2017年10月19日

No.191 アサツーDKに対するTOBは成立するのでしょうか?

 ベインキャピタルによるアサツーDKに対するTOBですが、業務提携先で筆頭株主であるWPPはTOBに対して「買付価格が低すぎる」として反対する姿勢を明らかにしました。

https://www.wpp.com/wpp/press/2017/oct/12/wpp-statement-re-adk/

アサツーDKに対するTOBは、応募が50.1%を超えなければ不成立となります。ちなみに、WPPはアサツーDK株式を24.96%保有しています。また、アサツーDKの第二位株主で約17%を保有するシルチェスターもTOB価格が安すぎるとして反対を表明しているようです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21907770V01C17A0TI1000/

 加えて、10月18日の日経14面に「ADK株主 TOBに反対」という記事がありました。香港のファンド、オアシス・マネジメントがベインのTOBに反対する方針であることが報じられています。オアシスは、パナソニックによるパナホームへのTOBに対して価格が安いとして反対したファンドですね。オアシスが保有している株数は不明ですが、WPPとシルチェスターあわせて約41%保有しています。41%もの株式を保有する株主が「TOB価格が安すぎる!反対!」と主張している中で、TOBが成功するのでしょうか?これ、非常に難しくなってきましたね。株主構成を見てみましょう。大株主に安定株主はほとんど登場しませんので、株主構成のみ掲載します。

 安定株主は法人株主である4.02%です。この会社の株主構成は極論を言えば、外国人を中心とした機関投資家と個人だけです。WPPとシルチェスターを除いても外国人が17%くらいいます。この外国人株主も、おそらくWPPやシルチェスターと同じ行動を取るのではないかと考えらえます。株価もTOB価格である3,660円を超えて推移していますから、このままの状態が続けば株主がTOBに応募するメリットがありません。株主構成も考慮すると、現状のままではベインによるTOBは不成立の可能性が高いのではないでしょうか。

では、ベインはTOB価格を引き上げるでしょうか?このままの状態が続けば引き上げざるを得ないでしょうが、引き上げたとしてもWPPとシルチェスター、オアシスが納得するでしょうか?両社が納得する価格でないと、また同じことの繰り返しになってしまいます。しかも反対している投資家はシルチェスターとオアシスって・・・。投資家の中でもかなりのうるさ型じゃないですか。シルチェスターとWPP、オアシスが共同歩調を取ったとしたら、生半可な価格引き上げでは賛成してもらえないのではないでしょうか?41%もの株式を保有する株主が反対し続けたら、他の株主もおそらく応募しないでしょう。そうするとTOBが成立しません。

株主構成が極端に偏ってしまうと、友好的なTOBでも成立が厳しくなります。ただ、不当に安く買い取られないという意味で、株主にとってはよいことではあります。

 

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