2017年09月05日

No.160 今さら大塚家具

 日曜のお昼に大塚家具のお家騒動がちらっと特集されていました。ほんの短い時間ですし、内容も特にお伝えすべきようなものはありません。最近、たまに大塚家具のお家騒動に対する意見を目にすることがあるのですが、ちょっと的外れな意見もあります。例えば「お父さんは娘さんに社長を譲った以上、黙って見守る必要があった」という内容。これ、私はおかしいと思うのです。一度社長を譲ったオーナーがまた復帰することはよくあることです。例えばソフトバンクの孫さんとかファーストリテイリングの柳井さん。

 大塚家具のお家騒動は何が問題だったのでしょうか?業績については、今期の当期純利益は63億円の赤字予想です。そして株価です。お家騒動があったのが2015年1月あたりですので、随分下がりました。業績の悪化や80円と公約していた配当の引き下げなどが影響しているのでしょう。

 お父さんを追い出し、娘さんが経営を行った結果がこれです。当時は「お父さん、部下を何人も引き連れて会見しちゃってみっともない」という意見がありました。ISSは娘さんを支持しました。最近では「お父さんの路線が正しかった」という意見もあります。みんなが間違っていたということです。特にISSの判断は恥ずかしい。

私は家具の専門家ではありませんから、これから大塚家具がどうすればよいのかはわかりませんし、安易な経営施策を論じるつもりもありません。ただ、1つ言えることは「お父さん、娘さんに経営をまかせるとは言っても、株はちゃんと支配しておくべきでしたね」ということです。

 お家騒動当時の株主構成を見てみましょう(2014/12期末)。

 お父さんである大塚勝久氏の持株比率は18.04%です。微妙な数値ですね。資産管理会社であるききょう企画は娘さんに乗っ取られたみたいですね。お父さんの持株比率が30%程度であったら、絶対に娘さんはお家騒動など起こしていなかったはずです。なぜなら、株主総会で勝てないからです。大塚家具でお家騒動が起こってしまったのは、大塚勝久氏の持株比率が中途半端だったからです。中途半端だからこそ、娘さんに「この持株比率なら勝てる」と思われてしまったのでしょう。

 それに、ISSの判断を重視してしまう外国人株主や雰囲気に流されやすい個人株主が味方したのでしょう。まあ、お父さんのあの会見はプロキシーファイトの戦略において大失敗ですね。資本市場のことをご存じない方がプロキシーファイトで勝つためには、アドバイザーは徹底的に教育しなくてはなりません。「でも、あのお父さん頑固そうだし、言うこと聞かなかったんじゃないの?」 だったらアドバイザーを降りればよいだけの話です。「ちゃんと言うことを聞いてくれないのなら信頼関係が成り立ちません。降ります」と。それくらい真剣にやりあわないと勝てません。

 似たような株主構成でお家騒動が起きた会社がほかにもあります。例えば、大戸屋ホールディングスです。創業者が亡くなり、創業者のご子息とお母さんが「息子を社長にしろ!」と騒ぎを起こし、現社長や役員の選任に反対しました。現社長らはご子息を社長にはしませんでした。なお、創業者のご遺族の持株比率は約18%です。これまた中途半端な持株比率だったのです。創業者のご遺族の持株比率が30%程度であったなら、現社長らは反発しようがありません。なぜなら株主総会でクビになってしまうおそれがあるからです。

 ソフトバンクやファーストリテイリングでは一度社長を譲った、もしくは譲ろうとしたオーナーが何事もなかったかのように社長に復帰されています。孫さんの持株比率は21%、柳井さんの持株比率は21.67%です(ほかにおそらく資産管理会社で4.48%保有)。30%まではいかないにしても、時価総額を考えると相当な水準の株式をまだ持ってらっしゃいます。

 お家騒動が起こる原因は、まさにオーナーの持株比率が中途半端だからです。もちろんオーナーのカリスマ性などもあるのでしょう。中途半端な持株比率にも関わらず、強権発動するから反発されるのではないでしょうか。オーナー企業と言っても持株比率が低ければお家騒動がどの会社でも起こる可能性はあります。

 今お父さんが大塚家具に対して「ワシが社長に復帰する!」とプロキシーファイトを仕掛けたらどうなるでしょうか?たぶん、勝つでしょうね。ISSは「娘さんではダメだ!」とコロっと意見を変えるでしょうし。ま、お父さんはそんなことをせずに匠大塚の経営に邁進するのでしょう。でも、お父さんがいずれ大塚家具に復帰するような気がします。例えば、匠大塚の経営が順調に拡大した後、大塚家具にTOBを仕掛ける。そして、TOB後、匠大塚と合併させる。そういう絵を描いて株主に説明すれば、案外うまくいくような気がします。

 

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