2022年12月09日

No.1445 本日のジャフコに関する日経の記事

以下、本日の日経記事です。ジャフコの自己株TOBについて「奇策」と評価していますが、おっしゃるとおり奇策です。記事を一部抜粋しながらコメントします。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0833N0Y2A201C2000000/

ジャフコが自己株TOBを決断するに至った経緯や失敗した要因は以下のコラムでまとめていますのでご覧ください。

https://ib-consulting.jp/column/4611/

だが株価はジャフコの思惑通りに上がらなかった。発表の翌営業日こそ上昇したが、その後は6日続落。VWAPが算定期間中、設定範囲に到達することは一度もなかった。

市場は自社株買いを「村上氏のために事実上プレミアムをつけたもの」(個人投資家)と冷めた視線で見ていた。株主還元に目覚めたわけではなく、結局は村上氏を追い出すためだけの一時的な奇策と受け止めた。

価格決定期間中のVWAPは以下のとおりです。たしかに11月25日の自己株TOBの公表受けて、28日の株価は高値で2,580円を付けました。しかし安値は2,493円です。この時点でマーケットはこの奇策を問題点を見抜いていたのでは?そしてその問題点とは「村上さんを追い出すために実質プレミアムをつけたもの」とか「株主還元に目覚めたわけじゃない」というものではなく、単に「この条件下でジャフコ株を買っても、自己株TOBの価格が公表された瞬間に損する」というものではないでしょうか?

今回の自己株TOB価格の決め方は、価格決定期間中のVWAPがベースになります。11月30日から12月7日のVWAPから1%マイナスした価格がTOB価格になるのです。ということは、ジャフコ株を買っても買った値段の1%下の価格がTOB価格になる可能性があります。そして自己株TOBはもちろん全株を買う訳ではなく、一部です。仮に2,500円がTOB価格だとすると、自己株TOB総額420億円÷2,500円=16,800,000株です。これはジャフコの発行済株式総数(自己株除く)71,184,100株の約23%です。旧村上ファンドは全株TOBに応募してきますし、オアシスもそうかもしれません。当然、按分になります。100株しか保有していな株主は応募しても買ってもらえません。だから2,500円でTOBをすると言っても部分的な買付けですから、市場株価は2,500円近辺にはなりません。正確にはわかりませんが、2,400円?2,450円?とかですかね?

サヤを抜くためにジャフコ株を買おうと思っても、TOB価格が決まらないと買えないんですよ。だから価格決定期間中にジャフコ株を買えなかったということではないでしょうか?

マーケットは、市場株価にプレミアムを付けて明らかに村上さんを追い出すための自己株TOBであっても、買いますよ。サヤが抜けるのなら。ジャフコが株主還元に目覚めようが目覚めまいがマーケットにとってはどっちでもよくて、ようはサヤが抜けるかどうかではないでしょうか?仮にジャフコが11月25日のTOB公表時に「2,500円のプレミアム付きでやります!」って言ってたら、28日の株価は25日に比べて上がってたと思いますよ。そして無事、村上さんもTOBに応募できたでしょう。

そして以下。

投資家にとっては420億円も使って村上氏を追い出さないといけない理由も納得感が乏しかったようだ。「うるさ型の株主がいる方が経営の規律は保たれる。村上氏が大株主としてVCの運営に口を出すとは思えず、ビジネスに悪影響が出るというのは詭弁(きべん)だ」(独立系ファンドマネジャー)との声もでた。

私もたしかにそう思うところがあります。最近「村上さんがいることで企業価値の毀損につながる」といったことを村上さんから自己株TOBで買い取る理由の1つにしている会社が多いですが、「こんなこと言われて村上さん怒らないの?」といつも不思議に思っています(笑) ただし、村上さんがどうかはわかりませんが、特定の投資家がいることでビジネスに悪影響が出るってのはあり得る話ですよ。取引を嫌がられたり、提携がうまく進まなかったりする例はあります。一概に詭弁とは言い切れないのです。

今回ジャフコが取った奇策の問題点はいろいろと明らかになりつつありますが、重要な点は奇策のテクニカルな問題点だけではなく「なぜジャフコはこのような奇策を取ったのか?」ということです。西松建設や新明和工業などの事例がある中で、素直にプレミアムを付けた価格で自己株TOBをやればよかったものを、なぜこのような奇策を取ってしまったのか?ここですよ。ちなみに共通しているのは、LAです。西松建設、新明和工業、ジャフコに共通するのはLAが西村あさひということです。同じLAでありながら、西松・新明和工業と同じプレミアム付きの自己株TOBをなぜジャフコは選択しなかったでしょうか。

この奇策はジャフコのために取った奇策なのか?果たして誰のために取った奇策なのか?ここを明らかにしていく必要があります。

 

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