2025年06月20日

No.2056 (無料コラム)上場会社は自社の生死をゆだねるアドバイザーを慎重に見極めなくてはいけない

この記事、本当にとんでもない内容だと思いますよ。ここに書いてあることって、ようは「平時のアドバイスは適当にやっておいて(そもそもちゃんとしたアドバイスができない)、上場会社が有事になったらたんまり稼がせてもらいます」ってことなんですよ。日経さん、気づかずに書いていませんか?

上場会社のみなさんはどうしたいのか?をよく考えてみてください。有事になったら助かりたいのですか?有事にしたくないのですか?どっちですか?私は上場会社が有事になってしまうと、社長が本業に集中できなくなるから企業価値にとってマイナスと考えて、上場会社が有事にならないようなアドバイスをしています。上場会社は「何を守りたいのか?」「それを守るにはどうすべきなのか?」を平時に真剣に考え、対策を準備・実行しておく必要があるのです。

虎の子の恵比寿を売る羽目になったサッポロHDとサンケイビルを守ったフジMHD・・・この差がどこにあるのかを考えてみるのもおもしろいかもしれませんね。

物言う株主の要求解決 みずほ証券やSMBC日興、企業に戦略助言 2025/6/19日経

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB12D7A0S5A610C2000000/

2000年代から取り組む野村証券では、助言契約の件数が直近2年ほどでほぼ倍増しているほか、大和証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券でもアクティビストに関する相談が増えているという。

各社のアクティビスト対応専門部署の主業務は要求を分析し、アクティビストの退出に向けて助言することだ。取締役がアクティビストと面談する際の質疑応答対応などを助言する。助言に関する月々の手数料を得る場合が多いが、「利幅は決して大きくない」(関係者)。顧客との関係構築のための「コストセンター」として位置づける証券会社もある。

収益性が高くないにもかかわらず各社が陣容を拡大するのは、アクティビスト対策の助言業務がより幅広い企業取引への「入り口」につながるとの考えがある。アクティビストが求める株価上昇や企業価値向上のためには、非中核事業の売却や自社株買い、親子上場の解消などの資本政策も重要になってくる。投資銀行として「一気通貫で手掛けられる」(SMBC日興証券の担当者)ことを強みとして打ち出したい考えだ

ここに書いてあることは、『平時の助言、アクティビストが登場した準有事の助言の利幅は決して大きくないけれども、なぜ利幅の大きくないビジネスをするのかというと、その先に大儲けできるビジネスがあるから』ということですね。

ということは、証券会社は「上場会社が平時のまま終わってしまうと儲からない。できるだけ有事になってくれればくれるほど儲かる」ということではないですか?であれば、平時におけるアドバイスは「極力有事になってくれた方がよい」と考えてアドバイスをする(まともなアドバイスをしない、できない、ノウハウがない)ということになるのでは?

よく「証券会社に平時型買収防衛策の導入を相談したのだが、評判が悪いからやめるべきだ、平時型は何の役にも立たない、時代は有事型だ!」「うちは平時型を導入しているのだが、証券会社がやたらとやめろやめろとうるさい、いったい何なんだ?」と相談されることがあります。実際、やめてしまった会社もあるそうですし、平時型導入のタイミングが遅れてしまった会社もあります。なぜ証券会社が平時型買収防衛策を「評判が悪い」「廃止しろ」と言うのでしょうか?

平時型を入れていて買収提案がされにくい体制を構築すると「有事になりにくいから」です。上場会社が有事にならないと「儲からないから」です。以下をご覧ください。東洋経済さんの記事です。非常によい記事だと思います。「買収者に狙われた時点で負け」です。狙われないことが大事なのです。

ニデック“同意なきTOB”を撤回へと追い込んだ「地裁決定」の重み、それでも牧野フライスが痛手を負う「勝者なき」攻防の後始末 2025/5/14東洋経済

https://toyokeizai.net/articles/-/877082?page=4

そういう意味でも、牧野フライスは決して「勝者」とは言えない。2025年3月期は、TOB対応の関連費用として特別損失13億円を計上。さらに2026年3月期も10億円程度の追加費用が生じる見込みだ。金銭的にも、労力的にも、レピュテーション的にも、敵対買収者に狙われた時点で「負け」なのだ

