敵対的TOBを仕掛けました。来年はそろそろオーナー系以外の一般的な上場会社が敵対的TOBを仕掛けてくる可能性があります。だってこれだけ敵対的TOBが経営戦略として実行されている中、次のターゲットは自社になってしまう可能性があるのですから、食われる前に食ってやろうと考えるのが普通の経営者でしょう?

間違いなく2021年も敵対的TOBは増えるだろうと考えていましたが、まさにそんな1年になりました。以下、2021年に起きた事例です。

1月 フリージアマクロスvs日邦産業

1月 日本製鉄vs東京製綱

2月 旧村上ファンドvs日本アジアグループ

2月 エフィッシモvsサンケン電気

4月 アスリードvs富士興産

7月 フリージアマクロスvs東京ソワール

7月 アジアインベストメントファンドvs東京機械製作所

8月 オーケーvs関西スーパー

9月 SBIvs新生銀行

毎月というと言い過ぎかもしれませんが、敵対的TOBなどが起きる頻度が高まったように見えます。2021年もコラムのネタに困らない1年でした。では2022年はどうなるのでしょうか?

私は「2022年、敵対的TOBは増えない」「でも想像を超える企業が仕掛ける可能性がある」と予測します。もしかしたら事業会社による敵対的TOBは1件も起きない可能性があります。一方、アクティビスト・ファンドの動きは相変わらず活発化すると思います。年末最後に大量保有報告書を提出したのはオアシスでした。オアシスはインフォコムの株式を5.65%保有しているようです。旧村上ファンドやオアシス、エフィッシモといったアクティビスト・ファンドの動きはますます活発化するでしょう。ただ、彼らが敵対的TOBまでやってくるかと言えば、それはないように思います。ちょこちょこと株式を買って、そこそこ儲けたら出ていくという行動を繰り返すように思います。また、敵対的TOBは仕掛けてこないとは思うものの、安い値段でのMBOや上場子会社の完全子会社化などには横やりを入れてくるだろうと思います。

では、アクティビスト・ファンドや事業会社による敵対的TOBが起きないかもしれないと考える理由ですが、それは「有事型買収防衛策」の影響です。2021年は有事型買収防衛策の発動が多発し、発動によって防衛できることがわかりました。買収条件次第では、ISSやグラスルイスなどの議決権行使助言会社も賛成推奨してくれることがわかりました。さすがに経営方針を明確に示さず、都合よく部分的買収を仕掛けてくるアクティビスト・ファンドに対してのみ発動を認めるのかと思いきや、まっとうなストラテジック・バイヤーであるSBIの敵対的TOBに対しても、議決権行使助言会社は2社とも発動に賛成推奨をしました。こうなってくると仕掛ける側の経営者は「有事型買収防衛策で対抗されるからやめておこう」と考えるでしょうね。そこそこ安定株主がいる会社だと、発動議案は普通決議で可決できますからねえ。

一方で、有事型買収防衛策が発動できる場面も少し見えてきました。まずは買収防衛策発動に関して、株主総会で普通決議をとって可決させる必要があることです。すでに買収防衛策を平時から導入している会社のルールを破った場合は別ですが、取締役会決議で買収防衛策を発動することは少し困難なようで、少なくとも株主総会の普通決議を取る必要があります。そして、議決権行使助言会社は買収条件が部分的買収であるかどうかを重視しているようで、部分的買収の場合は発動議案に賛成推奨する可能性が高いように見えます。

私が「2022年、敵対的TOBは増えない」「でも想像を超える企業が仕掛ける可能性がある」と考えた理由がここです。買収防衛策を発動されてしまう条件は、対象会社の安定株主比率がそこそこ高くて発動議案を普通決議で可決できること、買収条件が部分的買収であること、です。つまり、この条件に当てはまらない会社をターゲットにし、全株買収で敵対的TOBを仕掛ければ、買収防衛策を発動されることはないということではないでしょうか?

安定株主比率が低くて発動議案の普通決議を取ることができない会社とは?時価総額が大きくて安定株主比率が低い会社です。時価総額が小さい会社は個人株主比率も高い場合が多いですし、安定株主比率もそこそこは確保しています。だから発動議案を普通決議で可決させることができるのですが、時価総額が大きい会社は外国人株主比率が高く、安定株主がほとんどいません。こういった会社に対して全株買収の条件で敵対的TOBを仕掛けたら、少なくとも有事型買収防衛策で対抗されても、議決権行使助言会社は発動議案に反対推奨する可能性が高く、株主総会で可決させることができません。

だから私は今年「え?あの会社がこの会社に敵対的TOB?」というあっと驚く事例が出てくるように思っています。さてどんな会社が仕掛けるのでしょうか?

最後になりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 

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