No.2401 (無料コラム)今回の株主提案権の改正は本当に意味がない
『私たちは大前提として、アクティビストの存在すべてが悪だとは決して思っていない。アクティビストの活動によって企業に緊張感が生まれ、成長志向型の行動が促されている事例も多くあると認識している。一方で問題視しているのは、非常に短期的な株主還元を強く求めすぎることによって、突き動かされた企業が短期的な株主還元を実施し、結果として将来の成長投資に充てる資金が失われている可能性があるということだ』
で、株主提案権を改正すると、短期的かつ大規模な株主還元の要求の抑止力になるの?ならないですよ。個人株主の株主提案権が厳格化されるだけで、アクティビストの株主提案権にはほとんど影響がない。たくさんの上場会社株を30,000株買っているどこぞのアクティビストには多少なりとも影響があって、京セラに対する株主提案ができなくなったり、ホントの狙いは上場子会社を完全子会社化させることだけど、プレッシャーかけるためにやってる日本製鉄への株主提案ができなくなったりするかもしれんが、そんなの微々たるもんでしょ?
むしろ今回の改正は上場会社にとっては最終的に「迷惑でしかなかった」という結果になる可能性が高いです。だってこの国会議員の方、メチャクチャ誤解しているじゃないですか?以下の通り。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC037ZK0T00C26A8000000/
「本来は取締役会が決める業務執行に関する事項を、定款に新たに盛り込むよう求めるような定款変更の株主提案は制限を検討するべきだとの考え方を盛り込んだ」
「なぜ今、定款変更という形の株主提案がなされているかというと、日本では海外で認められている『勧告的決議』ができないからだ。ある課題や方針について、こういうことが重要ではないかと株主に問いかけて賛否を明らかにする仕組みのことだ。提言には盛り込まなかったが、PTでは定款変更による提案を制限する代わりに、勧告的決議を創設することもアイデアとして出た」
こんな改正をされたら上場会社は大迷惑ですよ。上場会社は「業務執行に関する事項を定款変更にからめて提案するのはやめてくれ!」と思っているわけではありません。「業務執行に関する提案をするのはやめてくれ」と思っているのです。なのにこの国会議員は「そうか!定款変更という形で提案されると迷惑なのか!だったら諸外国と同じように勧告的決議ができるようにしよう!」と思っていませんか???提言には盛り込んでいないようですが・・・。
これ、アクティビストにとっては大変メリットのある内容ですよ(苦笑)。勧告的決議の株主提案だからという理由で会社は拒絶し、アクティビストは仕方なく定款変更の形にしているにすぎません。それを「勧告的決議の株主提案にしていいよ!」っていう改正を本当にしたら、アクティビストは大喜びするに決まっているじゃないですか?
この国会議員の方、ホントはアクティビストの味方なんじゃないの?
会社法が改正されたら、アクティビストの勧告的決議の株主提案が頻発しますよ。第1号は京成電鉄に対するパリサーの「オリエンタルランド株を売却せよ」という勧告的決議の株主提案かな?
もしかしたら、
「いや、勧告的決議の株主提案が可決されたとしても、取締役会の判断で不採用とすることは可能とする改正にするから大丈夫!」
っていう改正にします?いや、全然大丈夫じゃない。勧告的決議の株主提案が可決されても取締役会の判断で不採用にすることができるという法律にしたところで、どこぞのISSとかいう議決権行使助言会社がこういう基準を作ってくるはず!
「勧告的決議の株主提案が可決されたのに取締役会の判断で不採用とした場合、株主が納得できる理由を明示しない限り、経営トップの選任議案に反対推奨する」
ね?容易に想像つくでしょ?
この国会議員さん、上場会社の味方なのかアクティビストの味方なのか、まずはそこをはっきりしてほしい。
そもそも個人株主に株主提案をされて困っている上場会社など皆無です。「社名を野菜ホールディングス、いよぎん阿鼻叫喚ホールディングスにしろなんていう株主提案をされたら会社は迷惑だ!」とおっしゃるかもしれませんが、あんなん、あの2件くらいでしょ?「いや、株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループの・をとれ!粋がっているように見えるっていう株主提案もあったぞ」 じゃあ3件くらいだね。
ほっときなさいよ、そんな提案。そもそもこういう提案ってだいたい全部「皮肉」なんですよ。野村に関しては「おきて破りの年2回の公募増資をしやがって!しかも業績よくないじゃないか!それなのにトマト栽培事業なんかやりやがって!だったら社名を野菜にしちまえ!」ということ。
株主総会、株主提案っていうのは個人株主のガス抜きのために存在します笑 それを真剣に「上場会社は迷惑している!」なんて本気で取り扱ってどーすんの?適当に「社名変更の必要はないので反対します」ってさらっと反対意見を書けばよいだけ。可決される可能性などゼロ。
上場会社の事務局の手間がかかるっていうしょうもない理由で、国会で法律改正の議論などするなという話。いい大人がいったい・・・。
上場会社にだけ都合のよい法律改正なんてされませんよ。300個要件を廃止したはいいけど、もし勧告的決議の株主提案ができるようになってしまったら、そっちのほうが上場会社にとっては不利益ですよ。アクティビストは「しめしめ!300個要件を廃止されても困るのは一部の個人株主だけ。オレたちとしては勧告的決議の株主提案が認められたらラッキー!」って考えているかもしれませんよ。
最近のアクティビスト規制の方向性、間違ってますよ。それと上場会社は買収防衛策に対する誤解にもそろそろ気づいたほうがよいですよ。昨日もアインが有事型買収防衛策の導入を公表しましたし、今年の株主総会では3社も買収防衛策発動議案が認められたから、上場会社の多くは「いざとなったら有事型買収防衛策の発動!」って考えているかもしれませんが、間違っています。
なぜ間違っているかは近々公表します。
