2017年11月17日

No.211 買収防衛策の復活や見直しに対する心理的ハードル

 廃止した買収防衛策を復活させたり、見直してしまった買収防衛策を元に戻したりするのは心理的ハードルがあると思います。「もう必要ないから廃止しようって言ったじゃないか!」と社長に怒られるかもしれませんから。いろいろな会社の方のお話を聞いていて思うのですが、廃止した会社や見直した会社の事務局に責任はありません。すべてアドバイザーの責任だと思ってください。

 そもそも皆さんは買収防衛策に関するプロではありません。ですから、いろいろなアドバイザーから伝達されるアドバイスが「正しいのだろう」という前提で行動するはずです。買収防衛策を廃止したのも、見直したのも、皆さんには少しの責任もありません。悪いのは間違ったアドバイスをしたアドバイザーです。体を張って「買収防衛策を廃止してはいけません!票読みは厳しいかもしれませんが、なんとか方法を考えましょう!」と言わなかったアドバイザーが悪いのです。「この票読みだと厳しいですね~」「防衛策のこの部分を変えないと反対票が増えますよ~」という呑気なアドバイスじゃなかったですか?票読みが厳しいのはアドバイザーに言われなくても、総務のプロなら誰でもわかります。判明調査の結果を待たずとも、有報の株主構成を見ただけでわかりますよ。

 「買収防衛策を復活させたいんだけど」とアドバイザーに質問したらなんて言うでしょうかね?「自ら廃止して再導入ですか?前例がありませんよ!」「機関投資家のスタンスは厳しいですよ」と言うでしょうね。「そんなことは言われんでもわかっとるわい!」です。「見直した買収防衛策を元に戻したいんだけど」と言ったら、「え、そんなの前例ないですよ。機関投資家はネガティブですよ」 「うん。それもわかっとるわい!」です。なんでこういうレベルの低いアドバイスをするのでしょうか?それは、機関投資家に反対されたら株主総会を通すことができない、議決権を握っている機関投資家がNoと言っているのだからどうしようもない、ヘタに大丈夫などと言って否決されたら責任問題になる・・・などなどでしょうね。株主総会で可決できるかどうかわからないから、踏み込んだアドバイスができない、踏み込んだアドバイスを考えようともしない、ということだと思います。ある意味、思考停止状態です。

 そもそも買収防衛策のアドバイスって、使ったことのない人がアドバイスしてどうすんの?有効なアドバイスできるの?と常々思っています。買収防衛策って、ものすごく奥が深いんですよ。法律的な知識も必要ですし、マーケットに関する知識も必要です。IRアドバイザーが最近アドバイスをしているケースを耳にすることがあるのですが、相当トンチンカンです。弁護士さんも買収防衛策の専門家ではありますが、弁護士の範疇ではない部分に口を出し、それが結果的には間違っていることだってあります。両方の知識を兼ね備えておかないと、とんでもないアドバイスになっていることがあるのです。単に「機関投資家は反対しますよ~」などという緊張感のないアドバイスしかできない人はダメです。再導入とか買収防衛策の仕組みの変更とか、どのアドバイザーも「やりましょう」などとは言わないでしょうね。しかし、判断が間違えていたのだとしたら、ちゃんと正しい方向に戻すべきではないでしょうか?今の世の中、買収防衛策は絶対に必要と言えますし、きちんと機能する買収防衛策にすべきです。そのための工夫に知恵を絞るのがアドバイザーなのです。

 少し話を変えます。佐々木ベジの言っていたことを再掲します(ソレキアへの公開買付届出書より)。

 佐々木ベジがソレキアに突然TOBを仕掛けたのは「何らかの買収防衛策が導入される可能性」があるからです。確かに買収防衛策があるとやっかいです。時間がかかりますし、その間に株価が上がってしまうと、買収者が予定していた金額で買えなくなってしまうかもしれません。村上ファンドも買収防衛策に否定的です。佐々木ベジと村上ファンドが嫌がる買収防衛策・・・。会社にとってはまさに必要な施策じゃないですか!

ただ、本当に佐々木ベジが「買収防衛策があるとやっかい」と思っているのだとしたら、佐々木ベジもまだまだですね。買収防衛策は、仕組みによっては機能しないことだってあるからです。そういう買収防衛策なら導入されていたとしても全く問題ありません。更に踏み込みますが、究極的には買収防衛策だけでは守りきれません。買収防衛策の目的は時間と情報の確保ですから、ある程度の防衛機能は有していますが、完全ではありません。

 でも買収防衛策は必要です。買収防衛策が必要ない時代になるまでは、必要なのです。

 

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