続いてデイリー新潮さんの記事です。

「真の勝者はニデックでも牧野フライスでもなく…」 “異例の買収劇”の内幕と永守重信氏の次なる狙い 2025/5/23デイリー新潮

https://www.dailyshincho.jp/article/2025/05230601/?all=1&page=2

「今回牧野フライスが防衛できたのは、対抗策が優れていたからではなく、ニデック側の事情による部分が大きい。そして何より、牧野フライスの25年3月期の決算短信を見ると、『公開買付関連費用』、つまりアドバイザリーフィーとして13億円が計上されている上、今期は10億円程度の追加費用が生じるともいわれています。ニデックが企業イメージを下げただけでなく、牧野フライスとしてもさんざん振り回された挙句多額の出費が発生したわけですから、やはり本来は『有事にならないための平時の防衛策』こそが重要だと、私は思うのです

 結局得をしたのは、莫大な利益を手にした「アドバイザー」だけということか。ニデック、牧野フライスの“次の一手”やいかに

「これ、オマエがコメントしてる記事やんけ!」というツッコミはさておき・・・私、何も23億円というフィーを手にしたアドバイザー「全員」を批判しているわけではありません。価値のあるアドバイスをしたアドバイザーは高額のフィーを得るべきなのです。価値あるアドバイスにはお金がかかるのは当たり前です。牧野フライスは安定株主がほとんどいませんから、強毒の買収防衛策を発動するのは困難でしたが、知恵を絞って時間を稼ぐ弱毒の買収防衛策で対抗し、結果的にニデックが買収提案を撤回しました。評価されるべきアイデアです。

しかし牧野フライスは防衛できたのでしょうか?ニデックの買収提案から逃れることはできましたが、牧野フライスはMBKパートナーズによるTOBで非公開化される可能性が高いです。ニデックに買収されなかったけど、MBKパートナーズに買収されます。

牧野フライスには数々の買収の予兆がありました。旧村上ファンドが登場し、出ていったと思ったらオアシスが登場、そして同業のTAKISAWAが買収され、永守さんは「次はもっとデカい先を狙うよ~!」と言っていました。

もしかしたら牧野フライスは証券会社に相談していたかもしれません。「ニデックに買収されないようにするにはどうすればいいか?」と。でも日経の記事の通りであれば、相談された証券会社はおそらく「いざと言う時のためにホワイトナイトを検討しておきましょう」くらいしか言わなかったのでしょう。まあそれくらいしか知恵がないのでしょうけど。なお「じゃあオマエはほかの策があったのかよ?」と言われるかもしれませんが、私は堂々と「あるよ」と答えます。「2000年代から取り組む野村証券」の一員であった私を舐めないでいただきたい。買収防衛策の設計すらしたことのない小童なんぞ、私の敵ではない。

2024年12月27日、年内最終営業日に敵対的買収を仕掛けられた牧野フライスの社員の皆さんはどんな気持ちだったでしょうか?さぞかしくやしい思いをしたことでしょう。でも一方でその日に「よっしゃ!金儲けできるでぇ!」と小躍りした人たちがいるということを忘れてはいけません。その人たちは平時にロクなアドバイスをしていないのです。ホワイトナイトというのは買収防衛策ではありませんよ。「こいつに買収されるのはイヤだ。アイツのほうがまだマシ」というものです。ちなみに牧野フライスはいつか再上場するんですよね?「おお!牧野フライスさんがいい会社になって再上場するのか!よっしゃ!もう1回TOBや!」ってニデックが仕掛けてきたらどうしますか?

アクティビストがイヤで非公開化した東芝もいずれ再上場するのでしょう。そして再上場しても株価が下がるときがあります。そうしたらアクティビストが寄ってくるでしょう。必ず寄ってきますよ。だって東芝はアクティビストを恐れて非公開化した「弱い会社」とアクティビストには見えているのですから、株価が下がればまた狙われるに決まっています。非公開化はなんの解決策にもなりません。

証券会社がいまだに「株屋さん」と言われるゆえんがこういったところにもあるのです。なお、証券会社さんは世の中の流れが変化していることにまだ気づいていないと思います。

 

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