2017年09月19日

No.169 役員報酬

 9月15日の日経15面に「役員報酬 指標多様に」という記事がありました。「鈴木さんとこで役員報酬の制度設計などはしないの?」とご質問をいただいたことがあります。答えは「しません。他人の高額報酬を考えるほどお人よしではありません」です(笑) 

 皆さん、役員報酬についていろいろな仕組みを考えますね。信託銀行や証券会社がいろいろ考えているのでしょう。野村證券時代も役員報酬の仕組みや制度を考えていらっしゃる方がいました。私は「そんなに複雑な仕組みにする必要あります??」と思っていました。単純な業績連動じゃダメなんですかね?同業と業績比較なんてわかりやすいですね。ESGへの取り組みを考慮するって、どうやって報酬に落とし込むんですかね。

 なお、私は役員報酬の引上げについては大賛成です。ぜひ増やすべきと考えます。

https://www.willistowerswatson.com/ja-JP/press/2017/07/japan-us-europe-ceo-compensation-comparison-2016

 私は敵対的TOBが起きても、日本企業の経営者は保身のために反対するようなことはしないと思っています。しかし、全役員がそうかと言うと、そうとは言い切れません。中には役員になったばかりで、「○○社に買収されたらオレの地位はどうなる?オレ、役員になったばっかりでまだそんなに報酬ももらってないよ!!クビにされたら再就職どうすんの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。だから、保身のような態度を取るリスクもあるでしょう。諸外国と比べて適切な水準の報酬をもらっていれば、保身に走るようなことはないでしょう。そもそも日本の役員報酬が英国・ドイツ・フランスよりも低い水準にあること自体がおかしいです。英国・ドイツ・フランスよりもROEが低いからだ!と言われるかもしれません。欧米との数値比較は伊藤レポートをご覧ください。

 確かに低いです。だからこそ、役員報酬を引き上げるべきなのです。現金報酬と株式報酬の両方を引き上げるべきでしょう。そうすればきっと変わるはずです。たくさんの報酬をもらっていれば、当然ROEを意識せざるを得なくなります。なぜなら自分たちだけたくさんの報酬をもらっていながら、株価を上昇させない訳にはいかないと考えるはずだからです。そうすれば、自ずと自己株取得を実施する企業も増えるでしょうし、増配する企業も増えるでしょう。役員報酬を増やす前にROEを引き上げろと言われるかもしれませんが、逆なんです。まず役員報酬の増額が先です。そうずれば株主もいずれハッピーになります。

 役員報酬が増えれば、日本でも本格的な敵対的TOBが増えます。なぜなら、仕掛けられたら、役員も価格引き上げ交渉を真剣に考えるからです。自分の持分も高く売りたいはずですから。

日本の株式市場で指摘される諸問題は、私は役員報酬を増額させることでほとんどが解決されるだろうと考えます。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

2023年09月07日 有料記事

No.1596 創業家ガバナンス

昨日、日経さんが私のコメントを以下の記事に掲載してくださいました。この記事、非常におもしろいのでぜひご覧ください。また、何度かコラムのネタにさせていただきます。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