2023年02月27日

No.1486 敵対的買収が消える日は来ないです

なぜならマスコミの皆さんがこれからも「敵対的TOB!」って使うからですよ(笑) だって「同意なきTOB!」より「敵対的TOB!」のほうがインパクトあるでしょ?

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2022T0Q3A220C2000000/

この記事を書いたのは奥氏ですが、旧村上ファンド関連の記事をよく書いてらっしゃる記者さんですね。けっこう村上さんに食い込んでいるように見えますね。

まずこの記事で気になるのが以下です。

敵対的という字面からは強引・敵視などのイメージが先行するからだ。買収者側では「買収を打診して断られると敵対的になるので諦めた」(ある上場企業の社長経験者)事例がある。筆者は10年以上、M&Aを取材してきたが、「敵対的という表現はなんとかならないか」との声を幾度となく聞いた。

そういう会社がいるのかもしれませんね。ただ、私も20年ほど敵対的TOB、企業防衛の世界で仕事をしてきましたが、「買収防衛策という表現はなんとかならないか」という声を幾度となく聞いてきました。敵対的買収を考えている会社は「敵対的という表現はなんとかならんか」というよりも「敵対的TOBであっても、なんとか批判されない方法はないか」と悩む人がいました。私の経験上の話ですが。

注目したいのは、研究会が敵対的買収を巡る議論を進め、「敵対的」という表現についても「同意なき」に改めようとしていることだ。

この研究会というのは経済産業省が立ち上げた「公正な買収の在り方に関する研究会」のことなのですが、研究会では敵対的を同意なきにしたほうがよいのではという議論だけではなく、買収防衛策という呼称もどうなのかという議論もしています。この記事におかれましては、敵対的⇒同意なき、の議論だけではなく、買収防衛策という呼称がおかしいという論点もぜひ取り上げてほしかったですね。

なお、上記で「買収を打診して断られると敵対的になるので諦めた」とありますが、これ、敵対的という表現をマスコミが使うから諦めたというわけではないでしょう?仮に敵対的という表現を同意なきにしたとしても、この会社は諦めたと思いますよ。表現の問題ではないんですよ。買収提案を断られたのに、TOBなどを仕掛けた場合、買収者と対象者でドンパチが始まります。つまり戦争状態を避けたいと考えたから諦めたのでしょう。

記事にあるように「敵対的買収が消える日」というのは来ないと思いますが、敵対的買収が当たり前の時代を今むかえつつあります。こういう時代において何をしておくべきか?東証でも議論されていますが、やはりPBR1倍割れ状態をなるべく早期に解消すべきでしょう。そして次にやることは?

貴社が敵対的買収者になることを検討しなければなりません。これまで多くの会社はアクティビストや同業からの買収提案があったらどう対処するか、という企業防衛面での対応ばかりを意識してきたと思われます。でもこれからの時代、守ることばかり考えていてはダメなのです。企業防衛には限界があります。特に時価総額が大きい会社は安定株主比率も相当低いため、本気で敵対的買収を仕掛けられたら買収されるリスクが高いです。そうならないようにするためには、自社が敵対的買収を仕掛け、企業価値・株主価値を高めることを検討する必要があります。

攻撃こそ最大の防御です。なお、敵対的買収を成功させるためのポイントは1つだけです。これはさすがにコラムではお伝えできませんが、本気で企業価値・株主価値の向上のために敵対的買収を考える方がいらしたらぜひご相談ください。

 

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