2022年03月30日

No.1280 (無料公開)買収防衛策を導入しないことも経営者の保身なんです~いざとなれば有事型で対抗する~

結論。できませんよ。

東芝機械や富士興産、東京機械製作所といったようにこれだけ有事型の発動事例が増えたり、住友金属鉱山が平時型廃止のプレスで有事型に言及したりすると「いざとなったら有事型で対抗すればよい」と考える会社が増えるでしょう。

私は「平時はイヤだけど有事になったらやるんかい!だったら平時からちゃんとやっとけよ!」と考えます。「最近は有事型が流行っているし、平時型は反対されるから、だったら有事になったら発動しようぜ!」 安易です。非常に楽観的です。平時から軍事訓練をしていない会社や軍備を強化していない会社が、有事になったらそのときは戦う?私に言わせれば「笑わせるな!」ですね。平時からちゃんと有事に備えた練習もせず、そして買収防衛策という武器の使い方も知らない会社が有事になって戦えるわけがありません。

当社のコラムを読んでくださっている皆さんはある程度平時から訓練をしているということになります。が、もちろんそれだけでいざというときに戦えるわけではありません。買収防衛策は企業防衛の第一歩です。買収防衛策で会社を守り切れるわけではないものの、ないと話になりません。誰のための買収防衛策か?株主は反対するけど、株主のための買収防衛策であります。そして従業員や取引先のための買収防衛策であります。時間と情報が必要ないなんていうステークホルダーはいません。

そりゃ、今までのようにアクティビストとの戦争なら勝てるかもしれませんが、あの戦争って戦っているのは会社じゃないですよ。弁護士とFAです。皆さんは戦わず、傭兵が戦っているだけなんです。アクティビストは会社を乗っ取って支配することを目的にはしていません。株価が上がれば出ていく人たちです。本当に怖いのは貴社の同業といった事業会社による敵対的買収です。これこそが本物の戦争です。

平時型と有事型に関する記事です。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC264A50W1A121C2000000/

こういう記事を見て誤解する人が増えるのではないかと心配です。

市場から見れば、2つの防衛策の違いは大きい。平時型は、普及が進んだあと、経営の緊張感をそぐとの理由で批判を受け、廃止が進んできた。有事型にも正当性を欠く事例では異論も出ているが、導入を総会で諮る場合に議決権行使助言会社による賛成推奨を得ることが少なくない。

2つの防衛策の違いはたいしてありません。有事に導入するか平時に導入するかの違いだけです。どうして平時型が経営の緊張感をそぎ、有事型はそがないなどと言えるのか?「平時型に反対されるなら、いざとなれば有事型を発動すればいいや」と考える経営者が増えるでしょう。有事型で対抗すればよいという緊張感のない経営になります。せっかく平時型買収防衛策の導入が進み、やっと「買収防衛策は発動することを前提にしてはいけない。あくまで交渉ツール」という考え方が広まりつつあったのに、有事型の発動事例が増えてしまったことから「買収防衛策を発動して対抗じゃー!」という世の中にになってしまいそうです・・・。有事型こそが経営の緊張感をなくしてしまうのですよ。

総会で導入すると、平時型の有効期間は約3年になる。「有事型ではなく、平時型である場合、今後現れるかもしれない有望な買い付け者に対しても萎縮効果を与えてしまう可能性がある。投資家配慮の側面からは好ましくない」と渥美坂井法律事務所弁護士法人の渥美陽子弁護士は指摘する。

なに言ってんだ???まったく理解できんし、意味不明・・・。これ言い換えてみましょうか?

「有事型は特定の買収者に向けた防衛策であり期限はない。ただし、買収者が現れたらいつでも導入できる。「平時型ではなく有事型である場合、今後現れるかもしれない有望な買い付け者に対して委縮効果がある。なぜなら有事型の目的は情報と時間の確保ではなく防衛策の発動であり、買い付け者は発動されて買収を阻止されるかもしれないと思うからだ。有事型は突如として導入されることから、事前にルールが開示されている平時型に比べて予見可能性がなく、投資家配慮の面からは好ましくない」とIBコンサルティングの鈴木社長は指摘する。」

投資家を配慮するという観点で考えたら、平時型のほうがよいに決まっています。買収提案が仕掛けられたらアービトラージャーというさや抜きの投資家が登場しますが、彼らは買収防衛策が発動されるなどということを考えずに投資します。それが突如として買収防衛策を発動するを公表されたら?株価が下がって損します。どう考えても投資家を配慮していないのが有事型ですよ。

なぜアドバイザーの多くが平時型ではなく有事型をすすめるのかと言えば、答えは単純でうす。皆さんの会社が有事になった方が儲かるからです。最近は「最近は平時型の評判が悪いんですよ。有事型だと投資家も認めてくれるんですよ」といったようなことを言うアドバイザーがいるようです。最近の情勢を上っ面だけなめて知っている気でいるアドバイザーですね。こういう人を信用するとあとで痛い目を見ます。最近有事型で対抗した会社の多くは、平時型を導入できた会社が多いです。平時型を導入していればムダな数億円のコストも発生しなくてすみました。

誰のための有事型なのか?皆さんのためのものではありませんよ。アドバイザーが儲けるための有事型です。平時型を導入できる会社はちゃんと導入しておくべきなのです。

 

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