2019年04月26日

No.577 10連休にぜひ考えていただきたいこと

名門川崎汽船がエフィッシモの手に落ちました。私はさきほど株を売りました。エフィッシモから社外取締役を受け入れる方向と報道された川崎汽船株が急騰し、含み損が解消されたためです。もっと上がる可能性も考慮しましたが、所詮、海運の素人を受け入れるだけなので、企業価値向上は見込めないと判断して売却しました。1,500円ほど儲かりました。期末時点では株主でしたので株主総会には出席し、その模様を皆さんにお伝えします。

さて、皆さん。川崎汽船は2015年に買収防衛策を廃止ました。同業の日本郵船も2014年に廃止しました。結果、この2社はどうなりましたか?日本郵船は村上ファンドのターゲットになっています。ガイアの夜明け、皆さん、ご覧になりましたか?日本郵船の社長が村上ファンドの事務所を訪問していました。川崎汽船はエフィッシモに38.99%の株式を取得され、結果、今回エフィッシモから社外取締役を受け入れる方向となりました。この2社は当社が村上ファンドなどのターゲットになることなどないと考えていたのでしょう。そして仮にターゲットになったとしても経営権を取られることなどないと考えていたのでしょう。もしくは何も考えていなかったのでしょう。

でも皆さんはどう思っていますか?「川崎汽船がとうとうエフィッシモから社外取締役を受け入れるのか?大変だな。うちも気を付けないとなあ。」でしょうか?では買収防衛策を導入していない会社はいったいどうやって守るのでしょうか?「うちは安定株主比率が高い!」 その高い安定株主比率をいったいいつまで維持できますか?皆さんが経営陣でいらっしゃる間は大丈夫でしょう。でも皆さんの後輩が経営陣になったときでも維持できていますか?安定株主比率の維持は皆さんの意思でどうにかなるものではありません。持ち合い先の意思によって決まるのです。皆さんが持ち合いを続けられたとしても、持ち合い先は続けられないかもしれないのです。持ち合いによる安定株主対策とは、究極的には他人任せの企業防衛体制に過ぎません。

では安定株主比率が低くて買収防衛策を導入できない会社の皆さん。本当に買収防衛策を導入できないのは安定株主比率の低さのせいでしょうか?大変恐縮ですが、大変厳しいことを申し上げます(いつものことですが)。安定株主比率が低いから導入できないのではなく、安定株主比率の低さを理由にこれまでちゃんと買収防衛策を検討しなかったのではないでしょうか?そして現状買収防衛策を廃止している会社が多い中、「今導入したら目立つ。廃止している会社が多いのになぜ?と言われる。説明が大変!」と思っていませんか?川崎汽船や日本郵船はおそらく「株主総会を通せない。否決でもされたらみっともない。総会担当のクビが飛ぶ。」などと考えて買収防衛策を廃止しました。その結果、否決されるよりもみっともない事態に陥りました。村上ファンドの事務所に入っていく姿を映されて全国で放映されるほうが、否決されるよりよっぽどみっともないです。そんな社長の姿を見たいですか?

買収防衛策を廃止した会社の皆さん。本当は「再導入したほうがいいんじゃないか?」と思っていませんか?世の中の情勢は変わりました。皆さんの会社はいの一番にターゲットになります。なぜなら買収防衛策を再導入できないから株を買っても対抗策を打てないと見なされているからです。誰かが買ってから買収防衛策を再導入しようとしても遅いです。日邦産業の再導入はかなりしんどいですよ。「市場買付けがイヤなら、●●●で買ってやるよ」と言われたら、あの再導入の理由では太刀打ちできません。詳しくはNo.572 私がフリージア・マクロスなら日邦産業をこう攻めるをご覧ください。

そして買収防衛策を導入している会社の皆さん。本当にそれだけで大丈夫ですか?「うちは買収防衛策を導入しているからOK!」と構えていませんか?買収防衛策は時間と情報を確保するだけのルールなのです。本当にTOB提案を仕掛けられたらどうするか?仕掛けられないように平時のうちに何をやっておくか?を議論していますか?また、買収防衛策をいつまで継続できそうですか?票読みが厳しくなった場合の工夫を真剣に考えていらっしゃいますか?

買収防衛策を今の世の中の情勢で導入するにはある程度の困難があります。でも私はその困難に立ち向かうべきであると考えます。なぜなら皆さんの会社がターゲットになる可能性は川崎汽船や日本郵船と同様にあるのです。会社がアクティビスト・ファンドの食い物にされないよう、経営陣の皆様には会社を守る責務があると思うのです。では、買収防衛策を現状の世の中で導入するために必要なものはなんでしょうか?

少しの勇気です。少しだけ勇気をもって立ち向かえば、買収防衛策を導入することができます。もちろん否決されるリスクはあります。しかし私は否決されてもいいじゃないですか!と言いたいです。なぜなら皆さんの会社が世の中に向かって「我々は会社を守るための企業防衛体制をきちんと敷いているぞ!」と主張することが重要だからです。買収防衛策は経営者の保身ではない、従業員や取引先、株主などの重要なステークホルダーの中長期的な利益を守るために必要なものなんだ、と主張することが重要なのです。当然、可決させるための精一杯の努力をするものの、最悪、否決されても構いません。企業防衛体制を真剣に考えている会社であると訴えることが重要なのです。

「買収防衛策は必要ではないか?」 ぜひ10連休でお考えいただきたいと思っております。

 

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